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王家の内幕

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


3-7.王家の内幕


アルディンが帰ったあと、パーサと話をした。

まずは俺の素性が英雄ととっくにバレている件。

ウラナという名前は珍しいので、これは想定内だ。旅を有利に運ぶためには、この方がいいと判断している。

ウラナの素性まではペンジクでも公開されていないので、ウラナが国民的英雄として表彰された事が知れても、ジョウザまで辿る事は出来ない。

とは言えこの町に来てから一度もそんな事言われなかったのは、情報が極秘だったからだそうだ。

アルディンは、どうもペンジクの英雄がバクロンに来ているらしい。どうにかして会えないか?とパナに聞いたとの事。


「あしがこの喋り方するのは、あしのあいでんてぃてぃつーもんだで、勘弁したってちょうよ」

パーサは鶏の手羽先を齧りながら、アルディンの事を話し始めた。

2年前にアルディンが通商大使としてナランダーを訪問した時、シバヤンはある任務のため信頼出来る信徒の富豪に八娘(クローン分裂前)を娘という名目で預けていた事。八娘は王子と友人になった事。

「任務って?」

「それは極秘なんだて」


そして今のアルディンの宮廷内の立場について、パーサは語り始めた。

「あの子はなあ、国王の最後の子で、遅くに国王が迎えた若い王妃の忘形見なんだわ」

王妃は出産後程なく病に倒れ亡くなり、その後国王は王妃や妾を迎えていないそうだ。

「この国の相続はちょっと変わっとってなあ」

それは学んだ事がある。末子相続なのだ。この王朝は揃いも揃って長命なため、王の死後長子が跡を継ぐと次の国王の即位期間が短いので、末子が継ぐ風習があった。現在の国王は70歳。長子フサイは50歳。末っ子のアルディンは14歳。このまま国王が歴代の様に120歳近くまで生き、アルディンの後も王子が生まれるなら末子相続も意味があるが、国王は最近病気がちで、もしもの事があると即位後70年も統治出来る長兄が譲る意味がない。間の3人の兄たちも、アルディンじゃないなら俺たちだって。という気にもなる。


「言う訳で、今宮廷はドロドロなんだわ」

誰が立太子するか、結構暗躍が続いているそうで、アルディンも結構危ない目に合うそうだ。

長兄は長年宰相を務め、官僚から担がれようとしているが、本人は建前上末子相続の伝統を破る事には反対している。後の3人もそれぞれ取り巻きがいて不穏らしい。


「しかし実力者の長兄フサイか伝統通り末子のアルディンかの一騎打ちだろ?常考」

「ジャルディンII世の即位で、妙にやる気になった馬鹿共がおるんだわこれが」

サートが7番目の王子ながら兄たちの死によって遂にペンジク国王に即位した事は、ベンガニーの空想的な小説によって全レムリアに伝わっている。

じゃあ俺も。と思う王子たちは各国に山ほどいただろう。

「要は自分以外王子がおらにゃええんだが」

それで暗躍か。でパーサはその辺の話をアルディンから聞いた。と。

「んにゃ、アルディンはそう言う面倒くさい話が好きじゃにゃあ」

「じゃあ誰から?」


「後ろにのそーっと立っとったでしょう。細長い男が」

え?あいつそんなに喋る奴なの?よく物語に出てくる無口だが主君には忠実な従者だと思ってた。

「まああのケイトーちゅう男は、アルディンには忠実だけんど、喋らないのは人見知りなだけだて。ああ見えて凄腕の魔術師だげなよ」

確かに只者ではないと思っていた。そんな危険な状況のアルディンをたった一人で護衛するのだから。

「アルディンには有力な後ろ盾がおらせん。アルディンを皇太子に。と言うのは伝統を守りたい年寄りばっかだで。アルディンはペンジクとそこそこの成果をあげやーたけど、政府の要職にはついとらせん。せめて英雄と知り合いになってペンジクの後ろ盾が欲しいと、まあ思ったらしいでよ」

「成る程なあ。でもペンジクは遠いし、後ろ盾っつってもなあ…」

「それがな、4番目のダリ言う奴の後ろ盾が」


「ウッディン商会なんだて」

つまりバクロンの後継問題に大東が介入しようとしている。という事か。だから対抗上ペンジクか。

この間来たウッディン商会のジャハドとか言う男も、俺が英雄ウラナだという事は承知だったのだろう。ペンジクが英雄を送り込んで来るのだから、首都にも乗り込んで来るのだろうと。

「『まあペンジクは余りお力にはなれないと思いますよ』とは言っといただが、そこでパーサさん思いついたのが、アルディンさは今工廠の責任者だちゅうことだわ」


まあリゲルの要請は

「出来るだけ早く図面をバクロンの工匠たちに渡すこと」

だったので、まあ誰に渡してもいい訳だ。いち早くサスペンションの生産を始める事で、アルディンは賞賛され、皇太子への道が近づく。結果パナの父も次期皇太子に恩を売ることになる。もちろんアルディンが負ければ何も残らないので、積極的にこの後継問題に俺たちも首を突っ込む事にはなるが。

「結局紐付きはいややとか言ってはるけど、メグルはん、ぶっとい綱で繋がれてはるなあ」

チャイナ服の子供に京都弁で言われると、ちょっとイラッとする。英雄の称号を受けたのは、ちょっと失敗だったかな?第二の偽名を使うべきだったか。

まあ乗りかかっちまった事は仕方がない。


「でさあ、お前パーサとパナの二役続けんの?バクロンにいる間中ずっと」

パッと見すぐ気づかなかったが、パーサがパナに化ける時、変わるのは顔だけではなかった。

さっきパナからパーサに戻るのを見せて貰ったのだが、シバヤンは八娘の姿を十二歳くらいの少女の姿で作った。成長した姿にならないといけない場合を想定して、手足胴体合わせて、5cm程身長を伸ばす事が出来る。もちろん外装(スキン)もそれなりに成長させられる。ちなみに外装では潜入捜査のための老婆の外装も持っているそうだ。やってみて欲しいとは思わないが。


「ギギギギギギ」

と音を立てて手足が縮んでいく。外装もあまり気づかなかったが、パナの時はメリハリがあり、胸もオコの前の体くらいはあった。

外装は17歳まであってその時はもっと立派になるらしい。

「ちなみに夜の方もバッチリだて」

いやそれはいいから。


「それだけ伸び縮みを繰り返すのは大変じゃないか?」

「そのしんぴゃあはないて」

「もしもーし。聞こえますか?今イザン朝の国境越えましたよ。明日のお昼頃には着くと思いまーす」

ジャルディンからふんだくった紅茶とカルダモンの追加を持って、パー子がやって来るのだ。

で、最初からパナの姿で乗り込んで来るらしい。


生真面目風紀委員長ことパー子はパーサとクローン同位体であるので、2年前のパナの記憶は当然共有している。二人が本当の意味で別人格になったのは、パーサがナランダーを出てからである。二人の位置が近いと、その日の記憶とかがマージされるらしい。

「今度もそうなるの?」

オコが聞く。俺ほどでもないが、オコもちょっと委員長が苦手らしい。

「大事な所はガードするで。ナランダー出てからの記憶はあしのもんだでよ。今は別人だて」

パーサは愛しげにラン子のお腹を撫でる。本当にこの二人、仲良しになったよな。おかげで俺は猫成分不足だよ。

俺の寂しさが判ったのか、オコが俺の膝に頭を乗せてごろごろ言う。

いや可愛いけど。女豹ではちょっとなあ…

「痛てて!」

噛まれた。

読んでいただきありがとうございます。

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