その弐
太朗はベッドの上で目覚めました。
「まだ安静にしてなさい。」
優しそうな婦人が少し微笑みながら言います。
太朗は鬼達の集落を抜けた後、おじいさんやおばあさんのいる村へ帰ろうとしたところ、途中の山で倒れてしまったことを思い出した。
「あなた、気を失っていたのよ。お連れのワンコとお猿が助けを求めててね、そのときに丁度私の娘が通りかかったものだから運が良かったわ。それでこの名もなき山村に運んんできたのよ。」
「ありがとうございます。あの…」
「連れの子たちは無事よ。」
太朗は安堵しました。そして足に力を入れて起きました。
「すみません。でも僕、帰らないと。」
「まだ安静にしてて。大きなたんこぶもあるし。」
太朗はそう言われて頭を触ると、丸い突起がありました。きっと倒れたときにぶつけたものなのでしょう。
すると、扉から少女がやってきました。
「あなたは…」
「あのときはありがとうございました。」
少女は少し照れて言いました。その少女は太朗たちがきび団子をあげた少女でした。
「この子ったら、体調替わりのに無理に山菜の採集なんかに行くんだから。
本当に感謝してます。」
太朗は家に出ました。
太朗は初めて家の外に出ました。そこは小さな家が9つほどある、ほんとに小さな村でした。
お互いに名を教えあいました。
少女の名はカロといいました。
「あなた、人間ですか」
カロがいいます。
「そうですよ。なぜそんなことを?」
「人間は嫌いなのです。」
「そんな、あなただって人間じゃないですか。」
「ここにいるのは全員鬼のようなものです。」
「…?」
「もともとこの山村の住人は麓の村で他の人間と一緒に暮らしていました。
しかし、人間は体の大きな鬼を恐れ、鬼に対抗するために作った鉈や弓で鬼を迫害しました。」
私達の村の住民の先祖は鬼と仲良く暮らそうとしてきた人たちなのです。しかしそのような人たちは人間では少なく、村八分にあい、麓の村を抜け、山に住み始めました。」
「おかしいと思います。もともとこの島には鬼が住んでいたのに、後からきて住処を盗ってさらに殺しちゃうだなんて...」
彼女は相当麓の村の住民に憎悪感情を持っていました。いや、彼女だけではなく、この山村の住民全員がそういった感情を持っているのでしょう。
「僕はよくわかりません。ずっと鬼は悪者だと教えられてきました。でも実際に鬼の住む集落に行って、なんだか鬼は悪者ではないのかもと。でも村の人たちは優しいし、なによりも血がつながっていないのに育ててくれたおじいさん,おばあさんを悪者だとは思えません。」
カロは少し不審な顔をしました。
「とにかく、助けてくれてありがとう。」
「いや、こちらこそ。」
お互いに助け合った関係にしては二人の関係には溝がありました。
「あっ、犬と猿じゃないか。」
仲間に太朗は再開しました。きび団子の所持数は現在0個です。