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ハーレルイ

ハーレルイと愉快な仲間達 Happy Xmas

作者: 龗香

「チャーッ!!」

その動物は威嚇していた。


羽を逆立て、爪先立ち、目は三日月に吊り上がり、鋭いクチバシで一生懸命に鳴いた。


ただし声は、鈴が転がるようにチャンチャンと鳴く。


「かっ!かわいいではないのかっ。」

誰に問い、誰に答えられたわけではないのだが、ルイはチャンチャンと鳴く、目の前の小動物に震え、身震いする自身のやるせない刹那さに両拳を握り、ただ耐えた。


  ༓༊༅͙̥̇⁺೨*˚·


小動物の名はまだ無い。


「ずんぐりむっくりとした体型」「チョコレート色の羽毛には白や黒が混ざり、細かな鱗のように美しい模様」「短めの翼」「銀白色の足」


学名でいえば、カワガラス。の幼鳥。


小高い岩場の下に潰れた巣と、倒れた親鳥、親鳥の側で威嚇する幼鳥。


そして、ハーレルイの落とし物に押し潰された大蛇。


これはどう見ても、大蛇が鳥の巣を襲っているところに、ハーレルイが落とし物をして大蛇と鳥の巣をぶっ壊したの図。


いや、しかしちょっと待って。カワガラスは雄雌協力して一日一個、全部で四個産んで抱卵するはず。ヒナは一匹。親鳥も一匹。これは、大蛇がこの鳥の巣を蹂躙するはずだったところを私がヒナ一匹だけでも助けられたと解釈も出来るはず。


いわば私はこのヒナにとって救世主!


