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顛末

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


3-14.顛末。


take1.

「虱が蚤を追いかけた」

蚤の"み"のところだった。

熱狂的なパレードの最中に、予定通りにそれは起こった。

アルディンの頭の1m程離れた路上からいきなり刃物が現れ、手を振っていたアルディンの頭にペーパーナイフが突き刺さった。

観衆から悲鳴が上がる。

「「痛っ!」」

アルディンと俺が同時に呻く。二人の足は念の為に紐で縛り付けてあった。

「よし!共感は出来てる。ウラナ君。思い切り首を右に曲げろ」

ノヅリ先生が念話で呼びかける。この恩寵の発動には、本当に首を回し左の頬を相手に向けると言うアクションが必要だと先生に言われている。

ゴキ!俺は後で筋が違った程首を回した。


take2.

俺以外は歌を歌っている。

「みんな、虱が蚤をの"み"だ」

「判った。じゃあその前の"フナムシが虱を追いかけた"が終わったら屈めばいいな」

「出来るだけ引きつけて。"虱が"の"し"で」

「判った」

女性二人は歌い続けている。ちょっとオコの声が震えている。オルゴールとずれると台無しなので、責任重大なのだ。

「フナムシが虱を追いかけた。虱が…」

靴の紐を結び直すかの様に自然に頭を下げたアルディンの隣で微笑んで手を振っていたパナの頭に、ペーパーナイフが突き刺さった。

観衆から悲鳴が上がる。

倒れたパナをアルディンが抱き抱える。

オコが直ぐに結界を張り、馬車はそのまま王立病院に向かう。


翌朝、事件について正式に発表された。

「ペンジクの富豪令嬢パナを殺害せんとて、ミスリル製のペーパーナイフを至近距離から投げつけし者あり。ナイフは都下文房具商を営むレムリア堂にて銅貨200フィルで販売せしものなり。犯人の足取りは掴めず、当局が捜査中。

なおパナ嬢はナイフが髪留めに命中したため、九死に一生を得、王立病院にて静養中」

その後このナイフは長子フサイ殿下も執務室で使っていたとの証言があり、ゴシップ好きの都の人々の話題になったが、殿下は今もこのナイフを所持しており、これは次男アポル殿下が中ぐらいの猪を狩りで射止めた(どうせ最後に止めを刺しただけだろうが)祝いの記念品(ホールインワンのチョコレートみたいなものか)として、関係者に配られたもので、ノヅリもアルディンも持っていた。しかもその品には凶器にはない

「巨大猪討伐記念 アポル」

と言う恥ずかしい刻印が掘ってある。兄弟達はこれを見るとついクスッと笑ってしまうので、結構気にいっていた。フサイ兄殿下は文官なので剣は帯びない(結構いい腕前らしいのだが)。フサイ殿下に濡れ衣を着せたいためにこのペーパーナイフを使ったとすれば、雑な話だ。せめて本物を盗めよ。と言いたい。

「あの軽いミスリル製のナイフを正確に相手にあて、頭蓋を撃ち抜くには、人間の力では無理があります。特殊な小型弩(いしゆみ)の様なものを使ったのでしょう。本来の矢では足が付くと思ったのでは?」

暗器に滅茶滅茶詳しい元暗殺者(アサシン)のケイトーはそう分析した。


頭蓋と言えば、ナンバーズの頭蓋はオルコン製なので、髪留めなど無くても傷一つついていない。

「まあしかし、パー子が襲われた事はシバヤン様には内緒にしとかないとな。バクロンが滅びかねない」

「そんな事はしない。パーサから逐一報告を受けていたからな」

目の前のパーサが突然話し出す。いつもの事だが心臓に悪い。

「シバヤン様、私は」

形だけ頭に包帯を巻いたパナ(パー子)が呼びかけるとシバヤンは遮って

「その先はアルディン殿に言うが良い。ナンバーズは尋ねられなければ言わないでいる事が出来るが、嘘をつく事は出来ないのだぞ」

パー子は跪いて頭を垂れた。

「メグル殿、じゃじゃ馬娘が迷惑をかけたな。今回は我が娘、八娘の選択を尊重したい」

「畏まりました」

パー子を怒鳴らないなんてシバヤンも大人になったものだと思ったが、案外またサンディにベアハッグを決められて、パトゥニーに懇々と説教されたのかも知れないな。

「そんな事はない。今回はそうならない様に自重したのだ」

しまった!神々は人の心が読めるの忘れてた。しかしあの二人の奥さんは最強タッグだぜ。

「さてそろそろ通信を切らねばエルロン殿が気を揉むであろう。後はメグル殿に任せる。さらば」

エルロンはバクロンの主神である。


時間が下るが、不届き者達の末路を記しておきたい。

忌まわしい皇太子夫妻暗殺(未遂)事件後、それは約一カ月後に起こった。

「ナイフを飛ばすのでかなりの魔力を使っただろう。最低でも数十人の装甲兵を遠方の別空間から送り届けるのだ。蓄魔にまた魔力を貯めるのに一カ月はかかるだろう」

ケイトーに魔力の流れを監視して貰いながら襲撃への対策と、俺との約束だった20歳までのノヅリ先生の勉強成果(あざーっす)と、主だった各年代の古文書を記憶に収める作業に没頭した。

