表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第5話:大嫌い

「おはよう。馨ちゃん!」

 金曜日の午前6時半、風灘の鋭い獅子の校章を輝かせながら、ファイはバス停で待っていた。

「お…前、よく…」

 馨はファイの周りに輝くオーラを避けるかのように、1メートル程離れた地点で固まっていた。

 勝ち誇ったようにファイは言った。

「ふふん。僕を誰だと思っているんだい?僕はいつも黙って馨ちゃんの帰りのバスを待っていたわけじゃない。僕なりに馨ちゃんがどこで降りるかを推理してね、毎日試していたのさ、そうしてようやく…」

 馨の不気味なものを見るような青い顔を目の当たりにして、ようやくファイは言葉を止めた。そして腰に手をあてて得意げに言った。

「ふふふ。愛の大きさに驚いた?」

「あほか――!気持ち悪いわ――!」

 馨の持っていたお弁当バックはファイの頭を直撃した。こんなのが「清流に吹く風の君」でいいのか。

「ん。これ、ポッチの景品じゃん。当たったの?」

 ファイは馨のお弁当バックを見て言った。それは新発売したチョコレート菓子の抽選プレゼントの景品だった。ひよこに似たキャラクターが人気らしい。

「そうや!可愛いいやろう?これを当てるためにどれだけポッチを食べたことか…」

 馨は少し自慢気に言った。

「馨ちゃん、これが好きなの?」

 ファイは馨にお弁当バックを手渡して言った。

「すっ、好きや。悪いか?」

 自分には似合わないと言われているようで、馨は急に恥ずかしくなった。

 へえ、とファイは笑った。その様子にむっとしていつものとおり口を開こうとしたその時、ファイが何かを差し出した。

「これ、なーんだ?」

「…な、どうしたんやこれ」

 目の前にポッコ(ポッチのキャラクター)の携帯ストラップがぶら下がっていた。

「この前のインタビューでもらったんだ。あげようか?」

 思わず前のめりになった馨の前でポッコは宙を描いた後、ファイのポケットにしまわれた。

「タダでとは言わないけどね」

 十センチ近く高い目線からファイが馨を見下ろした。

「なんやねん、それ」

 馨が視線をそらすとファイがそっと耳打ちした。

「キスと交換でどう?」

 馨が頭を上げるとファイがにやりと笑っていた。

 馨は大きく息をすった。そして高らかに宣言した。

 ビッと真っ直ぐに突き出された指はファイの目の前で止められた。

「ええか?あんたがどこぞのお偉いおぼっちゃんで、有名人であろうともわたしはそそのかされへんで。どうせあんたもおばあちゃんの信者やろ?残念でした!わたしには魔力なんてないねんから」

 息をついで馨は続けた。

「それにや。あんたみたいな性格の悪い女こまし、魔力があってもぜーったいに助けたらへんから覚えとき!」

 馨はそれだけ言うとそそくさとバスに飛び乗った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