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仕事帰りに
王宮から出て、お堀を渡る橋を通る瞬間がイズールは好きだ。
今日も無事に仕事が終わった!と言う感じがする。
思い切って奮発して肉を買ってしまおうか、それとも野菜を買うか。
ちょっと迷って、両方ともやめた。
あぶって食べよう。故郷の母の味が恋しい。
お堀からちょっと歩いた場所にあるサリラの家の塀の上では、確かにボッケの木が花ざかりだ。
道に落ちたボッケの花を拾いながら小さく郷里の歌を歌う。
春をことほぐ昔の歌だ。
拾ったボッケを布に集めてゆく。
ふと、地面に影が差した。
「もしかして、魔石交換手の方ではありませんか?」
びっくりして布から集めたボッケを少し落としてしまった。
もったいない。
いや、それどころではない。
「はい、魔石交換手のイズールと申します。ボッケを失礼いたしました!」
何でこの老紳士は私の職業を知っているんだろう。
「ボッケはよろしいのです。お館様が聞きなれた声がするとおっしゃって……よろしければ来ていただけませんか。お茶でもいかがでしょうか」