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第6話:彼氏彼女

聖清流女子高校は噂で持ちきりだった。

 あの人が在馬様の?嘘、普通の子やん。あんな顔してすごいせまったらしいよ。彼女でもないのにしつこく電話してくるんやって。在羽君だけやないんやて。裏ですごいやりまくりらしい。えー、やらしい!おとなしい顔してめちゃめちゃ腹黒いねんであの子…。

「なんか、良くない方向に流れていってるやん」

 馨のクラスメイトの澄は言った。

「噂ってすごいなあ」

 馨は黒板を消し終わり、袖についた粉をはたきながら言った。

「んで?実際はどうなんよ?」

「お前もか!」

 馨は袖を澄のおでこにぶつけた。

「だって知りたいやん!いつも無口で何考えてんかわからんあんたがどうやって「清流に吹く風の君」をおとしたのか!」

 澄は興味津々で馨に聞いた。教室には周りもその質問の答えを密かに聞いているようなそんな雰囲気が漂っていた。

 馨はしばらく黙った。そして言った。

「もう来ないと思う」

 どうして、と聞いた澄の質問に馨は答えなかった。

 でも、少し惜しいことをしたかな。確かに顔はかっこよかった。


 目の前に大きな影が落ちた。バス停でコロッケを食べていた馨はほおばりながらそのまま顔を上げた。

「美味しい?馨ちゃん」

「会えたその喜びのあまりコロッケ吹き出さないでくれるかな?」

 ファイはちょうど腰あたりに吹き付けられたコロッケの残骸を払いながら少し引きつった笑顔で言った。

「何しに来たんや?」

 むせるのが治まってようやく馨は言った。

「買い食いにコロッケは重いんじゃない?」

 馨の手に残っていたコロッケを一つつまんでファイは言った。

「食うな!」

「ケチー」

 馨はコロッケを全部口に押し込んだ。バスがバス停に着いた。馨は立ち上がり言った。

「わたしに魔力はないで。相談やったら友人に聞いてもらいや」

「僕にはそんなこと言っちゃって、南野さんの相談はのってあげるんだ」

 ぎくり、と馨は立ち止まった。

「こんなところでコロッケなんか食べてるってことは、今日はマクドじゃなく、どこかの公園ででも待ち合わせでもしてるの?」

「公園やない。ジュンク堂前や」

 言ってハッと馨は口を押さえた。

「本屋前?ははーん。さては何か買うついでにやっぱり気になるから相談にのってあげる気だね?」

 馨はファイに静かに聴いた。

「あんた…もしかして」

 一呼吸置いて馨は続けた。

「魔法使いなんちゃう?…って、なんでそこで笑うねん?」

「いや…馨ちゃんって、結構天然だよね」

 お腹を抱えて笑うファイの姿に、馨はむっと眉をひそめてバスに乗り込んだ。

「今日はついてきたらあかんで!」

 バスに乗り込ますかと閉まる寸前で言った。

「失敬だな。まるで人をストーカーのように」

 横目で言ったファイに馨はべえと舌を出した。

その時、込み合ったバスの中からファイに向けて叫ぶ声がした。

「在羽君!本当なのね?由木さんと付き合ってるって!」

 奇声が起こった気がした。

 その声にファイは少し照れていつも以上に華をしょってはにかんだ。

 

 ビー、バタンとバスのドアが閉まった。バスがファイを残して走り出した。

少し離れた停留所で清流女子の制服の少女が降りる姿が見えた。そして一目散にさっきまで居た停留所に戻ってくる。

 にっこりと微笑んでファイは言った。

「おかえり、馨ちゃん。嬉しいな。わざわざ僕に会いに戻って来てくれるなんて」

「な、な、なんなんや、さっきの!?誰と誰が付き合ってるって?」

 息を切らせて馨は言った。

「僕は言ってないよ、そんなこと」

 すました顔でファイは言った。

「せやったら、なんであそこで照れたように笑うねん!逆に意味深やろが!否定しいや!」

 ファイはさっきと同じように少し照れながら頭をかいた。

 明らかに演技だ。こいつ、何が目的なんや?

「さあ行こう。南野さん待たせちゃ悪いでしょ?」

 ファイは馨のカバンを持ち、歩き出した。

「ちょ、あんたは行かんでええから!」

 手を伸ばすと待っていたかのようにその手をファイがつかんだ。

「はぐれちゃわないように」

 はなせと叫ぶも人ごみにかき消され、結局、馨はファイと一緒にジュンク堂書店まで向うことになった。


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