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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
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夏休み

あれから理玖くんは1度も私の前に現れない。


その事が却って不気味に感じた。


私が警戒しているから、理玖くんもそれを感じて


近づいて来ないのかな…?


それなら…その方がいいな。


私は極力1人にならない様に玲奈ちゃんや


春花ちゃんにくっついていた。


実紅ちゃんは


相変わらず…嫌がる秀くんを追い回し、


ハグしたりキスしたり


秀くんと私の心を疲れさせる。


とうとう終業式になってしまい、


そのまま夏休みに突入した。


何とか無事に学校を終えた事に安堵する。


でも私達は受験生。ここからが忙しい。


私は秀くんと同じ塾に夏期講習に行くことになり、


行動を極力秀くんと一緒にする。


その事で他校の生徒に睨まれたり、


直接嫌味を、言われる事もあったけど…


実紅ちゃんの強烈なアプローチと比べたら


かわいいものに思えた。


塾の合間に学校の図書室へ向かう。


午前の2時間だけ開館して貸出を受付けるので


図書委員である私も当番で、


夏休みのうちの2日間だけ登校する。


暑い…


ただでさえ酷暑と湿気でキツく感じるのに


苦手なセミの大合唱も加わって私は


憂鬱な気分で学校に向かう。


図書室ではすでに鍵を開けて準備している


司書の長谷川先生がエアコンを効かせてくれていた。


涼しさで元気を取り戻した私は


大好きな本に囲まれた図書室の空気を胸に吸い込んで


仕事へのやる気を出した。


とは言っても夏休み。


誰も来ないんじゃあ…?


長谷川先生は「裏の図書準備室で作業するから


何かあったら声をかけて」と言って


奥の部屋に行ってしまった。


私は早速読みかけの本をー


と見たい所をグッと我慢して


塾の宿題を始める。


ええっとコレは何だ? ああ、そういう事ね…


頭の中が算数でいっぱいになる頃


「勉強してるの?」


声をかけられて顔をあげると


貸出しカウンターにいつの間にか理玖くんがいた。


「うわあっ!!!」


私は驚きのあまり大きな声をあげた。


準備室にいた長谷川先生が「どうした?!」と


慌てて出てきた。


「先生、ごめんなさい。何でもないんですぅ~」


私は気配なく幽霊の様に現れた理玖くんに


心臓をバクバクさせながら先生に言った。


「大丈夫?何かあったら声かけてよ?」


そう言ってまた先生は準備室へ戻っていった。


「〜っっ!脅かさないでよっ!!」


涙目になりながら小声で訴える。


「何か熱心に勉強してたから声をかけにくくて…


驚かせちゃってゴメンね?」


本当に申し訳なさそうにシュンと表情を暗く


するものだから


返ってこちらが悪い事をした気になった。


「…こっちこそ大声出してごめんね。」


と謝ると「ううん、僕が悪いんだから…」と


両手を振って慌てていた。


…。理玖くんを警戒?


こんなに純粋そうな子を?


私の中で段々と違和感を感じ始めた。


「本の話をしたかったけど忙しそうだね。」


理玖くんが明らかに残念そうな顔をした。


そんな顔をされると…


「…少しだけなら…」


私が言うと、


ぱあああっと理玖くんの顔が一気に晴れた。


こんなかわいい男の子がこんな笑顔したら…


天使じゃないか!///


なんだかこっちが照れてしまった。


「じゃあ、少しだけ…」


そう言いながら本の話を始めると、


好きな本の共通が多くて驚かされた。


特に最近読んでいる本がすごく被って、話が弾んだ。


「あの話の続き、すごく気になるよね~!」


そんな事を言っている内に閉館時間になった。


長谷川先生が奥の部屋から出てきて、


鍵を閉めるから帰っていいよ、と言うので


理玖くんと一緒に図書室を出た。


でも2人きりはマズイよね?


そう思った私は


「教室に用があるから…」と言って


別れようとした。


「じゃあ僕も暇だからついて行こうかな?」


にっこりと理玖くんが微笑む。


どうしよう…


「もしかして、困ってる?」


理玖くんが悲しそうな顔をする。


ドキッ 


「美織ちゃん、迷惑だった?


もう少し話したかったんだけど…」


理玖くんの声が沈んでいく。


「や…、迷惑じゃないけど…」


焦って繕うと、


「本当?!良かった~!」とまた


天使の様な笑顔をみせた。


私は顔が真っ赤になったので急いで振り返って


階段を登っていく。


ちらりと後ろをみると理玖くんが子犬の様に


嬉しそうにくっついてくる。


私は階段を登りながら顔の火照りを鎮めようと


心を落ち着かせる。


なんか… 顔が似てて、秀くんと重なる時がある…


私は複雑な気分になった。


教室につくも、用の無い私はワザと机を覗いて、


「あれー?ないなー。やっぱり家かな?」と


演技してすぐに教室を離れた。


みんなのいるとこって…どこ?


…誰もいない…。


自然に足が早くなる。


理玖くんが私の手を掴んだ。


ギクッ


「美織ちゃん、早いよ…」


そう言われて振り返ると


理玖くんが静かに私を見つめる。


この目、知ってるー


秀くんが何か私に言いたい時の顔だ。


「秀に何か言われてるんでしょ?


そんなに怯えた顔、しないでよ。」


廊下に2人きりー


「折角会えたのに、傷つくなー」


理玖くんから表情が消えた



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