辣腕サリラ
「まあまあ、昔からあくどい人なんだけど……じゃあ、手に入れた契約書の話からしようかしら」
サリラが質の悪い紙を示した。
どこから手に入れたのだろう、とは聞けない。
ただの文官のイズールには一生知らなくていいものだろう。
三人の娘たちを見て、サリラは言う。
「読んでごらんなさい」
ざっと目を通したイズールは怒りに震えた。
「なんでこんなに低い固定給なの?」
固定給?と、二人は首をかしげる。
自分の文官の給料よりも安い。
あっさりとセイランが言った。
「私たち、字が読めないし、書けないの」
ネリーも当然のように言う。
「できるのは自分の名前を書くことくらいよ」
孤児院ではわざと教えないのだろうか。
「私は歩合でサリラ様と契約しているわ。私が3割、サリラ様が7割」
「さんわり?」
と、二人がきょとんとするので、イズールは言葉に困ってしまう。
サリラが助け舟を出す。
「例えば公演で金貨が10枚もうかったとするじゃない?その時に私は金貨を3枚イズールに渡すの」
ええ、そんなに?と二人が驚く。
問題はそこではない。
「別の公演で金貨が100枚もうかるでしょう?私はイズールに金貨を30枚渡すのよ」
今度こそ二人はびっくりした。
「あなたたちの契約書には、もうかった金額にかかわらず、月に金貨4枚昇給なしと書いてある。本当にこれでやってきたのね……国の宝に、なんてことを」
「サリラ様、この二人を私たちの所属にできますか?」
「この契約書がここにもうすでにあるのよ。決まっているでしょう」
ニヤリとサリラとイズールは笑った。