試合
5月下旬 天気は快晴
今日は秀くんのサッカーの試合。
日差し強いなぁ…
自分の部屋の窓を開けて天気と気温を確認する。
私は肌が白いせいか
日差しに当たりすぎると赤くなる。
ヒリヒリと痛くなってしまう。
今日は屋外だから服装に迷う。
でも気温も高めで暑いしなぁ…
ということで、
白のチビTに黒のロングプリーツスカート、
UV加工の薄手のパーカー、サングラスに日傘
足元もサンダルにしたいところをスニーカーにした。
完全武装!
髪の毛も迷いに迷って結局緩く1つに編んで貰った。
これなら首の後ろも焼けないかな?
バッグだけは藁編みトートで涼しめにしてみた。
そんな事をアレコレしていたら
あっという間に出かける時間になってしまった。
待ち合わせは最寄りの駅。
家から10分くらい。
怜那ちゃんの方が先に到着していた。
まず目を惹くのがスラリと長い足!!
デニム姿がカッコいい!!
スポーツブランドの大きめのTシャツに
キャップを被ってウエストポーチとスニーカー。
元々モデルみたいな顔立ちの怜那ちゃん。
ポニーテールで横顔もさらに美しい!!
スタイルも良くて服装も決まってて
一緒に歩くの恥ずかしいんだけど…
私は完全に萎縮しながら隣に並ぶ。
「あ〜、美織かわいいじゃん♡ロングスカート!
サングラスも決まってるよ☆」
怜那ちゃんにそう言われると
ちょっとだけ自信を持てた。
試合会場は隣の学区の小学校の校庭。
駅からは5分くらいで着く場所。
到着するとちょうど試合が始まる所だった。
観客をかき分けて進んで行くと
秀くんのお父さんと千景さんがいた。
「あら、怜那ちゃん!…ってあれ?美織ちゃん?!」
千景さんが私の登場に驚いていた。
まぁ、それはそうだろう。
誘われても1回も来たことがないんだから…。
「秀、見に来てくれたの?!」
千景さんがすごく歓迎してくれたので
ちょっと安心出来た。
後で知った事だけど、怜那ちゃんのお兄ちゃんが
秀くんと同じチームだったらしくて、
それで秀くんのサッカーチームの情報を
知っていたらしい。
「秀、今ちょうど出てるわよ。」
千景さんが教えてくれる。
わ〜、本当だ!!
秀くんが試合に出ている所を初めてちゃんと見る。
結構激しいスポーツなんだな…
そんな基本的な所から今初めて知った。
うわっ、倒された!痛そう…。
秀くんはチームの中でも足が速い!
動きが素早くて相手チームからボールを奪って
パスを出すスピードも速い。
秀くんを中心にチームが纏まっていくのがわかる。
「今日もいい動きしてますね、廣澤くん。」
怜那ちゃんが千景さんに話かける。
「そうね~。美織ちゃんがいるから
いいトコ見せてくれないとねぇ?」と千景さんが
私を振り返る。
とその時、偶然にもサッカーボールが飛んできた。
千景さんと話し込んでいた私は
全然気がついていなくて、
「危ない!」と声をかけてくれた
秀くんのお父さんの声も虚しく
ボールは思いきり私のサングラスを飛ばしていった。
「だ…大丈夫ですか?」
周りの関係者と思われし方々が
慌てて私に近寄ってきた。
「…大丈夫デス…(たぶん…)」
何が起こったのかまだわかっていなくて
とりあえず驚きのあまり座り込んでしまった。
「え…っ、みおちゃん?」
秀くんの声がしてはっとした。
私はすぐに立ち上がって大丈夫アピールを
みんなにした。
それから秀くんに口パクでガンバレって
片手でグーを作ってGO!GO!サインを出した。
試合は再開された。
「ケガはない?」
怜那ちゃんが心配そうに顔を覗いてくる。
「どうにか…(笑)っていうか、サングラスだけ
吹き飛ばすとか、めっちゃ技術高い…!」
私は違う意味で関心していた。
試合に目を戻すと
相手チームにリードを許し、押されていた。
あれ…?さっきまではこっちが優位だと
思ってたのに!
