19-3.シオ・ラメンに関する予言
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-3.シオ・ラメンに関する予言
マーリンの最後の言葉が気になったが、とりあえずラメンを優先。
シオ・ラメンはステルと楽しそうにスイーツの話をしていた。オネエ言葉で。
「お加減はいかがですか?」
「これは人代様、ようこその…」
と言って体を起こそうとして、苦痛に顔を歪ませる。
「ダメだよ。刺された腹を縫い合せたばかりなのだから。一週間は寝てなきゃ」
とアヌビスが側室から出てくる。
ナイラスでは王族や要人が事故等で亡くなるとミイラ師が破損した遺体を修復するのだが、今回はその元締が手術したと言う。
「アヌビス殿の処置が早かったので、蘇生が速やかに出来たのじゃ」
「こちらこそ噂に聞くマーリン殿の蘇生術、しかと拝見いたしました」
と、なんか意気投合した様子。
「しかし…コンサートが…」
ラメンが無念そうに顔を歪める。
「指示はベッドからでも出来ます。リュナとヒデノリが、指示を受けて実際に動きます」
「ありがとうございます!」
心底安堵した顔でシオ・ラメンはオフィシャル口調で答えた。
「ラメン殿は賊に襲われる際、『予言された女』と言われたそうですが、それはどう言う意味ですか?」
「その問いにお答えするには、私の出自からお話ししなければなりません」
そう言うとラメンはミイラの様に包帯が巻かれた胸の上で腕を交差させた。
「まずラメンと言う姓は国王陛下から頂いたもの。入隊当時は平民の様にただ単にシオと呼ばれておりましたが、私は姓を剥奪された貴族の出です」
「剥奪…」
レムリアでは貴族が没落する事は珍しくないが、姓まで失うのは、当主が余程の重罪を犯した場合のみである。
「人代様はタンメーンと言う一族をご存知でしょうか?」
もちろん知ってるさ。カライ大佐が軍事クーデターを起こした時、抵抗して亡ぼされた宰相の家だ。
「父、ミソ・タンメーンは前王プトマス94世の宰相でした」
タンメーン家は古い血筋の貴族で、確かプトマス王朝の一つ前のツカン・タンメーン王朝の末裔だったはずだ。
「父はお世辞にも良い政治家ではなく、利権を求め汚職にまみれた貴族だったので、クーデターによって打倒されたのは当然の事でした」
国民の怒りは国王ではなく、宰相ミソ・タンメーンを始めとする私利私欲に走る貴族に向けられていたのだ。
「タンメーン家の長男として私が生まれた時、将来を占う儀式で、占い師が、ある恐ろしい予言を致しました」
そう言う儀式がナイラス王朝にあるのは知らなかったが、ありがちな話だ。だがそう言う儀式では占い師は不吉な事は言わないものだが。
「『この子は30歳まで生きる事はない。必ず女に殺される』と」
それが今回の事に繋がるのか。
「父は直ちに私を嫡嗣としない事を決定しました。実は同時に2人の腹違いの兄弟が腹の中におり、世間ではこの予言は当時父が最も寵愛していた側室の実家の陰謀ではないか?とも言われておりましたが、占い師が口を塞がれた為に真相は藪の中です」
よくある名家のお家騒動か。
女と言えばエロしか頭にない父親は、ハニートラップで殺される不名誉な息子の末路を想像した様だ。
「側室に男子が生まれると、父は正妻だった母を追い出し、弟を嫡嗣、側室を正妻にしました」
それでシオはどうなった?オコはじめ一同耳をダンボにして(昭和表現)聞いている。
「父は強欲で女好きの自己中。20数年しか生きられない私は全くの不用品でした」
散々だが、持参金目当てで名家の娘(シオの母)と結婚し、すぐに別の女に乗り換える下衆なエロ爺だったわけだ。
「母と私は田舎の別荘に軟禁されました。母は気がおかしくなってしまい、私が嫡嗣の座を狙っている。と父に疑われない様に、私を娘として育てました」
歌舞伎の女形の中には、代々幼い頃から芸の修行を受け、メンタルは男性のままで女形として大成しながら、普通に結婚して子をもうける人と(そうでなければ代々の女形は続かない)、メンタル的にも完全な女性である人がいるそうだが、シオは後者だったのだろう。
「そう言う訳で、軍事クーデターが起こり父が失脚した時、別荘で兵が見たものは、自害した母と10歳の少女だけだったのです」
不用品親子は父親に冷遇され、召使いも居なかったと言う。
「壮絶な半生ですね」
「貧乏でしたが、母が私を娘と思っている事を除けば、幸せな子供時代だったですよ。父は猜疑心が強く、スキャンダルを極端に恐れる人で、予言が成就する事を嫌いました。なので長子は実は娘であった。と公表していたのです」
なるほど母親の思惑に乗った訳だな。だがそれでクーデター後もシオの安全は保障された訳か。
母も死ぬ事は無かったのだが、絶望したのだろう。実家もミソに亡ぼされ、身寄りのない方だったそうだ。
「カライ大佐に引き出された私は、あっけなく実は男である事が露見しました。タンメーン一族の男子は全員処刑されたので、私も同じ運命になるところでしたが、私は自分の心は女性である。妹達は全員許されたのに、不公平だ。と主張しました。生き延びたい訳では無かったのですが、なんか理不尽な気がして」
いかにもシオらしい発想だな。全然しおらしくない(韻)。
「大佐は私をじっと見つめられて『お前は許されたら、どの様に生きて行きたいか?妹達はこれから庶民として人の妻となり、母となる定めだが、お前にはそれは出来んぞ』と仰いました」
なるほど、シオがカライ大佐に一途なのは、こう言うやり取りがあって惚れちゃったんだな。
確かにカライ大佐は渋いじいさんだった。
「私は自分には呪いの予言があって女が怖いので、軍に入りたい。と申し上げました。大佐はカラカラとお笑いになって『ナイラス軍には確かに女は居らんが、女の気持ちがわかる部下も、一人くらい居てもいいかも知れんな』と私の入隊を認めてくださったのです。以来私は長かった髪を落として剃り上げ、男でも女でもない中性の者として、お国にお仕えしているのです」
「なるほど。それで今回の事で、予言の呪いは完全に解けた訳よね」
大胆にもオコが近寄り、シオの手を握る。
前なら悲鳴をあげて手を振りほどくはずが、黙ってそのままになっている。
「貴方は一度呪いと共に死に、生まれ変わったのです。思いのままに生きなさい」
普段は馬鹿助なアヌビスだが、こう言う時は神々しく見える。
「カライ大佐って素敵よね。今度みんなで女子会して恋バナしましょ」
パジャマで泊まる男子禁制のアレの新メンバーか、先日の伎芸天に続く。
「オコお姉様…」
なんか極度の女嫌いから凄い振れ幅だが、呪いが解けるとはこう言う事なのだろう。
「それでラメンさんは、呪いの女に見覚えがあるの?」




