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愛の巣へいらっしゃい

「最低だなあのジジイ!マリベルの胸ばかり見やがって!」

「怒っていたら美味しい料理がもったいないでしょ、ルルファス」

「俺の作った料理だよ!」

「そうよ、だから世界で一番美味しいわ」


マリベルとルルファスの会話にイズールはびっくりする。

竜使いの騎士に料理までさせてしまうなんて、マリベルはやはり猛者である。

深夜まで書類仕事の多いマリベルより、時々野営で料理を作るルルファスの方が上手らしい。

複雑だが納得である。


二人の部屋は白を基調とした清潔でシンプルなもので、ところどころにハーブの植木鉢が飾ってあった。


「酒も食事も足りないな。買ってこられるものはないかな?」

「グノン、俺ちょっとうちから酒を取って来るよ」

「良いのを持ってこいよ」


リーリシャリムが消えた。

こんなに簡単に飛んでしまえるなんてすごい。

アドルが皿に料理を取り分けているのを見て、イズールは台所に許可を得て入った。

保存庫にひき肉と根菜と玉子がある。

手間のかかるひき肉を買ってしまう二人はさすが高給取りだ。


「地方ではひき肉は高いのかしら?王都では逆に安いのよ」


知らなかった、思い込みとはいえうかつだ。

今度自分も買ってみよう。


「一品作っていいですか?」


と声をかけて調理にかかろうとすると、


「ドレスを汚すわよ!」


と、部屋着を渡された。

マリベルの部屋着は少し自分には大きい。

サリラのドレスを預かってもらうと、腕まくりをして調理にかかった。


まずは根菜を何種類か細かく刻んでおく。

香りの出るハーブをちぎらせてもらい、それを細かく刻んで少しの油で炒める。

ハーブの香りが立ったら肉を入れ、肉に火が通ったら根菜を入れ、全体に油が回ったら少しの水を加えて煮る。

煮えた根菜から甘味とでんぷん質が出てとろみがつく前に塩と蜂蜜、干しきのこを削ったものを加えて、水気を飛ばす。


「良い匂いだね!」


酒を抱えたリーリシャリムが帰ってきたタイミングで、もったりした肉と根菜のかたまりを薄焼きの卵でくるむ。

包み玉子と家では呼んでいた。


「見たことのない料理だ」

「母が作ってくれる田舎料理です。お口に合うか分からないけれど……」


見た目は不格好だし、洗練されてはいないが、肉と根菜と干しきのこの味がからまって素朴な味わいだし、少しの材料でたくさん作れてお腹がふくれる。

熱々で食べるとなお良い。


いつの間にかアドルもマリベルもルルファスも似たような部屋着になっており、リーリシャリムとグノンも取ってきたのか街着になっていた。


「腸詰を持ってきたから食べながら焼こう」


リーリシャリムが言うと、燻製は?とグノンが聞き、もちろん持ってきたよ!と答える。

息がぴったりだ。


「……二人は一緒に暮らしているの?」

「兄弟だからね!血のつながりはないけれど」


なるほど納得である。

燻製は薫り高く、腸詰は香辛料が贅沢に効いて、包み卵の評判も良く、ルルファスの煮込み料理も申し分なかった。

慣れないお酒に世界がふわふわしている。

嫌いな方ではない、弱いだけだ。

イズールの悪行は、みんなにしっかりバレてしまった。

部屋の隅に避難して恥ずかしさと申し訳なさに耐える。


「あら、寝ちゃうわ」

「今日は疲れたんだろう」


穏やかな声にいたわられて、そっと毛布を掛けられる。

隣に誰かが座る気配がしたのでもたれかかる。

優しく肩を抱かれる気配がして、おお、これはいい夢だと思いながら眠りについた。

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