真実 04
悪びれなく笑って見せるニウェウス神。この点については、もう割り切るしかないだろう。多分本当に悪いと思っていないのだ。やはり私達とは思考の体系が違うのだろう。
「百回目が終わったら、貴方は解放されるの?」
「そのような約束だったのですがね……」
口許に手を寄せて、少し考えているような、言いあぐねいているかのような顔をする。
「主神は私に、無事に百回目を成功で終わらせたくないのかもしれません」
百回目が失敗するということは、コロル王国が滅亡することが決まったということだ。愛し子を作り出してまで、コロル王国を建国しようとしたのは、他ならぬ主神であるのに、全てを棒に振るというのか。いや、また作り直せば良いと思っているのか。
「しかし、そんなことをして何の得になるのか。私には皆目見当もつきません」
「贖罪と称して体良く使える奴隷を逃がさないようにする為かしら」
「フフッ。神を奴隷とは、貴女もなかなか言うようになりましたね」
結構な嫌味で返したつもりだったのに、にこにこと機嫌良さそうに笑っているのは、隠し事がなくなったせいなのだろうか。
「奴隷は冗談にしても、心当たりは無いの?」
「さぁ……あの耄碌した御仁のことは極力考えないようにしていましたので」
過去の事情を暴露した途端に、主神への嫌悪を隠さなくなったのはいかがなものだろうか。本当に自由というか勝手気ままな性質のようだ。
「じゃあ、仮定として、主神のお気に入りであるルーフス神を殺したことを恨んでるとかはないかしら?」
「無いとは言いませんが、独占欲も強いですが、飽きたら飽きたで扱いも酷いものですよ」
「ろくでなしじゃない」
「ろくでなしですよ」
私達の世界を創った存在だから、どうしても美化してしまうけれど、何だか実情を知ってしまうと幻滅してしまう。いや、ニウェウス神やプルプラ神を見ているのだから、いい加減、夢を見るのを止めるべきだと私は自分自身に言い聞かせる。
「なら、愛し子の末裔を見守るのも飽きて、腹の立つ部下ごと消滅させようと考えたのかもしれないわね」
「あぁ。それなら有り得そうです。よく分かりましたね、セレスティーナ」
褒められていると言うのに、こんなにも嬉しくないことがあるのだと知って、何だか笑えてきた。
「……妨害の理由はともかく、百回目を成功させれば、これ以上王家を狂わせて妨害しようとするのを止めるかもしれないわね」
「私が狙いであるのなら、狂わせる理由が無くなりますからね」
百回目の課題は『グリフィス王子による王国を滅亡を阻止せよ』である。つまり、現時点でニウェウス神が負う責任の所在はグリフィス殿下にあるということだ。百回目を成功させてしまえば、それ以降に滅亡の兆しが生まれたところで、それは王国の人々の責任ということになる。
「でも、これってグリフィス殿下に国が滅亡するような真似をさせなければ、何をしても良いってことよね」
「手っ取り早く暗殺でしょうか」
「……物騒な人ね。仮にも王国と、その王族を守る為に存在している【修正者】が、率先して王族を死に追いやったら、それこそ何を言われるか分かったものじゃないわ。結果として滅亡を回避しても失敗判定を受けるわよ」
そうやってすぐに物理的に行動するんだから、ニウェウス神は案外気が短いと思う。
「しかし、彼が生きている限り、滅亡の原因に成り得るのです。貴女はグリフィス王子が天寿を全うするまで、この歴史修正などという、忌々しい遊びを続ける気ですか?」
「そんなことは言ってないじゃない。私だって、出来る限り早く終わらせたい」
神とか王族とか、そんなものに振り回されるなんて、もう懲り懲りだ。家族や気心の知れた使用人達と、穏やかに暮らしていけたらそれで良い。その為には百回目を、いかに早く終わらせるか考えなければならないのだろう。




