優しいキス
実紅ちゃんと理玖くんが去っても
私は動くことが出来ずにいた。
体の震えは落ちついたものの、
さっきまでのやり取りが私の頭の中を巡って
消化しきれない。
とりあえず私の気持ちは伝えた。
わかって貰えたらいいな。
秀くんはさっきから何も言わずにただ私を
抱きしめる。
秀くんの心地よい心臓の音と温もりを感じながら
私はいつしか眠ってしまっていた様だった。
暫くして気がつくと私は秀くんにひざ枕されていた。
寝ていた事に気がついて勢いよく起きる。
「大丈夫?」そう声をかけてくれた秀くんが
顔を覗き込んでくる。
「大丈夫…」そう言って秀くんの顔を見た。
眉毛が下がって心配そうなその顔が
理玖くんのさっきの泣き顔に見えて
顔が蒼ざめた。
「…っ!」
私は秀くんから後退りする
「…っ!理玖くん…っ!」
私のその様子に秀くんも顔が蒼ざめた。
「や…だっ!」
私の怯え様に秀くんもどうしたら良いのか
困惑している。
「あ…っ、お願い。来ないで…」
頭では秀くんだってわかってる。なのに…
秀くんは理玖くんじゃないのにー
秀くんは私の様子を見ながら静かに立ち上がって
離れようとする。
その様子に私は慌てる。
「待って!違うの!
ちゃんと秀くんだってわかってるの。」
呼び止める。
私は体を抱きしめて自分の体に言い聞かせる。
「秀くんは怖い事しないよ。わかってるでしょ?
大丈夫… 大丈夫。」
呪文の様に大丈夫を繰り返す。
深呼吸をして息を整える。
「秀くん…お願い。優しく抱きしめて…。
私の体に言い聞かせて…」
距離をとっていた秀くんが近付く。
私は震える体を両手で抱きしめながら秀くんを見る。
秀くんも辛そうな苦しそうな顔をする。
秀くんの手が伸びてきた瞬間
思わず怖くなって目を瞑る。
秀くんの手も躊躇う。
私は目をぎゅっと瞑りながら秀くんを呼ぶ。
「秀くん…大好きなの… 」
抱きしめていた自分の腕をぎゅうっと握る。
「秀くんは怖くないって 体にわからせて… 」
そう言うと
秀くんが優しく優しく私を包み込んだ。
まるで壊れやすいものを丁寧に包む様に…
「オレもみおちゃんが好きだよ…」
そう言うとおでこにキスをしてくれた。
1回顔を離して私の頬を秀くんの手が包む。
さっき理玖くんが触れた場所。
私も秀くんの手に自分の手を重ねた。
秀くんは私の様子を確認しながら反対側の頬に
キスをする。
優しくて慈しむ様なキス。
秀くんの目が優しい…
自然に涙が溢れた。
それから唇に優しくキスしてくれる。
私の様子を確認しながら
何回も… 頬やおでこ、唇にキスをする。
秀くんのキスで体の強張りも解けていく。
「…怖い思い、させてごめんね。」
秀くんが謝ってきた。
首を横に振る。
「秀くんは何も悪くない。何で謝るの?」
「助けるのが遅くなったから…」
秀くんがぎゅっと力強く抱きしめ直す。
「本当にごめん。 無事で良かった…!」
秀くんの言葉を聞きながら
私も秀くんの腕の中に帰ってこれて良かったって
思った。
「…理玖があんなにみおちゃんを怖がらせて
いるなんて知らなかった。
理玖はすごく純粋にみおちゃんの事を
好きだったから…。
オレもどこかで後ろめたさがあって躊躇ってた。」
秀くんが髪の毛を撫でる。
…心地良い。
理玖くんが触れた時には怖くて怖くて
仕方がなかったのに。
私はうっとりと目を瞑って 秀くんの肩に凭れる。
「もう、離さないからね。」
秀くんの言葉に頷く。
暫くしてから私と秀くんは
手を繋いで家に帰る。
肩を並べて歩きながら秀くんが話し出す。
「オレ、母さんに言われてて良かった…。」
「?」意味がわからずに小首をかしげる。
「みおちゃんが倒れた時の病院の帰りに…
『みおちゃんが好きなら、みおちゃんの気持ちを
ちゃんと大事にしないとダメだよ!』って
言われたんだ。『約束ね!』って。
それからはいつも念を押されて…
わかってるよ、って思った時もあったけど…
言い続けてくれてたから、オレも無理矢理な事を
しないでいれたのかも…」
秀くんの言葉に驚く。
「え… 無理矢理…な事をしたいと思うの?」
ちょっと驚いて警戒する。
「ふ…っ(笑) たまにね。 例えば…」
握っていた手を引き寄せられて
秀くんの唇が重なる
「!!」
「自分の気持ちのままにキスしたくなるとか…」
「///… 」
恥ずかしくて言葉が出てこない。
口がパクパクする。
「嫌だった?ゴメンね?」
秀くんの笑顔が眩しくて立ち眩みがする…
そうやって、最後は必ず気遣うよね…
「…ありがとう」
いつも私を気遣ってくれてありがとう…
そういうつもりだったのに
「え? キスそんなに嬉しかった?」
秀くんに言われてしまって
「うん。もう、そういう事でいーや /// 」
恥ずかしくて言えないけど
キスも嬉しかったから…




