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プルプラ神

「パグールスの王女ですよ」


聞き覚えのある国名に、私は思わず眉をひそめた。


「パグールスって、先王の時代にコロル王国を侵略した国じゃない」


先王とパグールスの王女との間に縁談が持ち上がった際、正式な婚約を交わす前に王女を手籠めにし、その対価として王国にとって不利な条約を結ばされた。その結果、徐々に王国は衰退し、滅亡したのだとそうだ。そんな未来を、ニウェウス神からの神勅を受けたロゼリア様達が回避したはずなのに、同じ名前を聞くとは思わなかった。


「その王女の兄弟の孫だったと思います。先王との縁談があった王女は国内の貴族に降嫁して、既に亡くなっています」


先王もグリフィス殿下もパグールスの王女に手を出した結果、滅ぼされている。むしろ最初からハニートラップを仕掛けられたのではないのだろうか。


「私はロゼリア様の時の話やグリフィス殿下の三回目の人生のことは分からない。だけど、これは変よ」


証拠も無いのに推測だけで断定することは出来ない。元々、二つの出来事はあまりに似ていることに違和感があった。だけどまさか同じ国からの干渉だったとは思ってはいなくて、ちょっと戸惑いを隠せない。


「関係が無いなんて貴方も思っていないんでしょう?」


当時を知るアルヴァを見れば、口許に手を当てながら少し考えているようだった。


「パグールスはプルプラのお気に入りの国なのです」

「え?プルプラ神の?」


たった一度だけ会いに来た神の名前に驚く。

肉感的で妖艶な美女なのに、初対面にも関わらず、グイグイと近づいてくる子供のように無邪気な神様。


「建国に関わったとか、特定の誰かを気に入っているというわけではなく、気候や文化などが気に入っているようで、人間に化けて遊びに行ったとか、そう言った話は聞いたことがあります」


パグールスはコロル王国とは海を隔てた場所に位置している。温暖な気候で、人々は陽気で開放的な性格らしい。漁業が盛んで、野菜や果物も美味しいと評判で、近隣国から観光にやって来る貴族も少なくないと言う。一度は私も行ってみたいと思っているし、そう言ったところをプルプラ神が好ましく思っているというのも、理解できないこともない。


「先王がパグールスの王女に手を出した時などは、手が付けられないほどに怒りましてね。私が持っていた【修正者】を選ぶ権利を譲れと言い出しまして……」

「特に思い入れもないから譲ってあげたのね」

「そういうことになりますね」


ニウェウス神のやる気の無さから、適当に遊び感覚でプルプラ神に【修正者】を選ばせたのだと思ったら違うと言うのか。そうであるなら色々と事情が変わって来るような気がする。


「そしてプルプラ神はロゼリア様を選び、無事に歴史修正を完了させた」

「彼女は、とても喜んでいましたよ」


結果としてロゼリア様が犠牲になってしまったことを考えているのか、アルヴァの表情は硬い。コロル王国の滅亡を阻止するというよりも、王女の貞操を守ることが目的だったのだから、王女以外に犠牲となる女性を作ると言うことをプルプラ神は理解していたはずだ。ニウェウス神は違ったというだけの話。


「じゃあ、私のことも……」


グリフィス殿下が再びパグールスの女性に手を出したから、プルプラ神は私を選んだという考えが浮かんだのだが、言葉を途中で止めた。


「そうじゃないわね。グリフィス殿下と私の間には、少なくとも王妃が【修正者】になっているのよ。似たような状況なのに、すぐに怒り出さなかったのはどうしてかしら……」

「先王とは違い、グリフィス王子は【修正者】になりさえしなければ、無駄な野心を抱くことなく貴女の婿になり、放蕩な日々を送る未来でしたから、焦る必要は無かったのではありませんか?」


無能な婿に頭を悩ませていたかもしれない自分を思うと、何だか切なくなるのは気のせいか。


「公爵家の婿になって、他国の王族を殺したとしても、パグールスに問題が無ければプルプラ神には関係ないものね」


だから彼女が介入しなかったと言われれば、一応は辻褄が合う。


「じゃあ百回目の権利をプルプラ神に譲ったのはどうしてなの?」

「百回目で贖罪から解放されるとはいえ、失敗すれば私は消滅してしまいます。出来ることなら、それは避けたいと思っていたところにプルプラ神から提案されたのです。彼女は実績がありましたからね、お願いしたのです」


ニウェウス神が王国の歴史に介入できるのは、主神との契約があるからだ。神とはいえ正式に歴史修正が出来ないのであれば、ニウェウス神に待っているのは消滅という未来だけだ。よしんば消滅は免れようとも、『失敗したから贖罪になっていない。また百回』なんて言われたら確かに嫌だ。主神を虚仮にするニウェウス神を見れば、プルプラ神の提案に乗る様子も容易に想像がつく。



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