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約束を果たしに。

今話をもって第2部

南レムリア篇の終了です。

長らくお付き合いいただき、ありがとうございます。

引き続き3部が始まります。

年寄りはせっかちw


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転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


2-38.約束を果たしに。


「まあ、あの巫女と約束した覚えはないんだけどな。一方的に頼まれただけで」

「おなしこの世に命のない身としては、あの気の毒な巫女はんの頼みは聞いてあげとうなるわ」

「ちゃっちゃと世界中回って、ペンジクの山にお家建てよ♡」

「アシも東レムリアからあんま出た事あれせんで、バクロンて行って見てゃあわ」

「らんこはあるじさまのいくとこなら、どこでもついてく」


バクロンはイザン朝の都。人口はナランダーほどはないが、肥沃な三角州の農業と、海運陸運の要地で、

「世界の富はバクロンに集まる」

と言われる程繁栄している。

もちろん元々スメル王国があった場所で、その文化を受け継いでいるので、巫女の言った

「ヌナムニエル」

なる北風の神の正体もわかるかも知れない。

バクロンには巨大な国立図書館があり、そこなら判るのではないか?と言うより、用事がなくてもこの図書館には年単位で通いたい。年間パスポートとか、あるのかな?

「メグル?変な事考えてない?これは約束を果たす旅で、留学じゃないからねっ!」

早くもオコは警戒している。


「パーサ、西南レムリアの神々と、シバヤン達は繋がりがあるの?」

「殆どにゃあな。大東の天帝とは、たまたま初代妖狐様とサンディ様が知り合いなのでご縁が出来たけどもが、西の方はさっぱりだわ。いっぺんシバヤン様の用事で三娘姉さんがバクロンまで行ったけど、みなどえりゃあ心配(しんぴゃあ)だったて」

各地域の神々は、基本完全に独立している。


「バクロンにはいきなり行って大丈夫なのかなあ。入国審査とかはないの?」

「旅行家ウラナと侍女が二人…」

「つーま、つーま」

「あーいじん、あーいじん」

オコは婚約者でもいいけど、パーサとそんないい感じになった覚えはないぞ?

「なに言っとりゃあすの。シバヤン様から譲渡された以上、メグルはアシのご主人様だがね。ナンバーズは人を愛する事も出来るし、その…夜の方も」

「「「そうなの?」」」

「で、あんたはメグルの事好きなの?愛してるの?」

オコは真顔である。

「好きか言われたら、まあ好きだわな。愛してるか言われると、まーちょっと」

「ちょっと、なによ」

「わからせん。でも夜の方はバッチリだでよ」

そう言うのは本当に愛してる人としなさい。


「まあオコは彼女。パーサは侍女でいいやろ。ラン子は、バクロンの街での猫の扱い次第やな。下手すると、ずっとオコの帯の中や」

「えーきゅうくつだよ。おやどではだしてね」

子猫の方な。だけど喋る子狐が一番アウトだろ。

「術で姿を変える事は出来るんやけど、あれ疲れるしなあ」

前にボンダイで水着が着たくて、変身と若返りを同時に使って、危うく100年の眠りにつくところだったコンコンである。


「面倒やけど、手がない事はないな。旧い友達に頼んでみるわ」

コンコンは護符を取り出し、耳に当てた。

「ヤッホー、あんたから念話とか珍しいじゃん。グェンキー?」

「ほんに御無沙汰やな。須弥山で宴会して以来やから、かれこれ3年や。実は今日は頼みがあってな」

「大体あんたが念話くれる時は、大抵面倒くさい頼み事よね」

「悪いないつも。実は今肩入れしてる男の子がいてな」

「えーーっ!あんたそっちの趣味あったっけ?美少年?」

「アホ。義娘の婿殿や。まあ綺麗な子やけどな」

「行く!今から行く!」


いきなり俺の目が塞がれた。

「メグル!見たらダメ。これはあかんやつ!」

大丈夫だ俺はオコしか愛してないとオコの指を外して、、、

俺はめまいがした。

薄物のサリーを纏った滅茶苦茶エロいお姉さん。

駄目だわ色々露出が。

手には琵琶を持っている。

琵琶は日本では中国から渡来し正倉院御物にもあるが、本来の琵琶発祥のペルシャではもっとチューニングの高い楽器だったと思われる。何故か日本ではかなり緩いチューニングになり、平家琵琶のように

