アスビ海のほとりにて
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
2-17.アスビ海のほとりにて
せっかく南レムリアまで来たのだから、この地を巡り旅行記を充実させたかったが、シバヤンがジト目で見つめるので、先に宿題を済ませる事にした。
翼獅子のラン子は申し分なかった。今迄は俺に強化魔法をかけて300km/h。通常は100km/h以上の速度を出すと風圧とGで俺は失神したが、風圧に関しては今回は神界を飛ぶので気にする事はない。神界には空気がないからだ。それでどうして音が聞こえる?とか小難しい科学は
「神界だからなのだ。これでいいのだ」
と言う彼の賢者BP(Bakabon's PaPa)の至言で片付けてしまおう。そもそも呼吸してないのに生きてる時点で、人知を超えているのである。
ラン子の進路変更に伴う強烈なGの発生については、何かを回避する事なく直線で空を飛ぶため、初動の加速度に耐えられれば何の苦痛もなかった。神界ではラン子は、俺たちを乗せて2000km/h位まで軽く出せた。とは言え現世(うつし世)では、風圧の問題や空中戦となった時の横G・縦Gのため余り速度が上げられず、ラン子の力は宝の持ち腐れだ。
さて新型新幹線の如き快適さで、あっと言う間にアスビ海の北岸の都市、ジャバの天界点についた。
ここから実在のジャバに移るには五娘の力を使う(語感が可愛いので俺たちは5子をひらがなの"うーにゃん"と呼ぶ事にした)。
番号付き侍女は、シバヤンやサンディの依頼で現世での調査活動に赴く任務があるため、身に
「パリトネカビル(通行手形)」
と呼ばれる宝具を帯びている。五娘もあれ程破壊されなければこれで神界に逃げ戻る事が出来たのだ。だから失われたヴァジュラを探すという任務は単独でこなせる。とあの時五娘は考えたのだろう。
「じゃあうーにゃん、頼んだよ」
俺は今にも
「こんな日はバイクに乗って、海を見に行きたいですネ」
とか言いそうな委員長に話しかける(ごめんオコ睨まないで。委員長と管理人さんは、独身時代の"お嫁さんにしたい女性"ワンツーだったんだ)。
「はい、お任せ下さい。でもアスビ海は大きいし塩水ですけど、海じゃなくて湖ですよ」
どうも神々の眷属は心を読むので困る。
うーにゃんの目から光線が走り、渦巻状に俺たちを包み込む。と、もうそこは現世(うつし世)のジャバだった。
ジャバは発達した水運と、キャバと言われる巨大魚の漁業で栄える港町で、チャガマン国と良好な関係を持つ自由都市だった。アスビ海は川で繋がっていないため水中の塩分濃度が高くなった塩水湖で、十分に海と言っていい巨大な湖だ。素晴らしい海水浴場があり、古代よりリゾート地としても有名であったので、日本語の遊びと同じ語源なのではないか?と俺は思っている。
前回温泉回があったので、今回も期待している(誰が?)。
「しかし、どうしてこんなとこまでうーにゃんは探しに来たのだろう。バジュラ(独鈷杵)はどちらかと言えば、東方や南方の宝具なのに」
「それは旦那様がキャーリー様に投げつけたバジュラの方角が、北西だったので」
そうだった。しかしもはやマーフィーの法則と言ってもいいと思うが、落し物は落ちたと思う方向では見つからない。実際には北東のジョウザにあった。
「ではジャバについてからの、うーにゃんの足取りを辿って見るか」
うーにゃんはいきなり挙動不審になった。謹厳実直な委員長が、突然弱いとこ見せるのがたまらん(はいオコ様反省しております)。
「あのう…。私の行動記録については、旦那様方にはご内密にお願いできませんでしょうか?」
うーにゃんは泣きそうである。
賑やかなバザール。美味しい料理。素敵な海水浴場。出張中にうーにゃんは、結構寄り道していたようだ。
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