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ばらばら
紺の魔石が光ると胸が少し切ない。
「定期連絡をお願いする」
いつも穏やかなアドルの声がぶっきらぼうだ。
自分もつとめて冷たい声を出した。
「はい、お話うかがいます」
必要事項を聞いてまとめ、確認すると、少し沈黙が落ちた。
「君にあんなことをされるなんて思わなかった」
「私もアドル様があんなことをなさるなんて思わなかったです」
「……え?」
「素敵な人がいらっしゃるのに、気まぐれはいけないです」
魔石の向こうの相手が慌てている。
かまわず勝手に紺の魔石を切った。
全然心は晴れなかった。
それでも魔石が光ればつなげるし、対応だってする。
定時までは頑張った。
サリラの服を着た後だとかなり見劣りする綿の街着に着替えると、お堀に向かって歩く。
今日はもう、思い切ってちょっといい食事処で食べてしまおう。
お菓子だって買っていい。
今日の自分は頑張った。
少し泣いたら明日からまた頑張れる。