秀くんを見ると動きがぎこちない。
さっきまでの伸び伸びしたプレーじゃ
なくなっていた。
どうしたんだろう…突然。
秀くんとバチッと目が合った。
もしかして私の事を気にしてる?
その事に気がついたらしい怜那ちゃんが
大声をあげる。
「こら〜っ、廣澤くん!!そんな不甲斐ないプレー
するんなら連れて帰るぞ!!」
それを横で聞いていた千景さんも
「櫂に負けてていいのか!?」と
秀くんを叱咤激励する。
どんな場面でも秀くんにとって「櫂お兄ちゃん」の
ワードは起爆剤になるらしい。
頭にきたらしいムッとした顔を一瞬見せたものの
キッと顔が引き締まった。
それからというもの、秀くんは再び鮮やかな動きで
相手ボールをカット、パスを出して
点数に繋げていく。
あっという間に点数を返した。
すごい!すごい!
思わず惹き込まれていく。
秀くんから目が離せなくなる…
「秀くん…カッコいいね…」
思わず口から出ていた。
それを聞いていた
怜那ちゃん、千景さん、秀くんのお父さんが
お互い顔を見合わせてニンマリしていたのを
私は全然気がつかなかった。
試合は前半2-1後半1-0で秀くんのチームが勝った。
その後も2試合して、
この大会の勝利チームになった。
3試合を晴天下で見ていた私は立ち眩みを覚えて
日陰で休んでいた。
目がチカチカする。
目を瞑ると秀くんの鮮やかなプレーを思いだす。
確かに、日戸瀬さん達みたいな女の子達が
秀くんのファンになっちゃうのもわかる気がする。
なんだかすごく納得した。
確かに…格好良かったよ!!
「美織、平気?」
そう言いながら怜那ちゃんが
冷え冷えのペットボトルをほっぺたに当ててくる。
気持ちいい…
「怜那ちゃん、ありがとう〜」
「表彰式、終わったからみんなで帰ろう?」
怜那ちゃんの言葉に頷く。
暫くすると秀くんと千景さん、秀くんのお父さんが
歩いて来た。
秀くんは私を見つけると走って来た。
あんなに動いてたのにまだ走れるのか…!
「みおちゃん、大丈夫?立ち眩み?」
そう言いながら手を差し出してきた。
「立てる?」
心配そうな顔。
さっきまでプレーしていた子と本当に一緒なの?
私は差し出された手を握って立ち上がる。
「優勝おめでとう!」
秀くんの目を見てにっこりと笑って伝える。
秀くんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ぁ…ありがと ぅ」
そんな秀くんをニヤニヤ見ながら
怜那ちゃんが話しかける。
「途中どうなるかと思ったけど、
観に来て良かったよね、美織?」
その言葉に、
「うん!格好良かったよ!」
正直に笑顔で伝える。
秀くんは私に顔を逸したまま
「サッカーが、だろ?」と言ってくる。
何だか耳まで赤い。
「秀くん…カッコいいね…」
突然怜那ちゃんが私の真似をする。
「そう言ってたよ、廣澤くん♡」
怜那ちゃんに真似されて私まで恥ずかしくなる。
「や…、怜那ちゃん! ///」
からかう怜那ちゃんに掴みかかる。
「…それ、本当?」秀くんが静かに聞いてくる。
「え…っ?うん。本当だよ ///
秀くん、格好良かったよ。」
私はまだ怜那ちゃんを掴みながら
振り返って秀くんに伝える。
秀くんは両手で顔を覆ってしまった。
「…やっば… 今日、寝れなくなりそう…」
秀くんが言い出した。
『 秀くんが夜も寝られなくなっちゃう程の
相手を 見つけて? 』
まさかね!(笑)




