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プルシャン侯爵 06

「ロゼリア様は、ニウェウス神から大事にされていたようですね」


何だか凄く低い声が出たような気がする。


「セレスティーナ様?」

「いえ、何でもないわ。ニウェウス神は私に対して言いたい放題だし、すぐに馬鹿するような態度が取るから、優しい言葉を掛けてくれるなんて想像できなくて……」

「そうなのですか?ロゼリア様は、『こんな任を与えることになってしまって申し訳ない』と言われていると仰っていましたから、慈愛ある神なのだと思っておりましたが……」


まさか侯爵も、神の依怙贔屓を目の当たりにして、さぞかし気まずいに違いない。いや、私もわざわざ言わなくてもいいのに、つい口を衝いて出てしまった。だって、ニウェウス神は『貴方は私のお気に入りです』なんて恥ずかしげもなく言う癖に、優しい言葉を掛けてくれたことなんて殆どない。


「ニウェウス神の気に入られて、ロゼリア様もそれに応えたかったというのかしら……」


性格は最悪だが、ニウェウス神は顔は良い。物腰も柔らかいし、話し方も優しく聞こえる。これで本当の恋人に見せるような誠実さを出して来たら、コロッと転がってしまう女性もいるかもしれない。勿論推測に過ぎないけれど。


「ロゼリア様がニウェウス神に恋を……」


当時のロゼリア様の言動を思い返しているのか、侯爵は口許に手を当てて考え込んでいる。


「ニウェウス神がロゼリア様の『大切な人』なのかどうかは分からないけれど、その人の為に自ら嫁ぐことを決めたのね?」

「はい。それ以降は、我々が歴史修正に手を貸すことはなくなりましたので、恐らくロゼリア様も何もしていないと思います……」


パグールス侵略の阻止は、先王とロゼリア様の婚姻によって歴史修正の任を完了したと言うことか。つまり私の場合は、フラビアを遠ざけ、クランシー殿下を暗殺から守り、どこぞの王女を近づけさせないことが任務のゴールなのだろう。控えめに言って、かなり難しいのではないだろうか。


「ロゼリア様は、先王と御結婚されてから頭がおかしくなったりはしていないの?」


降嫁した王女も頭がおかしいまま、その王女が産んだ子供も頭がおかしい。人知を超える力が働いているとしか思えないのだ。


「至って正常でした。恐らくは神の加護などをいただいたのではないかと思うのですが、おかしくないでしょうか?」

「変って、どういうことかしら?」

「コロル王国の恩寵はニウェウス神と建国王サングィスとの契約です。その契約が何らかの事情によって歪んだ為に、致命的な欠陥を持った王族が産まれてくるようになった。つまり原因は神の御業によるものなのに、その影響を受けぬように新たな加護を授けるのは本末転倒ではございませんか」


現状は石橋が崩れかかっているのに、根本を改善しないで、その上に石を積み続けるようなものだ。プルシャン侯爵はそう言いたいのだろう。王家の人間が呪われているというのなら、呪いを解くか、ロゼリア様だけでなく王家の人々にも加護を授けることがをするだろうに、それをしないのは確かに疑問が残る。


「それでも既に高位貴族達の間では王家は呪われているというのは共通認識でしたから、ロゼリア様は懐妊されないように徹底されました。側室となった娘も男爵家とは言うものの、平民と変わらない者を選び、先王の下に送ったのです」

「濃くなり過ぎた血を薄めようとしたのね」

「けれども、やはり簡単にはいかないようでして……」


現国王も暴君ではないが愚鈍で、王の資質があるとは言い難い。


「現王妃も結婚前はあのような令嬢ではなかったように思います」

「王妃が?」


私の中では王室で一番酷いと思っているのだが、プルシャン侯爵は首を振る。


「二代に渡り、下位貴族を王室に迎えるのは外聞が悪く、苦肉の策として外国の血が入ったエスメラルダ侯爵家の娘を選びました。真面目で勤勉でしたので、一縷の望みを掛けたのですが……」


政治の中枢に、歴史修正というペテンを知っているロゼリア様らがいる以上、王位簒奪など無駄だということも分かっていたから、そのような消極的な方法を取ったのだろう。犠牲を生み出し続けながら、それでも民達が苦しみ惑うことが無いように、出来得る手段を探し続けて。

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