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第4話 脱出計画

 あの悪魔のようなクソ王太子から逃れて、ここより脱出──。でも容易なことじゃないわ。回りは森だし、どこにいるかさえも分からない。

 もしマギーの目を盗んでこのお屋敷から出たとしてもどちらの方角に逃げたらいいか分からない。その間にマギーに悟られ、王太子さまに連絡が行き追っ手でも差し向けられたら簡単に捕まる自信があるわ。

 そしたらますます監視の目が強くなるものね。


 私は自室へと戻り辺りを見回すと、やはり背の高い木々ばかりで景色が見えない。潜伏するには丁度良い場所かもしれない。


 そのうちに仕立屋が来たとマギーに呼ばれ、私は階下へ。

 仕立屋は二人で店主と助手。その二人で私の身体の採寸を始めた。


「室内で軽く着れる物、それからドレスね。装飾は少なくていいわ。色は純白よ。お嫁さんですからね」


 マギーの言葉に仕立屋の二人はうなずく。


「へぇ、わかってまさぁ」

「なるべく早く届けてちょうだい。お嫁さんの部屋着は古着が二着しかないのよ」


 マギーが用意したこの服は二着だけか……。まぁ侍女の服を着れば三着あるし。てか速く逃げることを考えないと。ドレスはちょっと見てみたいけど。

 て、ドレスを着たらそれこそクソ王太子に手籠めをされてしまうんじゃないかしら? それも考えられるわ。そういう趣味かもしれないもの。これは本当に早々に逃げ出さないと!


 仕立屋が帰ったのでマギーに聞いてみた。


「マギー。お屋敷の中だけでは息が詰まるわ。外を散歩してもいいかしら?」

「でしたらお供します」


 やはりそう簡単にはいかないわね。散歩のついでに逃げようと思ったけど、マギーもついてくる。当たり前か……。


 マギーは私を連れて屋敷の周りと森の入り口まで連れて来た。すると、木々の隙間から、もっと大きなお屋敷が見えた。かなり遠い。ここはどこかの貴族の敷地内なのかも知れない。

 遠目に旗が棚引いている。そこには翼が四つある鳥の紋章。あれはどちらの貴族の紋章だったかしら……。


 私が軟禁されている屋敷の周りには流れの速い小川があった。

 水路──。川の幅が狭い。下流には王宮があるのではないかしら。あちらの方が川幅が広いものね。では川を下れば王宮近くにいけるとか?

 でも無理だわ。マギーの目を盗んで屋敷を抜け出し、川をつたって行くなんて。人の身体では目立ちすぎるし、本当にワニでもいたら大変だもの。




 一時間ばかりの散歩が終わり、マギーにつれられまた屋敷に入る。なにもすることもなくヒマだわ。普段なら王宮で仕事をしているところだもの。


 私はマギーに言って仕事をさせて貰うことにした。


「ああ! ダメですよ。アメリアさん」

「いーのよ。いーのよ。そのほうがヒマを潰せるわ」


 私は箒をとって二階を清掃する。自室と物置、空き部屋、廊下と掃除して王太子さまの部屋の前。ドアノブを回すと鍵がかかっていた。


「ふーん。キッチリしてるのね」


 私は階下へ降りてマギーの元へ。二階の掃除が終わったことを告げると、ジッとしてて欲しい旨のことを言われたが聞き入れるつもりはない。次にキッチンへと入った。

 すると食材があるわあるわ。根菜も葉物野菜も、塩漬けの魚、吊した鴨にソーセージ。こりゃストレスをぶっ飛ばすのに作りまくりの食べまくりするしかないでしょ。


 私はマギーを巻き込んで、料理を作りまくった。サラダや煮物、焼き物。揚げ物や蒸し物だって。

 作り終わった頃には日も落ちて、マギーは燭台の蝋燭に火を灯した。


「スゴいです! アメリアさん!」

「まーねー。どう? 働いてるほうが性に合ってるでしょ?」


「誠にそのようで」

「じゃ、一緒に食べましょうか」


「いえまさか。使用人はご主人と同席しません」

「何言ってるの。私は自分を主人だと思ってないわ。それでもイヤなら主人の命令。同席なさい」


 そう言うとマギーは微笑んで、キッチンから木箱を持ってきて私のそばにそれを置いて腰を下ろした。

 なるほど。対面の豪華な椅子は王太子さまのものってワケね。畏れ多くて座れないってことか。まぁこのほうが話しやすいからいいか。



 二人で話ながら食事をしていると、外に荷馬車が止まった音。すると、入り口の扉を開けて入ってきたのは王太子さまと、お供のハリソン様だった。

 王太子さまはハリソン様に簡易なイスを用意させて自分の横に座るように命じて自分は上席にどっかりと座り込む。

 そして私が作った料理をまじまじと観察し始めた。


「ほう。うまそうだ。余とハリソンの分も用意せよ」


 命じられるとマギーは立ち上がって私がたくさん作った料理を皿に盛ってやってきた。


「殿下。これはアメリアさんがお作りになったんですよ」

「ほう。素晴らしい。これはなんというものだ?」


 クソ王太子が料理を指差して聞いてきた。誰もあなたに作ったわけじゃないですけど? マジ腹立つので適当に答えよう。


「食べもん」

「む。なかなか面白いヤツ。大抵のものは畏れ入って口も聞けなくなるというのに。ハリソン。紹介しよう。これが余の嫁だ」


 それを聞くとハリソン様は即座に跪いて臣下の礼をとった。


「これはこれはお妃様。私はハリソン・マベージと申します。マベージ伯爵が長子。将来の国母にご長命を。身命を賭してお妃様をお守り致します」


 おうおうおう──!

 つい先日、鹿狩りと称して私を囲んだことをお忘れか──!?

 なんだこの変わり様は。いつもの不躾な愚連隊の態度じゃないわ?

 れっきとした忠義の臣みたいな……。


 ん? ハリソン様の腰袋。革製のよい造りのそれにはナイフや工具なんかが収められているけど、問題は埋め込まれているレリーフ。


 翼が四つある鳥の紋章だわ。つまりここはマベージ伯爵家の領内。王城から北側にあるお屋敷だったんだわ!

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