黒幕
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
2-19.黒幕
ヒントは子供の頃読んだ
「鉄腕アトム」
だった。家族を失った遺族に、故人そっくりのロボットを届ける未来のお盆の話。
亡くなったお子さんにそっくりだったアトムが帽子を被って訪問する。
遺族は喜んでお子さんが好きだった食べ物でもてなすが、アトムは後からこっそり食べたものを捨てる。と言う哀しい話。今だったらネットで叩かれるだろうな。"アフリカでは飢えた子が"って。
ドラえもんはどら焼きでも食べるが、本当はいかに未来技術でも、食物を消化してエネルギーに変える肝臓を、お腹に収まるサイズで人工的に造るのは困難と言われる。だからシバヤンの自動人形は何をエネルギーにしているのか?興味があった。
ダガムリアルと5子について話した時、彼が興奮気味に話していたのは、このオートマタが100年近く保つ魔法エネルギーで動いている事。ここまでは見た事があるが、この侍女ロボットは味覚と分析装置を備え、食べたものを完全に消滅させる胃を持っている事だった。
「あれは主君の毒味をするためだろう。流石シバヤン殿じゃ」
「君たちナンバーズってさ。食事ってするの?」
俺がそう聞くと
「食べるとも食べないとも言えます。栄養にはなりませんが、味合う事は出来ます」
と、うーにゃんは少し緊張気味に答えた。
「あなた方ナンバーズはシバヤンの傑作だから、味わった食べ物の中で、好きな物が出来たりする個性が芽生えるかもしれない。でもそれにはほんの少し食べればいいでしょう?どうしてあんなに沢山食べたのですか?」
俺たちがジャバを訪れた時、最初の時と全く同じ事をする様にうーにゃんに言った。自動人形は基本的にオーダーに対して嘘はつけないので当日と同じものが出て来たはずだが、その量に驚いた。優秀な胃が次々食物を消滅させたのだろうが、なぜそんなに食べる事が必要なのか?
「それは」
うーにゃんは黙ってしまった。
「あなたに出張費の他に沢山のお金をくれたのは誰ですか?」
「…キャーリー様です」
「宮殿に戻ろうか」
「はい」
ラン子がシバヤン宮に戻ると、既に一人の少女が待っていた。ガングロのヤマンバメイクである。
この奇抜な流行が日本に現れた時、これがスケバンやパンクファッションの様な社会への反抗を伴う尖ったものではなく、特別な自己主張だった事に驚いた事がある。インタヴュアーの
「そんな格好してると男子にモテないでしょ?」
と言う問いに
「そのためにやってるんだよ」
と答えたのである。もう男はいらない。と。
キャーリーも母に似て目鼻立ちは美しい。肌は黒いが、これは南レムリア人共通の特徴だ。彼らは白い肌を持って生まれるが、強い紫外線で肌は黒くなる。
キャーリーの母パトゥニーは、かつてシバヤンに
「貴女の肌は黒い」
と言われた。彼は決して肌の色で差別する様な神ではない。
ペンジクの上流階級の女性の、日に当たっていない生白い肌に比べ、幼い頃から野山で遊んでいたパトゥニーの健康な肌を賞賛したつもりだったのだ。
しかし理科系頭の彼には、日ごろから決定的に言葉が足りないと言う欠点があった。
ショックを受けたパトゥニーは美白術に専念したが、効果がなかった。
「肌の美しい女性の皮膚を生きたまま剥いで貼ればいい」
と言う悪鬼の誘惑に負けそうになった時、彼女が外道地獄に堕ちるのを惜しんだ創造神が、黄金の肌を与えた。その時残った老廃物からキャーリーが生まれたと言う。
神々の場合、普通に子を分娩する方が稀であるためこれは決して異常な出自ではないが、この生まれのため信者が殆ど居らず、母からも離れ、サンディの庇護を受けている。
生まれたのはキャーリーの方が先なのだが、庇護を受ける関係で、サンディの妹となった。
キャーリーがシバヤンを激怒させたのは、長年研究してきた精密な魔法回路にキャーリーが発酵豆のスープをぶちまけたからで、シバヤンは激怒してヴァジュラ(独鈷杵)を投げつけ、それが今回のきっかけとなっている。
「あちしがキャーリー。シバヤン家の嫌われものサ。この子は悪くない。悪いのは全部あちし。お義父様にそう言いなよ。あちしなんかお父様に滅せられれば丁度いいゴミなんだ」
目に涙をいっぱい溜めている。
その前にうーにゃんが立ち塞がり、両手を広げた。
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