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僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
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昔ばなし


何もない 繰り返しの 日常 に


突然 秀くんのお兄さんが現れた。


私は記憶を辿っても全然お兄さんの事を


ぼんやりとしか覚えていない。


180センチは超えているだろう長身のお兄さんは、


140センチ台の私を見下ろしていたので、


前かがみになって目線を合わせてくれた。


「榊美織ちゃん!懐かしいなぁ!


でも、オレの事覚えてないでしょう?」と苦笑い。


不思議… 顔のパーツは千景さんなのに


その苦笑い  仕草、雰囲気は秀くんにそっくり!


「…そうですね。」お兄さんの質問に正直に答える。


「だよね!オレが12の時に渡米したから…


美織ちゃんは4歳の時…が最後かな!?


大きくなったね〜!


すっかりかわいい女の子になっちゃって!


あ、こんなこと言うのはセクハラかな?」


ケタケタと笑いながら悪びれた様子もなく続ける。


「とりあえず、オレ、帰ろうかな?美織ちゃんも


帰らない?」と言ってから、「あっ!」と


思い出した様に声をあげた。


「ヤバい ヤバい。 こんなふたりでいる所を


秀に見られたら嫉妬されちゃう…」と言い出した。


「? 嫉妬? 何で ですか?」疑問を口にした。


お兄さんは暫く考えて、


「ま、いっか!帰りながらちょっと話そうか。」


そう言って一緒に家へ向かった。


図書館で借りた本が入った手提げ袋はお兄さんが


当たり前の様に「それ、持つから貸して?」と


手を差し出してくれた。


うーん。ジェントルマン! 


さすが秀くんのお兄さん… と感心してしまった。


秀くんのお兄さんも沢山の人から好かれそうだなぁ!


秀くんは穏やかな感じだけど、お兄さんは明るくて


無邪気な印象を持った。


秀くんもこんなに背が高くなるのかな?


並んで歩き始めたが… こんなに背も歳も違う男女。


周りの目からはどう思われているのだろうか?


お兄さんが話し始める。


「美織ちゃん幼稚園の時、秀の事


嫌ってたでしょう?」


その事に関しては事実なので「はい」と即答する。


お兄さんが苦笑いする。


幼稚園時代の私は誰もが認めるくらい、


露骨に秀くんを避けてた。


「今は?少しは秀の事好きになった?」


お兄さんが私を見る。


「そうですね。好きになりました。


秀くんは優しくて、気にかけてくれるから、


一緒にいると安心します。兄弟みたいで心強いです。


今は頼り過ぎない様に心掛けている所ですけど…」


すぐ頼ってしまう情けない部分が恥ずかしくて


笑ってごまかす。


「そう… 兄弟みたいか… (笑)」


お兄さんも笑い返してくれたので救われた…


「話戻るけど、幼稚園の時、秀、家で美織ちゃんが


かわいいってずっと言っててね(笑)」


「え…っ」 新事実に驚く。


あの頃の酷い態度の私を、秀くんはよく


かわいいと思えてたな。


もしかして秀くんっていわゆるマゾ?とか 


そういうタイプ? 全く以て理解不能だ…


「はぁ…」気力のない相槌をうつ。


「そんな全然秀に興味のない美織ちゃんがさ、


オレのバスケする姿見たら「カッコいい」って


言ってた~って秀のやつ泣いちゃってさ〜(笑)」


「へ…ぇええ?」そんな事あったっけ?


全然覚えてないんだけど…


「そっから秀のやつ懐いてくれなかったよね〜」


お兄さんが困った顔をする。


「…完全に逆恨みというやつですか。」


私は呆れた声を出した。だけど同時に思った。


そっか、「秀くんはお兄さんが羨ましかったのか…」


かつての私みたいに…


私が元気いっぱいの秀くんが羨ましかった様に


秀くんは私がお兄さんを褒めたから


羨ましかったんだ。


今考えても、秀くんに対して酷かったよね…


改めて過去の自分を反省した。


「秀くん、お兄さんが帰ってくるの、楽しみって


言ってましたよ?」


今度は私がお兄さんの顔を見上げる。


「えっ、本当?」


口に手をあてて喜びを抑えている様に見えた。


だって顔が少し赤くなったから


「私だって最近は秀くんの事を褒めてるし、


嫉妬する原因はなくなってると思うんですけど…」


「…美織ちゃんは秀の事、なんて褒めてるの…?」


喜びを噛み殺してお兄さんが私に質問する。


「えっと…勉強が出来て、スポーツが出来て、


明るくて、みんなに優しくて、


学校じゃ秀くんは人気者で、私は近づけないくらい


アイドルなんですよ?」


「秀のやつ、アイドルなんだ〜(笑)」


お兄さんがまたケタケタと笑った。


「秀くんはすごいと思います。


ちゃんと出来てるって事は努力してるんだろうな…


って。そこにまだまだ嫉妬しちゃう自分もいますけど


(笑)認めたら負けちゃう気がして(笑)」


「ライバルって感じだ?」


お兄さんが複雑そうな目を向ける。


私は首を横に振る。


「全然、ライバルだなんて…秀くんはすごい。


そんなの本当はとっくに認めてる。


こんなに何もない、むしろ迷惑かけちゃってるのに


私なんかの事も秀くんはちゃんと受け入れてくれる。


完璧過ぎだから、ちょっと抵抗したいだけなんだ〜


(笑)」


秀くんに対する正直な気持ち。


お兄さんに伝えたらちょっとスッキリした。


お兄さんはぽんっと私の頭に手を置いて


なでなでしてきた。


「美織ちゃんは良い子だね。」と言った後に


「あ!嫌だったかな?!ごめんね!」


と慌てて手を引っ込めた。


私は笑いながら「嫌じゃなかったですよ?」


と伝えると安心した顔をしてくれた。


秀くんと違う所はこうやってころころ表情が変わる


から、お兄さんはわかりやすいな(笑)


「美織ちゃんも秀も頑張ってるんだね。」


お兄さんが微笑んだ。


「秀のやつ、ちゃんとナイトしてるんだ…(笑)」


「?ナイト?」


「ううん。こっちの話!」


お兄さんは満足した様子で歩き出した。







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