この先生きのこるには(2)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-8.この先生きのこるには(2)
「え!なにそれ?」
鏡には古代文字(これを読むのが検世師の仕事)で
@
とだけ記されている(物語上意訳しています)。
「これはなに?」
「以前古代文字の専門家の教えを受けた事がある。その先生の見解では『何々に於いて』とか『何々の地にて』とか読む略号らしい。詳細な情報を求めるこの呪を入力してこれが出るという事は、俺の前世は無いのではなく、輪廻の鏡が読み取れない何かと言う事になる」
「じゃああんたは何者?」
ヨウコは腕を組んで俺を睨みつける。
「今から本当の事を正直に言う。信じられないと思うが、まず最後まで聞いて欲しい」
ヨウコは真剣な顔をして体育座りした。一言も聞きもらすまいという真剣な表情だ。
「俺はみなみめぐる。姓のみなみは朱雀と書いて南の地を護る朱きガルーダ。字名のめぐるは還流。森に注いだ雨が、川を流れ大海に注いだ後、天に昇り雲を作り、再び森に雨を降らせる。と言う意味だ」
大学時代、俺の難解な姓名を肴に東洋哲学専攻の友人と下宿でトリスを飲んだ時にコジツケてくれた解説を、俺は気に入っていた。
「俺はここでは無い別の世界に生まれ、66年の平凡な生涯を終えて、この世界に転生した。この世界に産まれた時、輪廻の鏡は俺の前世を映すことが出来なかったので、ボンの生まれ代わりと誤認され、ボンになるべく育てられた。しかし俺の心の大半は、異世界の老人のものだ」
「なに?えーとメグルはめぐるで、私のおじいちゃんと同じ歳で(そうなのか)、異世界の人?」
ヨウコはぶつぶつ言ったあと黙り込む。
そして急に立ち上がって喚き始めた。
「おかしいおかしいおかしいおかしいよ!そんなのやっぱりおかしいあり得ない!だってそれなら私が呼ばれる訳がない!」
そうだな。輪廻の鏡は魔道具だからバグ、というか仕様か、があって騙せても、初代妖狐の誓いから始まるヨウコの系流が、仕えるべきボンを選び間違えるはずがない。
「ヨウコ、お前も混乱してるし、朝餉の時間は既に過ぎて、御勤めの時間が迫っている。続きは夜にしよう」
俺もこの矛盾問題を考察したい。
「分かった…。だけど多分私では、これ以上考えても頭が痛くなるだけだから、相談する人、連れてきていい?」
「!?…………。いいぞ。お前が心から信頼していて、絶対に秘密を漏らさない人なら」
「保証する」
俺は正直失敗したかもと思った。いつも気丈で完璧なヨウコが、あそこまで狼狽するとは。いやそういう性格だから、矛盾が我慢出来ない訳か。
しかし、今のヨウコの精神状態で選ぶその人物が、本当に保証出来るのか?
「フラグ処理間違えてバッドエンドか?」
いやここは自分の選んだ選択肢を信じるしかない。
飛び込んんだ先が
豪華賞品か、
泥のプールか。
俺は情緒不安定なまま夜を待った。
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