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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
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親の話2

キッチンで美織の母、奏は夜ご飯の


後片付けをしていた。


「…奏ちゃん」


突然背後から夫、拓真が声を掛けてきた。


「うわあっ!!」


背後に全く気配を感じていなかった奏は


突然の夫の登場に、危うく持っていた食器を


落としそうになった。


「〜っ!驚かさないでよ!」


文句を言いながら振り返ると、


拓真が眼鏡の下に両手を入れて顔を押さえている。


「?…どうしたの?」


「…美織と秀がキスしてた…」


耳を真っ赤にして拓真が話す。


「帰ってきたら2人とも玄関にいるんだもん…。」


「ああ…、遭遇しちゃったのね(笑)


それで美織も部屋に籠もっている訳だ(笑)」


奏は拓真と美織のギクシャクとした夜ご飯での


風景を思い出した。


「あの2人、いつから付き合ってたの…。


ビックリしちゃったよ。秀は全然普通だし…


「おかえりなさい」とか笑顔で言われちゃったよ…」


拓真は心臓の高鳴りが収まらないらしく


胸を押さえながら息苦しそうに訴える。


『…。やっぱり付き合ってたの、拓真さんは


気がついてなかったんだね…。』


と、奏はいつもの事と呆れつつ、


あえてそれを口にしなかった。


「進路を変えたいとか言ってきた辺りじゃない?」


奏は後片付けを再開しながらその時の様子を


思い出していた。


美織が失踪したと騒いで、


怜那ちゃんの家に迎えに行ってくれた秀くん。


帰り際のあの落ち着きの無さは、


秀くんらしくなかった。


『アレだな… 


美織のヤツ、玄関で告白したな…?


なんて色気のない(笑) 秀くん、かわいそうに…』


奏は心の中で、ずっと娘に片思いをし続けてくれた


秀くんに心から同情した。


「え…っ。そんな前から?奏ちゃん、何で教えて


くれなかったの!」


拓真の反応に


『拓真さん以外、みんなわかってるよ…』と


奏は心で突っ込んだ。


「付き合い出したんなら何で


一緒の学校に行かないの?


運動会だって、すごいハラハラしたし…」


「まぁ、それはお互いに思うことが


合ったんでしょう!」


奏は素っ気なく返事を返した。


「それより…」


奏は拓真に食後のコーヒーを差し出しながら


ダイニングテーブルへ座る様に促した。


「秀くんのいとこ達が転校してきたみたい。」


奏も拓真の向かい側の席に座って話し出した。


「秀のいとこ?あー、なんか…


アメリカに行ったんじゃあ?」


「そう。帰ってきたみたいなの。」


奏の言葉に拓真は昔の記憶を巡らせた。


「確か…双子だったよな?男の子と女の子の…」


奏が頷く。


「名前が確か…実紅ちゃんがお姉ちゃんで、


理玖くんが弟。なんか目がくりくりして


かわいい子達だったよな!


理玖くんは美織が好きだったっけ?」


その言葉に奏は満足する。


「さすが拓真さん!記憶力だけはいいね!」


「何、だけ って!トゲあるよ?伊藤さん。」


拓真は奏を看護師の現役時代の様に旧姓で呼んだ。


「今は榊ですよ!拓真先生!」


奏もワザと乗っかる。


拓真もそのやりとりを少し笑ってから、


「実紅ちゃんも理玖くんも日本ここ


離れる時にすごく嫌がっていたよな…。


あぁ、実紅ちゃんも秀がすごく好きだったっけ…。


凄い思い出してきた…」


拓真は背もたれに背中を預けて腕組みをしながら


目を瞑る。


幼稚園時代の子供達の様子を次々に思い出した。


「ああ、そうだ!


理玖くんは美織と離れたくないって泣いてたな…。


あの頃は秀より理玖くんの方が美織の事を好きそう


だったか?」


拓真が思い出をそのまま羅列する。


「表現の違いかな?とは思うけど秀くんは


『気になる』って感じで、理玖くんは『好き』って


ちゃんと言ってたもんね。まぁ美織には何も響いて


なかったけど…(笑)」


奏も目を瞑って顎に手を置くポーズで考えた。


「なのに…よ、美織、幼稚園の事、


全然覚えてないって言うの!」


奏はダイニングテーブルに手を付き、身を乗り出して


拓真に告げる。


「え…、嘘でしょ。だって理玖くんとは美織も


仲良くしてたじゃない。一応だけど…。」


拓真も急に目を開けて慌てる。


「秀くんを嫌っていた事しか記憶にないんだって。」


奏も慎重な顔をする。


「…美織、頭も大丈夫か?」


拓真は医者らしく医学的観点から娘を心配した。


奏は笑って首を横に振る。


「そうじゃないのよ。それ程に…


美織は秀くんしか気にしてなかったのよ。」


奏の言葉に拓真が驚いた。


「それって…あんなに秀の事を嫌がっていたけど…」


拓真の言葉の後を奏が繋げる。


「嫌っていたのは本当なんだけど…(笑)


美織はずっと秀くんが気になってたのね…。


美織の中心はずっと秀くんだったって事よ。」


奏は、実はずっと一途だった娘の気持ちを


微笑ましく感じていた。


「…つまり、嫌いって言いながら


秀しか見ていなかったと。


周りの友達も、好きと言ってた理玖くんも、


秀と仲良くしていた実紅ちゃんも覚えてないと…。」


拓真がまとめる。


奏の頷きに拓真は複雑さを抱える。


「…う〜ん。まぁ、でも… じゃあ、美織は秀と


付き合えて良かったな…(笑)」


「そうね。」


奏は自分のコーヒーカップに目線を落とす。


「あとは理玖くんの気持ちだけど…」


奏の言葉に拓真は不安な気持ちを抱いた。


「…そうか。まぁ、幼稚園の時の話だしな〜」


拓真は笑い飛ばしながらも不安を拭えない。


「変な事にならないといいね…」


2人の言葉が重なった。


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