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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
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小悪魔


家の前に誰かいる… 4人、5人か!


近づくと向こうもこちらに気がついた。


そのうちの1人が大きな声をあげた。


「こら〜!櫂〜!!!」


片手を振り上げてこっちに向かって来る。


一緒に隣を歩いてきたお兄さんは「…っやっべ」と


ひと言つぶやくと私に図書館の本が入った手提げを


手渡し、反対方向へ逃げようとした。


「?どうしたの?」


私はとっさに何かを感じてお兄さんのTシャツを掴み


動きを制した。


「いや、美織ちゃん!オレちょっと用事を思い出し


て…」慌てるお兄さんと


「美織ちゃん、ナイス!そのまま捕まえてて!」と


こちらに向かって来るのは千景さん。


それから「このバカ息子〜!」と千景さんは


お兄さんの手からバスケットボールを奪い


お兄さんに投げつけた。


事情はわからないけど、千景さんがこんなに


感情的に騒ぐのを私は見たことがなかった。


ボールを投げつけられたお兄さんも声をあげる。


「痛ってーな!何すんだよ!」


「アンタはもぉ!


帰ってくるなり荷物もやりっぱなしで!!!


ちゃんと荷物を収めてから出かけなさいよ〜!


家ん中がめちゃくちゃじゃないの!!!」


「天気が良かったからバスケしたくなっただけ


じゃん。すぐに片付けてやるよ!」


「へー!手伝わないからね!」


そんなやりとりを横でぼーっと見ていた。


千景さんってあんなに怒るんだ〜 


今まで見たことが無かった。 ちょっと新鮮(笑)


しかし… 同じ顔が言い合ってる…(笑)


クスッ と思わず笑ってしまった。


そこで千景さんがはっと私に気がついて


「美織ちゃん、ごめんね。」と謝ってきた。


「いいえ。千景さんも怒るんだな、って


新鮮に思って…」率直な感想を述べた。


「秀くんといるとき、こんなに怒らないですよね?」


私が言うと


「本当よ〜、18にもなってだらしがない誰かさん


のせいでかわいい美織ちゃんのお目汚し


しちゃったわ〜」と溜め息をついた。


「何だその言い方!ひでぇ!」お兄さんが喚くと、


「さっさと荷物片付けてよ~」と千景さんが


お兄さんの背中をグイグイ押した。


それからお父さん、お母さん、秀くんと、秀くんの


お父さんの元に着いた。


「櫂くんといたの?」お母さんが聞いてきた。


「どっちが先に気がついたの?


櫂くんだってよくわかったわね~」と言う言葉に


みんなが注目した。


お兄さんが「オレ、オレ!」と褒めて欲しそうに


アピールする。


「幼稚園の時から顔出来上がってたもん。


こんなかわいい小学生なかなかいないよ~」


得意そうに告げた後にお兄さんは青ざめた顔をして


秀くんを見ていた。


秀くんは表情を変えずに無反応の様に見えた。


お兄さんそんな事思ってたんだ…。


「みおちゃん、確実じゃないんだから、


知らない人について行っちゃダメ!」


秀くんが静かに私を注意する。


その後ろでお父さんが激しく頭を振って


秀くんに同意している。


「でも千景さんにそっくりだったから…。」


と私が言うと、


お兄さんと千景さんが同時に悲鳴をあげた。


お父さんがこっそりと「あの2人性格が合わなくて


大変なんだよ。」と教えてくれた。


ちらりともうひとりの気になる存在を見上げる。


お兄さんと同じくらい背が高い。


私の視線に気がついたその人はお兄さんがしてくれた


ように前屈みになって私に挨拶をしてくれた。


「こんにちは!美織ちゃん。いつも秀と


仲良くしてくれてありがとう。」と言ってきた。


ウチのお父さんと比べるとだいぶ若く見える。


シャツにジャケット…ファッションもオシャレ!


少し生えたヒゲは爽やかで可愛らしい顔に


全然合わない…


秀くん、お父さん似なんだ〜


「ふふっ」と笑って秀くんを見ると「なに?」と


少し不機嫌そう…


そんな態度でも


図書館の本が入った手提げをさり気なく


持ってくれる辺り  ジェントルマン…(笑)


「いや、しかし美織ちゃんも大きくなったな~!


赤ちゃんの時から変わらないね!


こんなにかわいい赤ちゃんいていいのか?!


って思ってたけど(笑)


奏さんに似て美人さんだね〜」


秀くんのお父さんがにこにこしながら


「秀、頑張らないとな☆」と秀くんをどついた。


どうやら中身はお兄さんの方が似ているらしい。


「秀くんいつも私を助けてくれて優しいです。」


私が秀くんのお父さんに言うと、秀くんは


真っ赤な顔をして俯いた。


その様子を見ていた私のお父さんが


「秀がかわいい…」と悶絶していた。


「〜っ!みおちゃん行こう!」


秀くんが急に手を繋いできて


一緒にこの場から離れた。


そうして走ってきた場所は近くの広場。


広場まで来ると秀くんは繋いでいた手を離して


だけどそのまま 背を向けたままでこっちを見ない。


「? …秀くん?」


顔を覗き込むと


耳まで真っ赤。


わ〜〜!! 秀くんが照れてる??!!


珍しい〜〜〜!!! 


小さい頃はたまに見たけど、


ここ最近はクールな表情が多かったから 新鮮!


私は少し秀くんがかわいいと思ってしまった。


「〜〜っ 櫂とっ 何か話した?」 


秀くんが喋りだす。


「お兄さん? 昔ばなしかな? 


秀くんが懐いてくれないって寂しそうだったよ?」


「みおちゃんは、櫂が好き?」


???急に なに? 


「? いや、そこまでわかんないけど…。


今日会ったばっかりだし。幼稚園の時なんて


覚えてないし。」


「覚えてないの?!」


秀くんが急に振り向くからびっくりした。


「え… なに? 覚えてないよぅ… 私、何かした?」


「櫂の事、カッコいいって…」


両肩をガッと掴まれて 顔が近い! 


何だって言うのよ。 困惑する。


「バスケットが、でしょう?」


秀くんの勢いがすごくて目を瞑る。


肩を掴む手が緩んだので私もそぉっと目を開ける。


「…? 秀くん… ?」


次の瞬間 ぎゅうっと秀くんに抱きしめられた。


それはもうすごい力で。


「秀くん… 苦しいよ!」


訴えてるのに離してくれない。


え… 今度は泣いてるの?


抱きついて顔を見せてくれない。けど微かな嗚咽。


「どうしたの?」


「…き。 俺はみおちゃんが好き…」


小さい声


私は秀くんの背中にそっと手を回して背中をさする。


「私も秀くん好きだよ?」と伝える。


ぎゅっとまた秀くんの手に力が入る。


「みおちゃんのばか。小悪魔。


好きの種類が違うんだよ…」


私はどうしていいかわからずに困惑した。


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