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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
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やり直し

部屋に秀くんを招き入れたのは、久しぶり。


特に何も変わってないと思うけど…。


部屋に入ると秀くんに向き直る。


「昨日は…」「学校…」同時に声が重なった。


「…みおちゃんからいいよ。」


先を促してくれた。


「…昨日はごめんね。」


震える手を胸の前でぎゅっと握りしめる。  


なるべく秀くんから視線を逸らさない様に意識する。


秀くんが静かに私を見つめる。


「うん。」


「心配させたよね…」


「うん。」


「怒ってたよね?」


「…何もなくて良かったって思ってる。」


目線を伏せて秀くんが言う。


秀くん、まつ毛長いな…。


少し沈黙する。


「…学校、KM女子にするの?」


今度は秀くんが話し出す。


「うん。」


「そっか。頑張ってね。」


また沈黙。


っていうか…それだけ?!


そっか。だけで満足出来るの?


私は秀くんの表情を伺う。


私の視線に気がついた秀くんがふっと笑う。


「オレ、正直安心してるんだ。」


秀くんが顔をあげてまっすぐに私に話してくる。


「みおちゃんの近くにいたら、


いつか傷付けるんじゃないか、って。


ここ最近は特に怖かった。


気持ちが欲張りになって、


みおちゃんの望まない事をしちゃうんじゃないか


って。」


辛そうな顔。


「…っ! 秀くん…?」


秀くんに近づこうとすると


「…待って!ごめん。


それ以上はオレに近づかないで。」


くるっと背を向けて秀くんが息を整える。


「オレ、あの時ー」


窓の外を見ながら秀くんが話出す。


「みおちゃんが入学してすぐに倒れた時、


あのまま死んじゃう子もいるって聞いたんだ。


…あの時すごく怖かった。


だから今、みおちゃんが生きてくれているだけで


良いって…」


秀くんの背中が震えてる。


「なのに、


オレの気持ちはどんどん欲張りになっていく…。


出来るだけ近くにいたい。


誰よりも… オレが守りたいのに…


みおちゃんの気持ちが欲しくなって


触れていたくなる…」


秀くんが深呼吸をする。


息を整えてから静かに話す。


「昨日の告白…本気?」


秀くんが背中を向けたまま全身で大きく息をする。


「うん。本気だよ。」


秀くんの背中に話しかける。


「オレの事、好きなの?」


「うん。好きだよ。」


「じゃあ…」秀くんがやっとこっちを見る。


「ちゃんと目を見て言って?」


1歩 また1歩 近づいてくる。


「あんな告白じゃ許さない。」


秀くんの両手が私の顔を包む。


目線をそらせない様にー


「ちゃんと言って…。」


「うん…。」


秀くんの目を見つめる。


秀くんの目、赤い…


「私、秀くんが…」


ポロッ 涙がこぼれる


どうしてだろう?


ただ思いを伝えるだけ。


ただ2文字を言うだけが


どうしてこんなに…


胸がいっぱいになるー


「…っふっ」嗚咽が止まらない。


「みおちゃん、悪いけど今日は許さないよ。


前は1回許してあげたんだから。


何年みおちゃんの事、


片思いしてきたと思ってるの?」


秀くんに言われてこくこくと頷く。


わかってるよ。


秀くんは私なんか比べものにならないくらいの


胸の傷みを抱えてきてくれた事。


自分の気持ちを抑さえながら


私の気持ちを大切にしてきてくれたこと。


「…っ 秀くんが 好きだよ。」


「…っ!」


秀くんが私の涙を指で拭う。


はぁっ… ちゃんと言えた…


私が安心しきると


「…もう1回言って。」


秀くんが静かに言い出す。


「…えーっ!(怒)」


「いいじゃん。昨日すごく心配したんだよ?


それで昨日の分は許してあげる!」


秀くんがにこにこ微笑む。


…調子が出てきたな…。


もう1回言わせるなんてっ!!(怒)


キッと秀くんを睨む。


「そんな怖い顔しないで?お願い…」


秀くんの頭と体に


小犬の耳としっぽが付いている様に見えた。


「〜っ!///」


秀くんが上目遣いで私を見つめる。


「秀くんが好きだよ!」


プイッと顔を背けて素っ気なく言った。


秀くんに両手で顔を戻される。


「ダメ!」


ちょっと怒ってる。


「かわいく言って!」


(怒)


要求が多い!そんなに言うんならね…


私は秀くんの肩を押さえて秀くんを座らせる。


「…えっ?」


秀くんがちょっと驚く。


私は立膝をついて秀くんに抱きつく様にする。


いつかの仕返しみたいに


秀くんの耳に直接言ってみる。  


「秀くんが大好きだよ。」耳打ちする。


体を離して秀くんの顔を両手で包んで


「わかった?」にっこりと微笑む。 


これでどうだ!


秀くんの顔がみるみる赤くなる。


あ、あれ?そんなに?


「〜っ///」


やり過ぎだったかな?


ガッと手首を掴まれる。


もう片方の秀くんの手が私の後頭部を押える。


「みおちゃんが悪い!」


そう言って秀くんの唇が重なる。


「?!!!!」


『ちょっと… 』


もがく


『本当に…』


秀くんの力に敵わない


『何やってんの…』


秀くんの唇を感じて 力が抜けてくる。


真っ赤になった私の顔を覗き込んで


秀くんが微笑む。


「最高にかわいかったから許してあげる。」


私は疲れ過ぎて反論出来ない。


「…みおちゃん」


ぎゅっと抱きついてくる。


「オレも大好きだよ。」


そう言ってどんどん体重がのしかかる。


「えっ…?秀くん…?」


私はそのまま後ろに倒されて頭を打ちつけた。


「〜っ痛!」 星が回る。


倒れる瞬間ベッドのシーツを掴んだら


その上に積んであった本も一緒にドンッと落ちた。 


バタバタバタ


階段を上がってくる音がする。


次にトントンとドアを叩く音がして


「何か凄い音したけど…大丈夫?!」


お母さんが声をかけながら入ってくる。


「どうした?!」


と千景さんとお兄ちゃん、お父さんも入ってくる。


私は秀くんと本の下敷きになって身動きが取れない。


「〜!!!秀、ちょっと何やってんのよ!!!」


千景さんの慌てた声。


「おまっ、早えーって!!!」


お兄ちゃんが私から慌てて秀くんを引き剥がす。


「多感ね~♡」お母さんが楽しそうに笑う。


秀くんを見ると


寝てる。


「 … 」


みんなが目をパチクリさせる。


「あー…そういや何か寝不足とか言ってたな…。」


お兄ちゃんが言い出す。


「仲直りは出来たみたいだな。」


お父さんが秀くんを支える。


「何か笑いながら寝てるぞ。」


みんなが秀くんを覗き込む。


「寝顔は変わらないな〜♡」


お父さんが嬉しそう。


抱きかかえようとすると


「いや、重くなったな…」と慌てる。


しょうがないから


暫く私のベッドを貸してあげることにした。


「好きな子のベッドで寝るとかエロい…」


お兄ちゃんが言うと


千景さんの拳がお兄ちゃんのみぞおちに命中した。


私は散乱した本とツヨスギマンの消しゴムを


拾い上げた。






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