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艶女

服のお直しが終わったと連絡が来て、サリラ家に行くと、そこに二人の美女がいた。


「踊り子のネリーと、琴の奏者のセイランよ。次はこの三人でやってほしいと王族からのたっての願いなの」


ネリーは茶褐色の肌に巻いた黒い髪、大きな黒い瞳を持った肉感的な体つきの華やかな美貌で、体に沿ったデザインの服を着ている。

とても悩殺的である。

セイランは細身の体にひだのある服をまとわせて、まっすぐな銀の髪を長くのばしていた。目も銀色である。

不思議な色香があった。


サリラの家には大広間があり、早速そこで合わせようと言われて慌てる。

新曲なのだ、と楽譜が渡されるが、読めなくて困っているとセイランが丁寧に教えてくれた。


「少しずつでいいから、覚えていかなくてはだめよ?プロなのだから」


と言われてイズールは戸惑う。


「私、普段は王宮で2級文官をやっているんです。だからプロではなくて……」

「ええ、文官様なの?頭が良いのねぇ!」


ネリーが陽気な声を上げた。

セイランが、困っているわよ、と肘でつついている。

別室で歌の先生に手伝ってもらいながらひととおり歌えるようになり、3人で合わせた。

二人は興奮してすごいわ、と言っているが、イズールには二人こそすごいと感じる。


「イズールは化粧をしていないけれど、文官様の決まりなの?」

「いえ、私はお化粧とかが、分からなくて」

「じゃああたしのオススメを紹介するわ。一緒に市を回りましょうよ!」

「今の時間、市は危ないわ。北門近くの店にしましょうよ」

「じゃあ、その後一緒にご飯を食べましょう」


二人と一緒に行くお店巡りは楽しかった。

二人とも有名人らしいが、北門近くの高級店に来る人々は二人をそっと見るだけで近づいては来ない。

視線に構わず、ネリーとセイランが


「この子に合う化粧品と整髪料を選んでちょうだい」


と店の者に頼むと、ずらりと目の前に色とりどりの瓶や箱が並んだ。


「元々お肌がきれいですけれど、もっと磨きをかけましょう」

「瞼に色を乗せましょうか?」

「いいわね。でもこの子は文官様だから、派手にはしないでちょうだい」

「わかりました。唇と髪に艶を出しましょうね」


使い方をイズールは一生懸命覚える。

さらにお代はいらないと言われてびっくりする。

有名な高級料理店に連れていってもらい、鮮度のよい淡白な魚の焼物やサッパリコックリの不思議なドレッシングのかかった野菜に夢中になった。

ここでもいつの間にか誰かが会計を済ませてしまっている。


「私たちが来店したということが宣伝になるのですもの、もらって良いのよ」

「なじみの方なの。次のパーティーでお礼を言っておくわ」


なんだかすごい人たちと知り合いになってしまった。

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