「ベンベベーン」

と言う様な迫力ある低音楽器だが、この人の奏でる琵琶は西欧のチターの様な高音の響きを持っている。旋律は官能的だ。


「わての旧い飲み友達で、技芸天や」

「よろしくね。あら子供だけどいい男。僕ちゃん、アタシが筆おろししてあげようか?」

オコの回し蹴りが炸裂する。伎芸天は、何事も無かった様に琵琶のバチで受け流す。

「冗談よ。妖狐の血筋は血の気が多いわね」

「堪忍え。このお人はちょっと気の毒な境遇でなあ。根性曲がってしもたんや」

「誰が根性曲がりよ!まあ当たってるけどさ」


伎芸天は醍醐教の守護神の一人だが、他の天部と言われる守護神と違って、南レムリアに同一神がいない。開祖の醍醐がペンジクで修行した関係で、醍醐教の守護神は元々南レムリアの神々である。例えばシバヤンは七福神の一つ大黒天と言う様に(シバヤンは無断使用だと怒っているらしいが、意外と大黒天の人気が高いので黙っている)。

しかし、伎芸天には南レムリアに名前がない。後ろ盾もなく、孤独なのである。

しかも困った事に同じ音楽の神として、南レムリアにも起源がある(しかも偉いさんの奥方)弁財天(弁天)がおられ、線引きが微妙なのである。

伎芸天は一応プロの芸人、音楽家の上達祈願の信仰を集めてはいるが、江ノ島の弁天様なども同じご利益がある。

じゃあいっそ同一神にしてしまえば良さそうなものだが、女神同士だけになかなか難しいらしい。


斯くして各地にある弁天像に比べ、伎芸天は秋篠寺くらいしか有名な仏像(フィギュア)もない状態だ。

孤立無縁な伎芸天の仕事と言えば、見所のある子を育てて、伎芸天女として演奏させる。なんかタレント事務所の女社長の様なキャリアウーマンで、玉の輿に乗った弁財天に比べ未だ独身。忙しくて彼氏も出来ず、仕事帰りに一杯飲むのが楽しみと言うアラフォーまっしぐらの女神さんなのである。

「で、頼みってなによ」

「いやちょんの間、わてをあんたの伎芸天女にしてくれへんか?」

コンコンは事情を話す。


「バクロンかぁ。あそこはアタシも営業で行った事あるけど、魔術師メチャメチャ多いから気をつけなよ。あんたの木の葉隠れなんか、すぐバレるわよ」

有益な情報を得た。

「伎芸天女、今空き一人しかないよ。しかも童女役」

絵の四隅とかに花持って飛んでるリトルエンジェルだな。演奏もしないし、地味さでは豆腐持って立ってるだけの妖怪豆腐小僧とタメを張る。

「親がさあ。うちの瑠璃ちゃんは明星(スタア)になるざます。話が違うざますって、ニライカナイ演者学校(アクターズスクール)へ転校させちゃった。見所のある子だったのに。最初は童女で修行千年って、言ってあったのになあ」

どうやら先先代は以前から、酒に付き合って愚痴を聞いてやってるらしい。しかし神々にも、ステージママっているんだなあ。


「じゃあ契約ポン!」

コンコンは中国服+シニョンの童女姿になった。

「大っきいイベントの時は出演して貰うからね」

と言って伎芸天は慌しく去って行った。


第2章 完


これからメグル、オコ、パーサ、そして子狐改め童女のコンコンの西南レムリアでの冒険が始まりますが、丁度お時間でございます。

この続きは、

セイムサイト、セイムチャンネルの第3章で。


See you soon!


読んでいただきありがとうございます。

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