表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/59

VS.ドロゴロス

頭が痛み、身体が重い。

女の媚びるような甘い声にイズールは目を覚ました。


(ここ、どこ?今、どれくらい……?)


自分が硬い床に転がされているのに気づく。

片手に酒、両脇に裸の娘をはべらせて、ドロゴロスが下品な紫の瞳で自分を見下ろしていた。

自分の左右には剣を持った人相の悪い男たちがいる。

怯えていないと言えば嘘になる。

しかしこんな男に震える顔など見せたくないではないか。


「……恐怖で声も出ないか」


満足そうにだらしなく肥えた男、ドロゴロスは言う。

てらてらと脂ぎった顔が気持ち悪い。


「あの夜は美しく見えたが、こうして見ると地味な女だな。アドルは何が良いのやら。魔力もそんなにあるわけではないし、つまらん」


さすがに最近のイズールは目立つ行動が多すぎた。

ドロゴロスがちょっと調べれば、すぐ自分にたどり着いたであろう。

しかし王宮でさらわれるなんて思わなかった。


「ここは私の家の隠し部屋だ。王宮の近くだが、愛しのアドルにはここが分かるまい」


ニチャッとした口調が気持ち悪い。


「さて、お前たち、ここでかわいがってやるといい。女、もしかしたら叫べば来てくれるかもしれんぞ?」


ドロゴロスはあざ笑うように言ってまた手元の酒を飲む。

裸の女たちが笑い、男たちが剣を構えて近づいてきた。


「指を一本一本切ってやろうか。せいぜい怖がってくれよ」

「お前のその悪趣味は困るよ」

「お前も嫌いじゃないだろう、お館様の前だ。派手にやろうぜ」


(今よ!)


向けられた剣に勢いよく指を押し当てた。

加減が分からなかったが、血がどくどくと流れ出す。

そのまま素早く胸元に刺してあった金色のピンを握りしめた。


「何だ?この女」


男たちは一瞬戸惑ったが、気を取り直してイズールに向き直る。


「ふうん、生意気そうな顔だ」

「こういうのを泣かせてやりたいね」


じりじりと近づいてくる男たちから逃げ出そうとして、自分の身体に力が入らないことに気づいた。

くたり、と、また倒れてしまう。

薬がまだきいているのだろう。

剣はまだ向けられたままだ。

自分で切った指が熱い。


(どうしよう……!)


次の瞬間、キョエエ、ギィイイ、という鳴き声が一斉にあがった。

ドロゴロスの家は王宮の竜舎の近くだったらしい。

一斉に飛び立ったらしい、多くの翼の音が大きくなってくる。

建物に突っ込んだのか、ガラスやレンガの壊れる音が響いた。


「馬鹿な……!」


ドロゴロスがうろたえて、娘たちを突き飛ばす。

建物の壊れる音がだんだん大きく、近くなってきた。


「何故……?!」


ドオン!

と、小さな扉を壊して鮮やかな青い竜と赤い竜が飛び込んできた。

色とりどりの竜がさらに続く。

竜たちはギョエッ、ギョエッと興奮した声を上げる。


「イズール?!」


驚くアドルが青い竜から飛び降りイズールを抱きかかえた。

イズールは血だらけの手に握りしめていたピンを見せる。


「竜が危ないから、早くピンを、拭いて……」

「それどころじゃないよ!」

「いや、それが一番先だな」


落ち着いた声で言ったグノンが、赤い竜から飛び降りてイズールの手の中のピンを清める。

すっと竜たちが鎮まった。


「な、何故……!?」

「隠し部屋が分かったのかって?俺に目くらましはきかないんだ!」


赤い竜の上で得意げに言うリーリシャリム。


「そうじゃない、この女を、一体どうやって……!」


アドルに抱きかかえられながら、イズールはきっぱり言った。


「残念ね、あなたなんかには教えられないのよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