が。ハーレルイはチャーッと威嚇し続けるヒナを見て、救世主だとは思われていないなとその考えを却下。


どうしたものか。こんな可愛らしいヒナを放置することなど出来はしない。が。現実私はヒナに嫌われてしまっているようだし。


ハーレルイが対処に困っていると、毛羽立てて威嚇し続けていたヒナが、目を回してフラフラと、コテン、「キュゥ、、」と倒れてしまった。


慌てて駆け寄り、状態を見ると、どうやら空腹でぶっ倒れたようだった。


鳥の食事といえばミミズ?、それはちょっと。ならば。


ぽわん。ハーレルイは手のひらを上に向けて魔力で練り上げた綺麗な丸いシャボン玉を作る。その中に。


大蛇の肉。緑黄色野菜の搾り汁。


ガガガガッ。シャボン玉の中がミキサーのように回る。


ピタリと止まると、丸く整えられた練り物が出来上がっていた。そこへ小さな穴が開くと、にゅるん、と一本の麺状に練り物が絞り出された。


ハーレルイはぶっ倒れたままの幼鳥のクチバシに、シャボン玉から垂れた麺を近付ける。


ちょいちょい。ちょいちょい。


クチバシの先、クチバシの口元から閉じられた瞼や鼻の穴に麺をくっつける。


ヒナの習性か開かれたクチバシの喉の奥へ麺を垂らす。


んぐんぐ。ごっくん。


暫くしてからカッと見開かれるヒナの瞳。


ぴーぴーと甘えるように麺を啜り、んぐんぐ、ごっくん。と一生懸命食べている。と思ったらピタリとクチバシが止まる。


ちょろり。クチバシから麺が垂れている。


とろーんと瞼が閉じ、首と足がモフモフの毛の中に収納されてまるで毛玉のように丸まると、スースー、と寝息が聞こえ出した。


「かっ。かわいいではないのか。」

ハーレルイはそっと両手のひらに幼鳥を掬い上げると胸ポケットに入れた。


大蛇を異空間収納し、親鳥と巣のお墓を作り、

「子は連れて行くよ。」

と土が盛られた山をポンポンと叩いて立ち上がると、くるりと背を向けた。


ログハウスに戻ると真っ白な庭でグレーテルとシトロンが大きな雪だるまを作っていた。


シトロンがハーレルイを出迎える。

「どうでしたか、ハーレ様。」

ハーレルイは目を点にして口をむいっと噤んでいる。

「ほらやっぱり。」

カスタードクリーム色のコートを着たグレーテルが、腰に手を当てて「め!」という顔でハーレルイを見る。グレーテルの手には親指だけがちょこんとはみ出るモコモコ手袋。


数刻前、二人と一体は白熱した雪合戦を繰り広げていた。勿論ハーレルイ対グレーテル&シトロンである。


シトロンの後ろでせっせと雪玉を作るグレーテル。グレーテルの盾となり、機関銃のように雪玉を撃ち合い撃ち落とすシトロン。


次々に作り出すシャボン玉で雪玉を練り高速で投げるハーレルイ。は「チッ」と舌打ちしてシャボン玉砲軍から一歩下がると特大のシャボン玉を頭上に持ち上げた。


ギュルン。シャボン玉が雪を取り込んで練り上げる。もうそれは雪とは言わない、氷と呼ばれるやつ。


「うおりゃああああああ!」

振り下ろすハーレルイの腕から放たれる豪速球。は反応すら出来ずに呆然とするグレーテルとシトロンの目の前を、


ギュルンギュルンギュルンッと地面に圧縮された風速に跳ね上がり、グレーテルとシトロンの頭上へとオレンジ色の軌道を曲げて、


キランッ。と空の彼方へと消えた。

「な。な。」

ペタリと膝から座り込むグレーテル。オレンジ色の向こう側が透けて見えるシトロン越しとはいえ、すぐ目の前まで迫り狂った豪速球にグレーテルの膝は笑っていた。


「さすがハーレ様!素晴らしいフォームです!」

さっきシトロンの頭部は半分風圧に巻き込まれて雪玉と一緒に飛んでいったような気がしたが、気のせいみたい。


「ふーっ。いい汗かいたわー。」

といい笑顔のハーレルイに「おい。」とベルダの声が。


ポケットのコンパクトからベルダの声。

「さっきの雪玉はどこに落ちるんだ?」


というわけで。


ハーレルイの胸ポケットで眠る幼鳥を、ダイニングテーブルの上に下ろす。二人と一体と鏡が見守る中。


「巣が必要ね。」

ハーレルイが毛玉のような幼鳥を見下ろして考える。ログハウスに鳥の巣といえば。屋根裏部屋に丸い窓。


グンッ

天井の空間が一瞬歪んで頭を押さえられるような圧がかかり元に戻る。


「フカフカのベッドの他に何か欲しいものはある?」

ハーレルイがグレーテルを見ると、グレーテルはキョトンとした顔でシトロンをチラ見した後またハーレルイを見る。


グレーテルにはグレーテルの部屋がなかった。いつもハーレルイと同じベッドに入って寝ていたし、自分の部屋を持つという発想さえ一度も考えたことはなかった。


「鳥の巣を作るついでにグレーテルの屋根裏部屋を作ってみたのだけれど。見てきては?。」

ハーレルイが玄関横にいつのまにか現れた階段を指差す。


「はわわわ。見てきます。」

屋根裏部屋という子供大好き隠れ家感漂うワードに目をキラキラとさせたグレーテルは、ぎゅっとダイニングテーブルを掴んでいた手を胸元で組みタタタッと階段に駆け寄る。


「わ。わ。」

ギシッと踏み出したグレーテルの足に木の階段の軋みが伝わっておっかなびっくり登っていく。


屋根裏部屋へとぴょこっと頭を出したグレーテルの目に入る丸い窓と、白いフカフカベッド。

「はあぁぁ。」


白いベッドの側で靴を脱いで這い上がると、ちょうど枕元から窓の外が見える。金色の美しい夕日が差し込んでいる。窓の木戸は内開きで、丸太をくり抜いたようなカウンターから身を乗り出すと、窓の真下に玄関。


