勝敗の行方
「みおちゃん…」
?!
今 おでこに …
キス?!!! された気がした…
驚いて秀くんから体を離すと
秀くんは何でもない様子で私の机に向かった。
私はおでこに手を当てて困惑する。
秀くんは手を伸ばして机の上のツヨスギマンの
消しゴムを手に取った。
「まだ持ってたの?」
私に背を向けたまま聞いてくる。
どきっ どきっ どきっ
心臓の音がうるさい。
「しゅ… 秀くん…今…」 もしかして、キスした?
「うん? どうしたの?」
私の方に振り返って微笑む。
「… … … 」
キスした?なんて!聞けるわけない!!
間違ってたら恥ずかし過ぎる!!!
「… 何でもない…」 私は顔を下に向けた。
顔が熱い
秀くんが私に近づいて、私の髪の毛を耳にかける。
同時に指が耳の形をなぞった。
びくっ
くすぐったい! ぎゅっと目を瞑る。
秀くんは内緒話でもないのに
静かに 直接耳に話しかける。
「どうしたの?」
秀くんの息が耳をくすぐる。
「〜〜っっ!!」
耳を押さえながらもう片方の手で
秀くんの口唇を押さえる。
ほぼ状況反射だった。
秀くんは口唇を押さえた方の手をとって
少しだけ手の位置を頬にずらすと
「嫌だった? ごめんね 。」
にっこりと微笑んだ。
???
今のは何だった???
頭で 状況が 全然理解出来ない…
ただただ顔が熱い…
何も言えない
「そう言えばさ」秀くんが話始める。
「今日は学校でごめんね。話しかけて。」
私は言葉がすぐに出てこない。
代わりに秀くんを軽く睨んだ。
「あの後佐々木さんから聞いたんだけど、
日戸瀬さん達に囲まれていたって?」
佐々木さんとは怜奈ちゃんの事。
「去年の事も日戸瀬さん達なの?」
秀くんはドラマの刑事さんが尋問するみたい
に勢いがあって、萎縮してしまう。
素直に頷くと また距離をつめてくる。
「他に、何かされなかった?」
秀くんがガッと私の肩を掴んだ。
偶然にも指先が日戸瀬さん達に押された時の痣に
触れて「痛っ…!」思わず声が出た。
秀くんの手が緩んだ。
「…奏さん。というか…みんないるんでしょう?」
と言い出した。
えっ?いる?どこに…?
私は部屋をキョロキョロ見回す。
暫くすると静かに部屋のドアが開いて
お母さん、お父さん、お兄ちゃん、千景さんまで
廊下にいた。
「聞き耳立てるなんて趣味悪いよ。」
秀くんが溜め息をついた。
「何言ってるの!塾をサボって年頃の大事な娘さんと
2人きりなんて、心配に決まってるじゃないの!」
千景さんが反論する。
「塾はサボってない。ちゃんと行ったよ。でも、
美織ちゃんが心配で早退してしまいました。
今後はしません。ごめんなさい。」
秀くんが頭を下げて素直に謝ったものだから
千景さんはそれ以上何も言えなくなる。
「で?スピード(仲直り)はどっちが勝った?
みおちゃん、強かったでしょう?」
お母さんがニヤニヤしながら秀くんに訊ねる。
「奏さん。みおちゃんズルばっかりで、
アレで勝ちはダメです。
ただでさえオレの方が負けそうなのに。
今回は引き分けです。
でも次回はオレにも攻撃の策がありますよ♪」
秀くんがにっこりと返す。
「秀くん流石!手強いな〜♪」
お母さん、楽しそう…
何故… ???
「それより奏さん。みおちゃんの背中、
確認して貰えませんか?」
そう言ってお母さんと私を残して
秀くんはみんなを部屋から追い出した。




