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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
27/50

ふたり

怜那ちゃんとの話は切れなくて


ふと時計を見上げると…


もうすぐ18時!!!


や… まずい!!!!


急に青ざめた私に気がついた怜那ちゃん。


私の視線の先、時計を見る。


「うわぁ!結構時間がたってたね!」


怜那ちゃんも驚く。


「とりあえずお家に連絡しよう!」


そう言って家の電話を貸してくれた。


電話をかけると案の定


心配していたお母さんに電話越しで怒られた。


そりゃそうだ…


朝10時に出て15時くらいに帰るって


言ってあったんだから…


平謝りする私を見兼ねて


怜那ちゃんが電話を代わってくれた。


「たまたま会って、私が家に


連れてきちゃったんです。すみません〜!」


なんてお母さんに謝ってくれる


怜那ちゃんを見ながら私も怜那ちゃんに謝った。


「えっ?本当ですか。えっ!…わかりました…。」


そう言って怜那ちゃんが電話を切った。


くるりと私に向き直って


「…廣澤くんが迎えに来るって。」


と言い出した。


ゆっくりじわじわと頭に浸透していく。


言葉の意味を理解すると私は激しく動揺した。


「ど…どうしよう?どうしたら?何で?秀くん?」


私のわかり易い動揺に


「うわぁ〜!」玲那ちゃんが急に大きな声を出した。


「きゃ〜!!!」私も反応した。


「美織、落ち着け!」


怜那ちゃんが両肩にドシンと手を掛けてきた。


「急に何か変わる訳じゃないんだから、


今まで通りで大丈夫なんだぞ?」


怜那ちゃんが言ってくれる。


今まで通り…


「自覚しちゃったら秀くんとふたりなんて


ムリだよ!」


涙目になる。


私の最近の不可解なドキドキが恋かもなんて…


心の整理がついてない内に会うなんて…


秀くんも私が好き…なのは知ってたけど


それが恋からくるものだなんて…


「美織。とりあえずさ、廣澤くんは美織を心配して


来てくれるからさ。


私からも廣澤くんにフォローしておくから、


何も考えなくていいよ。」


不安がいっぱいだったけど


だからって私も今すぐに


何か考えがまとまる訳でもない。


何も話さない…で静かに帰れるかな…


私は怜那ちゃんのフォローに頼る事にした。


帰り支度をしてリビングで待っていると


秀くんがやってきた。


玄関先では出迎えた怜那ちゃんがフォローを


入れてくれた。


聞こえてきた断片的な言葉は


「疲れてるから」とか「叱らないでやって」とか


そんな感じだった気がする。


「美織、廣澤くん来たよ。」そう声をかけられて


玄関へ向かう。


ちらりと秀くんを見るけど…表情が読めない。


怒っているのか 心配しているのか わからない。


ただ言えるのは


まだ寒い季節なのに少し汗をかいていている


ということ。


「美織、廣澤くんが来てくれて良かったよね!


安心して帰れるね。」


怜那ちゃんのフォロー。


頷くだけにしてくれて有り難い。


「今日はもう疲れちゃったね。


何も考えないで寝ちゃいなね!」


私を気遣う様な言葉で


秀くんに詮索を許さない言葉を使った。


私も静かにただ頷く。


友貴ゆうきくんは?」


秀くんが口を開く。


「兄貴は部活。19時…んー20時かな?


帰って来るの。」怜那ちゃんが答える。


秀くんの憧れの人は友貴さんっていうのか…。


私はぼんやりそんなことを思った。


「会いたかったな~」


壁に掛かった写真を見ながら秀くんが呟く。


「言っとくよ!ていうか兄貴、廣澤くんが


S中受けるって言ったら喜んでたよ。」


怜那ちゃんに言われると秀くんが少し照れた。


「頑張らないとな…。この前の総合模試、


佐々木さんに負けてたし…。」


「ぁあ、今日の結果?マグレでしょ(笑)」


お兄さんや塾での話題。


私の知らないふたりがいる。


『佐々木さんならともかくー』


ドキッ


日戸瀬さんの言葉がよぎる。


怜那ちゃんキレイだし、フォロー上手だし


頭いいし 人望厚いし  


私なんてー


怜那ちゃんの方がよっぽど秀くんと


お似合いなんじゃ…


「美織」


急に怜那ちゃんに呼ばれて現実に引き戻される。


「変なこと考えないの!」


顔をあげると怜那ちゃんの呆れ顔、


秀くんの複雑な顔が私を見ていた。


「…相当疲れているみたいだね。」


秀くんが言った。


私また何かふたりに読まれてる?


「廣澤くん、こんな感じだから美織を頼むね。」


怜那ちゃんが玄関のドアを開けながら


私の背中を押した。


外に出るとすっかり暗くなっていた。


玄関先で怜那ちゃんにお礼を言って、


ふたりでマンションの出口を目指す。


秀くんは私の荷物を持ってくれた。


何も言わずに秀くんは私の先を歩く。


たまに振り返って私を確認すると


また步き出す。


私はぼぉっと秀くんの背中を見つめて歩く。


『秀くん 迎えに来てくれてありがとう。


本当はすごく嬉しいよ。』


背中に話しかけてみる。


『いつも気にしてくれてありがとう。


私、秀くんの事が大好きだよ…』


〜っつ!!!

 

すごく恥ずかしくなった。


ダメだ。何やってんの、私…。 


自分自身に呆れた。


…でも、きっとこれが私の本当の気持ち…。


あぁ、信じられない…。 


「好き」と思うのに、何でこんなに苦しく思うのか。


それはきっと秀くんの反応が怖いから。


もし万が一、秀くんに拒絶されたら…


この私の「好き」の気持ちは


どうしたらいいのだろう?


私に対する秀くんの「好き」はそもそも本当に


恋からなのかな?


私が「好き」って言ったら喜んでくれる?


本当に?


何か…頭痛してきた…


駅の人通りを抜けた所で


秀くんが手を差し出してきた。


「ここから先は暗いから。」


そう言って私から手を握る事を待ってくれる。


私は躊躇いながらも秀くんの手を握った。


グッと力強く握り返された。


秀くんの手、温かいー


体も心も温まっていく。


秀くんの手、こんなに大きかったかな?


背も伸びたし。でも、これからもっと背も伸びて


秀くんの事だから 格好良くなるんだろうな。  


その時私はどうしていたい ?



私は1つの答えを導き出した。



家につくと秀くんがお母さんと何か話して


くれている。


でも今の私の頭にはふたりの会話が


全く入ってこない。


「みおちゃん、ゆっくり休んでね。」


そう言って帰ろうとする秀くんを


思わず私は服を掴んで制してしまった。


はっ!


私は驚いて掴んだ手を離す。


「…みおちゃん?」


秀くんが顔を覗きこんでくる。


ドキン ドキン 


胸が痛い… 苦しい 


「熱でもある?」


そう言って私の頬に秀くんの手が触れる。


私はその手の上から自分の手を重ねる。


秀くんの手を軽く握る。


秀くんの顔は怖くて見れない…


「私、秀くんが好きだよ…」


お母さんには聞こえなかったと思う。


秀くんだけに聞こえる様に…


「…えっ?」


私の告白はちゃんと秀くんに聞こえたらしい。


私は急いで階段を登る。


部屋に入ってベッドに倒れ込む。


私はその日そのまま寝てしまった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ついに美織ちゃんが自分の気持ちに気付いて素直になったー! さて秀くんの反応は?
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