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真実 03

「今となっては、私の中にあるブランシェへの愛さえ疑わしいのです」


ニウェウス神は皮肉っぽく笑って言った。


「だってそうでしょう?ブランシェは私が気に入るように、主神が因果を変えてまで作った存在なのです。愛さないはずがない。当然です。私達は創造神が定めた対なる存在なのだから」


愛していたはずだ。だけど本当に自分の心が彼女を求めたのか、彼は分からなくなったのだ。この世界にとって絶対的な存在である主神にかかれば、他者の感情を操ることさえ容易いことなのだろう。最も近くで見てきたからこそ、ニウェウス神は己もまた弄ばれる側の存在であることを自覚していた。


「私は愛していないかもしれない女性の為に、多くの生き物を殺したのです」


人類を滅ぼしかけたことを、ニウェウス神は酷く後悔しているように見える。ルーフス神を殺害した時は、後先のことなど考えず、勢いのまま力を行使したけれど、悔やんでも悔やみきれない失態であったに違いない。


ニウェウス神は泣いてはいない。それでも彼が悲しんでいないとは思わなかった。


「貴方はブランシェ王女を愛していたわ。男女の愛ではないかもしれない。友愛であったり、親愛であったり、少なくとも彼女へ何らかの愛情を傾けていたはずよ」

「セレスティーナ……」


何の慰めにもならないかもしれない。私はブランシェ王女を知らないし、当時のことなど何も知らない。だからこれは私の願望だ。愛する女性を殺されて怒った末に多くの人々を殺してしまったのだと。決して、誰かに踊らされ、感情を操られて人を殺めたのではないのだと、私は伝えたかった。


「ブランシェ王女も、愛する貴方が自分の喪失を悼んで怒ったのなら、きっと理解してくれるわ」


だけど本当に主神がニウェウス神の心さえ操り、ブランシェ王女を愛するように仕向け、その喪失によってルーフス神を殺させたのだとしたら、残酷で卑劣極まりない存在だ。


顔を見られたくないのか、手で顔を隠してニウェウス神は黙ってしまった。少しでも楽になれば良いと、私は広い背中をポンポンと撫でてやった。暫くそうして待っていると、不意にニウェウス神は顔を上げ、またいつものように胡散臭い笑顔を見せた。ある意味、この微笑もまたニウェウス神にとっては、周囲から距離を取る為の武器の一つなのだろう。指摘してやるのは止めておいた。


「貴方の過去は分かった。歴史修正が贖罪って言うのも分かった。でも、その話の中に王家が呪われた原因はなかったわ」


一番知りたい問題だけが分からなかった。建国王サングィスから暫くはまともだったと言っていた。ではどうして、今の王族はまともではないのだろうか。


「呪いですか……言い得て妙ですね。先程言いましたが、歴史修正を始めた初期は特に問題はありませんでした。皆さん、王国が存続するように考えていましたし、やり直しによって早めに対策を取ることも出来ました」


主神によって、無理やり人間の面倒を見ることになってしまったニウェウス神は、やはり強制されていた為か、やる気は無かったようだ。やり直しの機会だけを与えて、後は人間任せ。ある意味、神の時代から人間の時代に移る時期には、その放任主義なところは理想的な神だったかもしれない。


「それが少しおかしくなってきたのは、百年ほど前からでしょうか――王族の資質が著しく低下したのです」

「……先王のよう執務をしなかったり?」

「はい。家臣らに仕事をさせ、自らは享楽に耽るという珍事です」


百年前というとロゼリア様達の親世代というところだろうか。


「訳の分からないことを言い出し、他国と揉め、急に歴史修正の回数も多くなりました。これまでは百年に一、二回だというのに。一気に揉め事を起こし、滅亡の道を辿るようになってしまったのです」

「ねぇ。前から思っていたけど、歴史修正は決まった回数しか出来ないの?もしかして、ロゼリア様達が行った歴史修正を含めて、私が百回目の【修正者】なの?」


私はグリフィス殿下が99回も王国を滅ぼしたのだと思い込んでいた。ニウェウス神は度々『次の~』とか『次回の【修正者】が~』と言っていたから、無制限だと信じて疑わなかったのだ。


「そうです。貴女は王国が建国されてから百回目の【修正者】です。そして私に与えられた贖罪は、百回分の歴史修正でコロル王国を守ることでした。こんなに早く解放されるとは思っていませんでした。100年で1~2回の頻度では、あと3000年ほどは王国に恩寵を与える予定でしたので」


眩暈がしそうだった。つまり私の歴史修正はニウェウス神が与える最後の恩寵で、失敗して滅亡しても、やり直しは出来ない。


「どうして私には次があるかのように言ったの?失敗していたらどうするつもりだったのよ」

「貴女には消極的な面もありましたから、やり直せると分かれば大胆な行動も取れるでしょう?それに失敗させないように、私は貴女を手伝う為に下界に降りて来たのです。もちろん、貴女は私の手助けなど必要ないほど、上手くやってくれましたがね」


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