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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
16/50

家庭教師


榊家リビング


ダイニングテーブルに


私と櫂お兄ちゃんが向かい合う。


「今日から宜しくお願いします。」


ふたりでペコリと礼をした。


これから何か、武術の手合わせでも


始まるかの様な緊張感。


キッチンにはにこやかなお母さん。


そして緊張感の原因を作り出す


険しい表情のお父さん…


だったが


立ち上がって一転。


「じゃ、オレはおやつでも買ってこようかな?


二人共、頑張るんだぞ~?」


とにこやかに出て行った。


パタンとドアが閉まる音と共に皆の緊張感も抜けた。


「…っ 〜っ。 お父さんが居ると何か


緊張感ある〜」私はテーブルに伏した。 


「改めて、オレの責任が重大だということを


感じる時間だったよ…。」


櫂お兄ちゃんが手の甲で冷や汗を拭った。


お母さんはふふっと笑いながら


「まぁ まぁ 二人共 ! 


肩に力を入れずに頑張りましょう!」と


麦茶を出してくれた。


「秀くんが来なくて安心した…」


私は麦茶を飲みながらぼやいた。


「ケンカでもした?」


お兄ちゃんが問題集に目を通しながら聞いてきた。


「秀くんに好きって言われて…」


「え…っ?」


お兄ちゃんが持っていた問題集を落としそうに


なった。


「私も好きだよ、って言ったんだけど…」


「ええっ…?!」


お兄ちゃんが真っ赤な顔をして狼狽える。


「秀くんが「好きの種類が違う」って言うの。」


私は淡々と説明する。


「…あー そうなんだ。」


お兄ちゃんが片手で顔を覆った。


「… 秀のやつ 切れたか…」


「秀くん泣いて怒って、鈍感とか言うから…」


じわっ 涙が滲んだ


「うわっ! 美織ちゃん、泣かないでよ〜」


お兄ちゃんが慌てる。


次から次に涙がポロポロと落ちる。


自分でも驚く。


涙が止まらない。


秀くんの事がわからない。


その事が、こんなにも


不安な気持ちにさせる。


悲しいと思う。


「好きの種類って何…? 


そんな事言われてもわからないよ…。


秀くんは何で怒ってるの…?」


お兄ちゃんとお母さんが顔を見合わせる。


「美織ちゃんが泣く必要ないよ。気にする事ない。


秀が勝手にへそ曲げてるだけだ。」


お兄ちゃんはそう言ってくれる。


でも…


「好きの種類って…


教えられたからって分かるものじゃないのよ。」


お母さんが私にティッシュ箱を渡しながら


話してくる。


「自分で実感するものだから、美織がわからない


と言うならそれが今の美織の気持ちなんでしょう。」


私はティッシュで涙を抑える。


「?」


「ピンと来てないね!(笑)」お母さんが笑う。


「うん。」頷く。


「大丈夫よ。美織はそのうち「好きの種類」を


理解できるし、秀くんも待ってくれるよ。」


「そのうち?」私の言葉にお母さんが頷く。


「心と身体も成長して、経験して、もしかして!


コレが!ってわかるときが来る。」


「でも、秀くん、鈍感って怒ってたよ?」


お母さんがふふっと笑った。


「仕方ないよ。美織は美織。秀くんは秀くんで


感じ方が違うんだから。


秀くんも本当はちゃんとわかってると思うな。」


お兄ちゃんは腕組をしながらうんうんと頷く。


「大丈夫。秀くんも環境が変わってきて、


美織も成長してきて、ちよっと焦っただけだから。」


お母さんに言われるといつも大丈夫な気がしてくる…


いや、いつも大丈夫だった。


私はちょっとずつ心が落ち着いてきた。


お兄ちゃんも頷く。


「秀は絶対美織ちゃんから離れないよ。


だから安心して。


もっと美織ちゃんがどうしたいか伝えていいよ。


その方が秀もきっと安心する。」


私は静かに頷いた。


「いや、しかし…美織ちゃんは確実に


大人への階段を登っていますね!」


お兄ちゃんがにこにこする。


「自覚がないのよね。 


どこでどうやって気がつくのか…」


お母さんがニヤニヤする


「楽しみだな〜!!!」


二人共声が揃っちゃって、心底楽しそう…


何故だ…


「美織ちゃんにはこんなに理解力のある母が


いるんだ。何も怖いものなんてないよ!


羨ましい!」


お兄ちゃんが言い出した。


「何言ってるの。千景さんだって十分過ぎるくらい


理解のある母じゃないの。」


お母さんが反応した。


「性格合わなすぎてしんどい…」


お兄ちゃんがうんざりした顔をする。


「だからって、普通の母親なら6年間も


お父さんに預けて海外になんて行かせないわよ!」


「…まぁ、確かに。 のびのびバスケットさせて


貰えたかな!」


お兄ちゃんがテーブルの上で伸びた。


私は思わずお兄ちゃんの頭をなでなでした。


「大丈夫だよ。」


いつも秀くんがしてくれるみたいに。


「美織ちゃん…ありがとう。惚れそうだよ…(泣)」


そうお兄ちゃんが言った所で


リビングのドアが開いた。


青ざめたお父さんと


静かに静かに怒っているらしい秀くんがいた。


「あらあら〜


最後のひと言だけはフォローが難しいわ、櫂くん…」


頬に手を当ててお母さんはどこか楽しそう。


「え…っと ここにくるまでには流れがありまして…」


お兄ちゃんがダラダラと汗を流しながら


その後の言葉はなかなか出てこなかった。



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