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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
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平行する想い

ストレスが最高に心に掛かった瞬間


誰かに… 優しくしっかりと抱きとめられる。


「…もう、大丈夫だから」


聞き慣れた秀くんの声


体の震えはまだ収まらないけど


このにおい 安心する…


私は足に力が入らなくて


そのままそこにしゃがみ込む。


私は秀くんの腕の中で動けずにいた。


私の蒼ざめた顔と震えに秀くんは気がついたと


思うけど何も言わない。


ただただ私を庇うように抱きしめて


静かに近づいてくる足音に冷たい目線を送った。


「なんで秀がここにいるの…」


理玖くんの声がして私は秀くんにしがみついた。


「理玖ごめーん、振り切られちゃったー☆」


実紅ちゃんが悪びれた様子もなく謝罪する。


「秀もひどいなぁ。折角の美織ちゃんとの再会を


邪魔しないでよ。話も途中だったのに…」


理玖くんが残念そうに言う。


「僕の美織ちゃんを盗るし…。


秀ってそんなに悪い子だったっけ?」


近づいてくる足音 


来ないで…


息が…苦しい。


秀くんが背中をトントンと叩く


『大丈夫だよ…』 秀くんの手が言ってる。


「…理玖がみおちゃんを好きなのは知ってる。」


秀くんが初めて口を開く。


「でもみおちゃんはオレの彼女だから


理玖には渡せない。


理玖こそ 彼女をこんなに怯えさせて、


許さないよ?」


私の頭の上で秀くんと理玖くんが言い合いを始めた。


「許さない?」理玖くんの声が低くなる。


「秀こそ許さないよ…。 そもそも秀はズルい。


日本にずっといられて、美織ちゃんの傍にいられて


何でも出来て、人気者で…昔からそうだった。


ムカつく。それで…美織ちゃんまで盗るの?!


美織ちゃんくらい譲ってよ!!」


私は秀くんの腕の中で理玖くんの叫びを聞いていた。


…理玖くんって…


「ねぇ、美織ちゃん♡理玖ってばずーっと


美織ちゃんのコトが好きだったんだよー?」


背中から実紅ちゃんの声がしてきた。


「きっと秀より大事にしてくれるよ?


うずくまってないで、何とか言ったら〜?」


実紅ちゃんの声に苛立ちが滲む。


「本の話もいっぱい出来て、楽しかったでしょう?」


思わず顔を上げて実紅ちゃんを見る。


「理玖にいっぱい美織ちゃんが読んでた本を


教えてあげたからねー。」 


ゾクッ 背筋に寒気が走った。


ワザと…話を合わせて、油断させるために…


「私は〜、美織ちゃんにも弟にも〜、


幸せになって貰いたいだけなんだよ?☆」


にっこりと実紅ちゃんが笑う。


「んで〜、秀は私と居ればいーじゃん♪」


「…あのさ、前から思っていたけど、2人共


自分の事ばっかりだね。」


秀くんが言い出した。


「相手の気持ちはお構いなしだ。


理玖、それじゃあ みおちゃんは手に入らないよ。」


理玖くんの動きが一瞬止まる。


「…理玖くん。お願い。


私の言葉をちゃんと聞いて?」


息苦しい…。怖い。


でも逃げても何もならない。


秀くんのシャツを掴む。


秀くんがその上から私の手を包む。


秀くんの体温が伝わって


私の恐怖心を和らげてくれる。


理玖くんを見る。


「理玖くんが怖い。好きになんてなれない…」


「…っ!」


理玖くんの表情が固まった。


「ねぇ理玖くん。秀くんの事が羨ましいんだね?


何でも簡単に出来て、器用だもんね…。


私も秀くんが嫌いだったよ。


出来ない私の気持ちなんてわからないだろうって


思ってたよ。でも…


秀くんはちゃんと向き合ってくれたよ。


私の気持ちを大切にしてくれた。


秀くんはすごい努力もしてる。


だから、私はちゃんと秀くんを好きになった。


理玖くんの代わりなんかじゃないよ…」


理玖くんにどこまで伝わるかわからないけど


私は多分初めて理玖くんに


自分の気持ちをちゃんと言えた。


今までは逃げてた。 


怖いから黙ってその場から離れた。


でもそれは理玖くんの気持ちも歪ませてしまう。


「あーあ!」


実紅ちゃんが大きな溜息をついた。


「理玖ったら何回美織ちゃんに振られるのよ。


お姉ちゃんはそう何回もお膳立ては出来ないわよ?」


何回も…?


実紅ちゃんの言葉が引っ掛かる。


「まさか…幼稚園の時…」


実紅ちゃんを見る。


「あれ?思い出したの?私達の事…」


頬に手を当ててにっこり笑う。


「あの時も逃げられちゃって残念だったなー」


あの時の怖かった出来事を裏で作ってたのは


実紅ちゃんだったの…?


「…みおちゃん?」


秀くんは幼稚園の時の状況を知らない。


ただ、私が今すごく怒っている事だけは


わかった様だった。


「実紅、理玖…何したの?」


「だから手に入らないなら壊しちゃえって


あの時も言ってあげたのに…」


実紅ちゃんは乱暴な事を簡単に言う。


「…私の『心』はあの時…壊れたよ…。」


私の言葉に秀くんと、理玖くんまで顔が青ざめた。


「壊しちゃいなよ理玖。


美織ちゃんは手に入らないなら…」


「もう、やめて…」


実紅ちゃんの言葉を遮ったのは理玖くんだった。


「僕は美織ちゃんがずっと好きだった。


美織ちゃんが苦しむ事はしたくない…!」


理玖くんの目から涙が溢れる。


「…なぁんだ!つまんないの〜!


コレで終わりでいいの?」


実紅ちゃんの言葉に理玖くんが頷く。


「あっそ。」


実紅ちゃんはつまらなそうに階段を降りていく。


「…実紅…」 


怒りの収まらない秀くんが立ち上がると


実紅ちゃんは振り向いて あっかんべーをして


また降りて行ってしまった。


「…美織ちゃん。ごめん…ね。」


理玖くんがその場でしゃがみ込んで


項垂れて言う。


秀くんは私を支えてくれながら


理玖くんをちらり見る。


私も理玖くんの様子を秀くんの腕の中から見ていた。


「ねぇ理玖くん…」


項垂れた理玖くんの頭に話し掛ける。


「友達からやり直そうよ…」


私の言葉をどう受け止めたのかわからないけど


理玖くんは顔を見せないように立ち上がって


走って行ってしまった。




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