メーユの都の女子会
ドロゴロスは財産を没収され、平民に戻された。
自分への誘拐だけでは罰はもっと軽かっただろう。
ネリーとセイランの契約書を公開しておいて良かった。
そんなことはともかく。
「えっ、そんな魔術が?」
華やかな色合いの喫茶処で、イズールの報告会。
ネリーとセイランが驚いている。
店のところどころに花が溢れており、口の中でとろけるふわふわの焼き菓子が珍しいと評判だ。
焼き菓子を食べる手を止めて、絶対誰にも言わないでね、とイズールは言った。
竜使いの騎士は命がけの仕事だ。
戦に行けば敵に捕らえられることもあるし、危険な場所で遭難することもある。
そんな時に一定量以上の血を竜の紋章のピンに垂らすと、竜たちに居場所が分かるようになっているのだ。
難点は竜が興奮状態になってしまうこと。
重大な秘密なので、魔石交換室と騎士団でしか知られていないことである。
「私、5個持っているけれど、全部身に着けようかしら」
「そうね、私も7個全部身につけましょう」
5人、7人の竜使いの騎士の心をとらえて離さないらしい美女二人。
すごい。
「なんでおつきあいしてあげないの?」
「しょせん私たちは孤児よ。ずっと一緒にいればお里が知れるわ。国の宝、高嶺の花でいた方が、お客様を逃さないですむもの」
苦労して育ってきている二人は、浮ついた暮らしをしているようで冷静だ。
少しずつ貯金も始めたらしい。
「若さも美しさもずっとは続かないわ。今のうちに稼いでおいて、齢をとったら踊りの教室を作って師匠になるの」
ネリーの頭には結婚の2文字がないらしい。
「私には竜使いの騎士様は無理だけれど、そうね、どこか大きなお店の番頭くらいの人で、誠実な人がいたらいいわ」
セイランの堅実すぎる結婚観もイズールにはぴんとこない。
「王族に嫁がないかという話もあったんだけれど」
セイランは平然と切って捨てる。
「何で苦労して上り詰めたこの暮らしを捨てて王族なんかにならなきゃならないの、ってお断りしたのよ」
でも、危険な時はピンをありがたく使わせてもらいましょうね、と言い合う二人を、生温かい目で見るイズールなのである。