プルシャン侯爵 03
コロル王国存続の為の、ロゼリア様の献身も、プルシャン侯爵の覚悟も理解できる。王国の滅亡からの神の消滅、そして人類の滅亡を聞かされているのなら猶更だ。
「でも……」
だからこそ言いたいことがある。
「あんなにも愚かな王族を生かし続け、ロゼリア様のような犠牲者を増やすことが正しいとは思えませんの」
先王の過ちをロゼリア様が自分の幸福を差し出してまで修正したのに、孫であるグリフィス殿下が同じ過ちを犯して王国を滅亡させているのだ。歴史を修正すべき【修正者】であるにも関わらず。
「グリフィス殿下も【修正者】に選ばれたそうですが、三回も国を滅亡させたので御役御免となったそうです」
「貴重な歴史修正を、に、二回も無駄に……?」
威厳溢れる老紳士であるプルシャン侯爵の顔を、ちょっと間抜けに見せるくらい衝撃の事実だったらしい。
「一度目はフラビアに近づいた他国の男性に悋気を起こして殺害、からの戦争です。二度目は王太子であるフランシー殿下を暗殺し、自らが王位についたものの独裁国家のようになり果て、クーデターで滅亡したらしいです。三度目は先王と同じく、他国の王女を手籠めにしようとして相手の国に滅ぼされたと聞いています」
以前、私も『もう良いから、もう聞かせないでくれ』とニウェウス神に頼み込んだが、話している方も辛い。ニウェウス神も同じことを私の前の【修正者】達に語っていただろうに、よく正気を保てたなと感心してしまう。
「プルシャン侯爵がロゼリア様に忠実であることは分かりました。けれども、【修正者】がどれだけ身を粉にして働いたところで、その努力を灰燼に帰す愚か者を生き永らえさせることの無意味さを感じているのではないでしょうか」
ロゼリア様は先王とパグールスの王女の顛末を知った上で、自らの婚約者と別れ、王家に嫁いだのだ。愚かで女性にだらしがないと分かり切っている男性と、結婚すると決めた彼女の覚悟を思うと胸が痛い。フラビアを選び、私を蔑み罵ったグリフィス殿下と、人類滅亡を阻止する為に結婚しなければいけないのだとしたら、私なら全てを投げ出して逃げたくなってしまうだろう。だってフラビアがいなければ他国の王女に手を出すような男なのだ。誠実さを爪の先の一かけら分さえ持ち合わせていないのだ。幸せになんてなれるはずもない。
プルシャン侯爵はテーブルに肘を付き、手で顔を覆う。主家の姫が犠牲になったのに存続が確約されていないのである。維持できなかった不甲斐無さに打ちひしがれているのだろうが、まともな人間の理解の範疇には無い事柄について、いくら考えても無駄だと言うことを私は伝えたかった。
「セレスティーナ様の『前回』の最期は……」
「16歳の時、サイアン公爵の愛人に殴り殺されたところで終わってるわ」
「殴り殺されたのですか?」
「えぇ。平民と貴族は婚姻を許されないのだから、身の程を弁えろと言ったら、ガーンっとね」