「本来に君は恐ろしい子だねえ。どんどん吸収して行く。まるで海綿(スポンジ)だ。これから君の事を全身海綿体と呼ぼうかな?」

いや、それはやめて!


お店は大繁盛を続け、今後の旅行資金には事欠かなかった。終わり頃にはナランダーの商業使節も到着し(団長はパナの仮親だった)、この喫茶店を継承するため権利を買い取ってくれたので、またお金持ちになっちゃった。オコはスパイスティとカルダモンティのレシピを商団に売り渡してホクホクしていた。

商団はバクロンを拠点にダルジーン紅茶の販売を西南レムリア全域に広げ、同時にペンジク各所に

「聖狐天のティハウス」

を展開し、次々とスパイスティの新製品を発表した。しかし売り上げNo. 1はカルダモンティと、あのシナモンクッキー。人呼んで

「オコの味焼き(おこのみやき)」

であった。そんなこんなで一カ月が経過した頃、ケイトーから魔力の流入が止まった。との報告が入った。満タンだ。


ちょうどイザン朝国王陛下から俺にサスペンション伝来の褒賞を与えたいとのお達しがあり、それどこじゃないからと断ろうとしたが、ノヅリ先生が、丁度いい機会じゃないかとお受けする様に勧めた。また勲章のみで話がついた。

「勲一等黄金蚤大勲章」

アルディンがこの名前にする!と譲らなかったらしい。童謡の経緯を聞いた陛下もフサイ殿下も爆笑し、すんなり決まったとか。


授与当日。久しぶりに謁見の間には陛下と五人の王子が勢ぞろいした。ここを狙わない手はないだろう。正直ちまちま時と場所を変えて暗殺の矢が飛んでくるゲリラ戦術が心配だったが、先生は"革命はドカンとやるもの"と泰然としていた。

俺と先生は、対策に奇妙な鳥型の魔道具を開発していた。蛇腹の様な羽根をパタパタさせて飛ぶ人工鳥で、空間の割れをいち早く検知し、俺の頭をスパーン!とはたくハリセン鳥だ。俺はこの頼もしい守護鳥を

「イージス」

と名付けた。


本当に奴らは授与式の最中に現れた。

突如空間が割れ、ジャハドとウッディン商会の面々。30名程の傭兵と、大東人の科学者数名が現れた。バクロンも舐められたもんだが、陛下や殿下達を人質に取るつもりだったのだろう。

「スパァーン!」

俺の頭がハリセンチョップを受け(結構痛い)、俺が首をゴキッと回す。

二回目は衛兵が巨大な網を持って待ち構え、裂け目から飛び出して来る連中を文字通り一網打尽だ。


奴らが持っていた決起書には

「先帝を廃し、新たにアポル殿下を新帝となし、その後にバロニア新国王に禅譲す」

と記されており、アポル殿下がパニック的に首を振って否定していた。ガードの甘い次男殿下が訪問客(実はジャハド)と宴会になり意気投合し、

「余が国王?いいねえ。すぐ譲位して年金生活?楽でいいねえ。貴君がお膳立て?いいねえ」

と酔っぱらって安請け合いの口約束をした事がわかった。


「さて、こいつらどうするか?」

陛下もフサイ宰相殿下もアルディン皇太子殿下(当確出ました!)も思案顔。

その時またスパァーンと俺ははたかれたが、首は回さなかった。空間の裂け目からとんでもなくおっかない男が出て来たからだ。

「天帝直属捜査室の者です。こいつらとうとうやらかしましたか。ご迷惑をお掛けしました。全員こちらで引き取り、取り調べと裁判をお任せ頂けないでしょうか?」

国際問題、いや神界際問題になりそうなので、一同一も二もなく了承した。

柔和な文官姿(スーツ)だが、目が全然笑ってないマット・デイモン似の猿顔捜査官は、巨大な金属の輪で全員纏めて締め上げた。アルディン殿下が

「あのう、お名前を」

と言うと

「これは失礼しました。小官は天帝直属捜査官。齋天大聖と申します」

と鮮やかな敬礼とともに姿を消した。

猿顔やない。マジもんや。

読んでいただきありがとうございます。

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