彼は友達
「良ければ夕食を一緒に食べないか?」
だぼっとした制服は相変わらずだが、髪と肌を手入れし、ネリーとセイランの指導でお化粧も上手になっていき、最近自分はちょっとかわいくなったのではないかと自惚れる。
男の人から誘われることも多くなった。
しかしもうすぐ公演で、実は毎日仕事終わりに地獄の特訓を続けている。
残念ながら時間がないのだ。
ていねいに断ると、残念そうに去って行く。
「人気者のセーフェをふっちゃうなんて、誰なら満足なのかしら?」
からかうような声が聞こえて、もう、と振り返って相手をにらむ。
「女史こそ噂の彼のことを聞きましたよ。女史に夢中なんですって?」
珍しくイズールがなついている1級文官、マリベルは竜使いの騎士、ルルファスを射止めたのだ。
二人はずっと関係を隠していたが、もうすぐ結婚らしい。
文官ほぼ全員の顔と名前、仕事ぶりをよく覚えているマリベルはイズールを高く評価してくれて、何かと気にかけてくれる。
ありがたい存在なのだ。
照れたマリベルを初めて見る。
すると、背後から声がかかった。
「かわいいでしょ、俺のマリベル」
「ルルファスは最近浮かれすぎだよ!書類をよこせ。俺じゃなきゃ分からないから、運べばいいってもんじゃないんだ」
背の高いくせ毛の銀髪の男は書類を片手に持って、マリベルの黒髪に口づけようとして怒られている。
隣にいるふわふわのはちみつ色の長い髪の美しい人を見て、イズールははっとした。
「ルルファス、リーリシャリム、こちらは魔石交換手のイズールよ」
「えっ、あっ、例の!」
美少女はいたずらっ子のような笑顔を浮かべる。
「アドルをいじめないであげて!あの隙のない男がしょげているのは面白いけれど」
マリベルもルルファスもびっくりしている。
「はじめまして、俺は美少年騎士リーリシャリムです、よろしくね!」