「気に入った?」

「はいっ。ありがとうございます。とっても素敵です!」

階段を上がってきたハーレルイの手には丸まった毛玉。その後ろにはシトロン。毛玉をジーッと見ている。


「じゃあ、窓辺に巣を作りましょう。」

シャボン玉がくるりと浮かぶ。カワガラスの巣はコケと木の根を組んで球体にして、小さな出入り口の穴を横に。シャボン玉の中でぐるぐると混ざり、窓辺でパチンとシャボンが弾けた。


「おまけ。」

ハーレルイがこっそり隠していた親鳥の風切羽を巣穴に挿す。


「チャン!」

匂いでもしたのか、幼鳥が目を覚まして羽を広げた。ヒョロヒョロとベッドに不時着するとピョンピョンと上手にバウンドして窓辺の巣にジャンプ。ヒョロヒョロ〜と入っていく。


くっ そ か わ い い で は な い の か


心の声を押し殺し、ハーレルイはヨロヨロとグレーテルに縋りつき、その頭を撫でて母性を満たす。


「この子に名前はあるのですか?」

グレーテルに問われて、ハーレルイは実はもう考えてあるとグレーテルの髪を撫でる。

「ポチ。」

あ。と思ったが遅かった。


その瞬間。幼鳥のモコモコした産毛が七色に輝いて消えると、カワガラス特有のティラミスのような茶色の羽ではなくくりアッシュ(光の加減で青や緑がかる黒)の艶めく黒い羽が現れた。


