プルシャン侯爵 05
ロゼリア様がサイアン公爵家を継ぐ――それは真っ当な判断だったと言えるだろう。民を奴隷や家畜と考えるような愚物が、上に立ってしまえば、取り返しがつかないような騒動が起きる可能性もある。例えば、国家滅亡のような。
「ある時、私とセルリアン侯爵はロゼリア様に呼び出されました」
「ロゼリア様は、自分は時間を繰り返していると告白されました。そして、このままではコロル王国が滅亡してしまうから、力を貸して欲しいと仰いました」
「私達は呆気に取られた後、ついにロゼリア様まで気が触れてしまったのかと思いました」
プルシャン侯爵の中では、祖父は気が触れていると結論づけていたのだろう。我が先祖ながら、とんでもないし、その血を引いているかと思うと何だか嫌悪もしてしまう。
「全く信じない私達にロゼリア様は、数ヶ月以内に起こるいくつか未来を語りました。その日はそれで帰りましたが、半年後に我々はロゼリア様に頭を下げて会い行きました。ロゼリア様が語った話は、全て事実になったのです。これでは信じざるを得ませんでした」
「その時に、神勅を受けたと聞いたのね」
そして三人は協力して、パグールスからの侵略を阻止する為に動き出したそうだ。パグールスから送られてきた王女の絵姿をすり替えたり、王女が表敬訪問という名のお見合いにやって来た時はスケジュールを変更せざるを得ないような状況を作り出し、徹底的に邪魔をしたらしい。
「そのせいで先王陛下はロゼリア様に興味を持ってしまい、王女ではなくロゼリア様を妻にと求めました」
良かれと思った行動が裏目に出てしまう。ガーデンパーティーでグリフィス殿下に気に入られてしまったかもしれないと、アルヴァにも注意されたが、きっとロゼリア様も同じだったのだろう。
「サイアン公爵家を継ぐのはロゼリア様――大旦那様と一門全員の意志は一致しておりました。大奥様と御先代様を除いては」
それはそうだろう。正しく王族の血を引く嫡男を差し置いて、愛人の子が婿取りをするなんて普通は考えられない。さぞ憎々しい思いでいたに違いない。
「ロゼリア様の代わりに差し出す娘を探さなければならないと慌てたのですが、当のロゼリア様本人が求婚を受けると言い出したのです」
「ロゼリア様には婚約者がいたのでしょう?」
「はい。ロゼリア様は、計画の最初から婚約を解消し、王家に自らが嫁がなければならないのだとお決めになっていたようでした」
「どうして?」
「詳しくお話してくださいませんでしたが、『大切な人を生かす為にはこの方法しかない』と仰っていました」
大切な人。それは誰を指すのだろうか。心当たりはある。コロル王国の滅亡によって消滅の危機に瀕している人物―――ニウェウス神のことだ。ロゼリア様はニウェウス神を生かす為に、自らが犠牲になったというのだろうか。
「ロゼリア様の良心に、ニウェウス神が付け入ったのかしら……」
「それは分かりません。ただ、神がロゼリア様を気に掛けてくださっていたとは聞いております。何度も労りの言葉を頂いていると」
ニウェウス神が労りの言葉を?私にはそんなものをくれたこともないのに。
諸事情がありまして昨日は更新分を書き切ることができませんでしたので、本日はPM6時にもう一話更新します。




