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エピローグ

 山の里墓地。

 馨は祖母の墓石の前にいた。ひとつは報告、もうひとつはお礼も兼ねて。

 今考えれば不思議な一週間だった。見知らぬ男子学生と知り合い、守ると言われた。そいつは『清流に吹く風の君』なんてよばれるプレイボーイで性格の悪い女こましだった。男にモテたい同級生と冒険家の夢を持つ風灘の学生にも狙われた。そして、祖母の魔力を受け継いでしまった。

 馨は手を合わせて言った。

「くうちゃんが送ってくれたボディーガード、めっちゃ変なやつやったで」

 ファイは言った。霊が見えると。まだこの世界に祖母はいるのだ。馨はそこに祖母がいるような気がしてそのまま話しかけた。

「教え子に優秀で勉強熱心な茶目っ気がある可愛い生徒がおるって言うてたけど、どこがやねん!あれがくうちゃんのいってた“ファイ君”かいな。もー、くうちゃんが会うたびに“ファイ君”のこと話すからさぞかし真面目な風灘の青年と思いきや、あんなんでてくるし、どうしてくれんねん。私の裏切られた期待感!」

 馨は上を向いた。青い空がいっぱいに広がっていた。

「…でも」

 馨は笑った。

 祖母がそばにいるような気がした。

「案外、ええ奴やった…かな」


 <ええ。私は昔から男の人を見る目はあるんですよ>


 そっと頭を撫でられた気がした。

「ありがとう。くうちゃん!」

 馨は空に向かって叫んだ。

 何か耳元で言われた気がしたが、なにかわからなかった。

 祖母は安心して成仏できただろうか。

「行っちゃった…かな」

 馨はほっとしたようにつぶやいた。


「行っちゃったよ、今度はマグロ漁船に乗ってそうないかついの連れてた」


 聞き覚えのある声に馨は声のほうを見た。

「おはよう。馨ちゃん」

 にっこりと在羽ファイは言った。

「ミス・クレアも懲りないよねー。彼はジョニーって紹介してくれたけど、明らかにあれ田中さん家の墓石から出てきたぞ」

「くうちゃん、元気そうやった?」

 馨はファイに聞いた。

「今日は海にデートだってさ」

 そっか、と馨は空を眺めた。

「ミス・クレアからの伝言あるんだけど、聞く?」

 馨が頷くと、ファイがにっこりして言った。

「『私の弟子はあと百人くらいいます』ってさ」

「ひゃくっ…て…もしかして、そいつら全員くうちゃんの魔力を狙ってるとか?」

「さあね。でもああやって成仏してないってことは、心配事があるんじゃない?」

 ファイの言葉に馨は頭を抱えこんだ。

 また狙ってくるのか。祖母の弟子が。

「そこで提案。優秀で勉強熱心な茶目っ気がある可愛いボディーガードが必要だと思わない?」

 ぎくりとして馨はファイを見た。聞いていたのか。

「はい。これ」

 ファイは昨日馨に渡した携帯を、再び馨に手渡した。

「じゃ、行こうか。道中説明するよ。携帯の使い方」

 馨の手を引いてファイは言った。

「あ、在羽。行くってどこへ?」

 馨はファイの背中に話しかけた。

「そうだな。そりあえず―」

 ファイは立ち止まり、空を見上げた。

「海でも見に行きますか」


FIN.




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