ああああ。つい真名まなを呼んでしまった。真名っぽい何かにするつもりだったのにぃ。真名呼んじゃったら進化しちゃうのにぃ。せっかく可愛いかったのにぃぃぃぃ。


「流石ハーレクイーンといったところか。いつから気付いていた?」

ポチが毛繕いしながら話す。

「私はまだクイーンではないよ。ルイと呼んで。」

真名を呼んでしまった失態に凹んだハーレルイはグレーテルの頭に頬寄せてシクシクと涙を溢している。

「そうか。ルイのおかげで命拾いした。感謝する。」


「え?え?」

グレーテルがハーレルイの腕の中でひとり理解出来ていない。

「あれは気の大精霊だ。」

シトロンがこっそりとグレーテルに囁く。


「おや。これはこれは土の。依代はどうした。」

ポチが片羽を広げてシトロンを見る。

「ふん。擬態は好かん。」

「そうか。ルイと共におるようだし、ルイの「それはそうと気の!!伴侶はどうしたのだ!」

シトロンの問いにポチが嫌そうに首を振る。


そうだ。ポチにはシロという伴侶がいる。二極一対。光と影。どうしようもなく惹き合いながら絶対に交わうことのない呪われた半身。世の理を軽んじた対価。後悔と失望。


二つが交わう時、それは世界の終わり。何もかもを無に帰すブラックホールが現れる。


「どうせ会いたくなくとも勝手にやってくる。そのうち現れるであろう。」

会いたい。会いたくない。どんなに恋焦がれても触れることを許されない者を思い出し、ポチはぷいっとそっぽを向く。


どんなに離れても巡り会い、絶望を前に再び背を向け合う。


わざわいが起こる前に離れなければならない。ポチはそっと俯き加減にシロの後ろ姿を盗み見る。こういう時シロは男っぽいんだよな。ちっとも振り返らないんだもの。


「はあ。」

ポチは最後にシロと別れた日の事を思い出して溜息をつく。


「こんちゃーっす!」

一階から声がする。チャラそうな男の声だ。


「客人のようだな。知り合いか?」

「ルイの知り合いでしょうか。私にはわかりません。」

シトロンとグレーテルが首を傾げる。ルイは苦笑い。ポチはごくりと喉を鳴らした。


ギシッ ギシッ

グレーテルが慎重に階段を降りていく。何だろう、やけに木が軋む、とハーレルイは首を傾げる。


「あー。いたいた。留守かと思って帰らなくて良かったぁ。王都から速達でーっす!」

パタパタパタパタッ

純白の鳥が夕日が沈む黄昏時に玄関を飛び回っていた。


「シロ。」

ルイの頭に乗るポチと純白の鳥の視線が絡み合う。

「ポチ?」


日が沈む。ああ、こういうの、何ていうんだっけ、確か、逢魔時、だっけ。


ビキッ


「うわわわ「きゃああ「これは?!」

階段がいきなり割れたかと思えば、ハーレルイが咄嗟にグレーテルを抱き寄せてその二人をシトロンが抱き上げ階段を転がった。ハーレルイの頭から体勢を崩したポチをシロが羽を広げて抱き締めて玄関に転がる。


しまった!、シロは思ったがもう遅い。この腕の中に収まる懐かしい匂いに、頬寄せ、ぎゅうと抱き締めた。


この世の終わりを覚悟した。


バキバキバキゴキバゴッバキバキビキッ


階段の割れ目から芽吹いた木の枝が太い蔓のように巻き暴れながら壁を貫き、床に這い、幾本もの狂った蔓がぐんぐんと伸びて、やがてピタリと成長を止めた。


静かになったシロの胸の中で、どくんどくんとその胸の高鳴りをポチは夢のように感じていた。


シロはポチを抱き締めながら、自分の腕の中に包まれる柔らかさが夢ではないのかと震えていた。


ポチがゆっくりと見上げると、シロの真っ直ぐな瞳と見つめ合った。


玄関に転がったシロとポチの頭上には、見事なヤドリギが金色の葉を揺らしていた。


ハーレルイはポンと手を叩いた。


「そういえばこの家、オークの木で出来てるわ。ヤドリギって、オークの木に生えると神秘的な力が宿るのよ。例えば、どんな呪いでも吸い取るとかね。ま。ヤドリギが生えている間だけだから日が昇る、東雲しののめ前までだけど。」


それにしても、とハーレルイは生命力豊かに成長したヤドリギを見て思う。もっと可愛いサイズで生えてくれてもよかったのに。でも。


バッキバキに伸びまくったヤドリギの下で、シロとポチは涙を流しながら抱き合っていた。


しょうがないな。ハーレルイはシロが落とした王都からの手紙を拾い、「親しい友人がいる王都でXmasパレードやってるっていう招待状だと思う、毎年届くからね。」手紙をフリフリと揺らしてグレーテルとシトロンに微笑む。


「行きたいです!」

「ハーレ様とご一緒出来るのであればどこへでも。」

「てことだから。ポチ。留守番よろしくね。あー、聞こえてませんよね、はい、じゃ、ベルダ。」

ハーレルイがポケットからコンパクトを取り出す。

「何だ。」

「玄関使えなくなっちゃったのよ。グレーテル連れて王都行きたいから、寝室のアンタの本体から王都に繋いでよ。」

「構わないが、私も連れてゆくのだろうな。発情した大精霊などと一緒に置いていかれてはかなわん。」

「何だと鏡!聞き捨てならん!は、は、発情とは何だ!発情とは!」

「雌と雄が発情して盛っているという意味で言ったのだ。間違ってはいない。」

「あーもーわかったわかったーうるさいと置いてくよー」

「「それは困る!」」


ハーレルイと愉快な仲間達はワイノワイノ騒ぎながら寝室のドアを閉めた。


「愛してる。ずっと。いつも。」

シロが、ちゅ、ちゅ、と優しくポチの額や頬に口付ける。

「私も。いつも。想ってた。愛してる。」

ポチは甘いその口付けを受けながら、どくんどくんと脈打つシロの心音を耳に焼き付けたいと、その胸にぎゅうっと抱きついた。


A very Merry Xmas and a happy new year to you.

あえて、ポチとシロの性別をぼかしているので、妄想でお楽しみください。

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