双子
運動会も終わって6月に入った
この季節外れに、転校生がやってきた。
3組と2組にそれぞれ1人ずつ。
聞くところによると2人は双子だという…。
どんな子達なのだろう?
仲良くなれるといいな。
「アメリカから越してきました、
一ノ瀬実紅です。
よろしくお願いします。」
そう言って挨拶をしてきた実紅ちゃんは
髪の毛がふわふわとして、目がクリンとした
かわいい女の子だった。
教室の誰もがそのかわいさに溜息をついた。
休み時間には、
早速実紅ちゃんの周りに人だかりが出来た。
「すごい人気だねー」
私がその人だかりを見ながら怜那ちゃんに
話しかける。
「まぁ、物珍しいからね。すぐ冷めるでしょ。」
相変わらずのクール発言で
怜那ちゃんはさほど興味が無さそう。
向き直るといつの間にか秀くんが居た。
「みおちゃんのが可愛いから、自信持ってね?♡」
… 学校で何言ってるの?
わざわざ耳打ちしてきてのそのセリフに
私はウンザリしながら秀くんを見る。
秀くんってやっぱりどこかおかしいんじゃあ…?
絶対に実紅ちゃんの方が可愛いでしょう…。
「…何しに来たの?」
私が聞くと
「彼女に会いに来ちゃダメですか?」
と上目遣いに言われて顔が赤くなる。
それよりも気になるのは
秀くんがこそこそしている事。
「?ねぇ、秀くん?…」
話しかけようとした時に
「あ?秀じゃん!来てたの?」
小宮山くんがいつもの大声で秀くんに話しかける。
「昼休み、サッカーしようぜ!」
それを聞いた秀くんが慌ててシーッと
人差し指を立てた。
ガタン!
突然イスを動かす大きな音がした。
実紅ちゃんが驚いた顔をしてこちら側を見ている。
「… 秀?」
「みおちゃんゴメン。オレを隠して…」
秀くんが小声で言ってくる。
「?」
実紅ちゃんがつかつかとこちらに歩いてくる。
「え…っと?」
私は必死で秀くんを隠す。
何でこんな事に?
実紅ちゃんは私をマジマジと見ると
「え…っ?榊美織ちゃん?」と聞いてきた。
「?…そうですけど…? えっと?」
実紅ちゃんとなんてどこかで会ってたっけ?
実紅ちゃんはその横で縮こまっていた
秀くんを発見すると秀くんを引き摺り出して
マジマジと秀くんを確認する。
秀くんは目をそらして冷や汗をかいている。
「秀だ〜♡」
そう言うと実紅ちゃんは秀くんに抱きついて
ほっぺたにキスをした。
教室中がざわつく。
私は突然の事にフリーズ。
今、彼氏がキスされてましたよね?
秀くんは「やめて〜」と涙目になって
実紅ちゃんから逃れて私の背中に抱きつく。
実紅ちゃんが急に私をキッと睨む。
何?どういう事?
「まさか秀、まだ美織ちゃんが好きなの?」
静かに実紅ちゃんが言い出した。
「みおちゃんはオレの彼女になったの!
実紅の出る幕は無いからね?!」
秀くんが言い出す。
実紅…?呼び捨て?
「そんな事、わからないよ?理玖だって
まだ本気なんだから!」
それを聞いた秀くんがぎゅっと私を抱きしめ直した。
「…知り合い?」
私が秀くんにこっそり聞くと
「私達は秀のイトコよ。」
と実紅ちゃんが代わりに言い出した。
教室が更にざわつく。
いとこ…!!!
なんて美男美女な家系!!!
「美織ちゃん、突然ゴメンね?
私達の事、覚えてないか…?」
実紅ちゃんがにっこりする。
「…ごめんなさい。」
正直に言うと、
「そっかー。残念ー☆
でも、美織ちゃん、変わったねー。
幼稚園の時はあんなに暗いコだったのに。」
「実紅!」
秀くんが私の背中から怒る。
「あ…、幼稚園の時…!ゴメンね。」
私が謝ると
「理玖の事も、じゃあ覚えてないんだ。」
と言われて正直に頷く。
「あーあ!理玖悲しむなぁ!
あんなに美織ちゃん、美織ちゃんって
言ってたのに…。 かわいそー」
と言い出した。
「?」
「…幼稚園の時の話だろ?」
秀くんが言い出す。
「2人して何なのよ、美織ちゃんって!
こんな子のどこにそんな魅力があるのか
わからないわ。」
実紅ちゃんが溜息をついた。
「実紅…。本気で怒るよ?」
秀くんが静かに言う。
背中から抱きつかれてるから秀くんの表情は
わからないけど、もうすでに結構怒ってる。
「まぁ、そんなに怒らないでよ。
折角日本に戻ってきたんだから…。
秀も美織ちゃんも気が変わる事だってあるかもよ?」
こんなにかわいい子が微笑んでいるのに
背中で寒気を感じて
思わず、抱きついていた秀くんの手を掴んだ。
「その内理玖も、美織ちゃんに
会いにくるだろうし♡
仲良くしてね、美織ちゃん♡秀♡」
この先への不安を感じた。




