旅の仲間
2部の登場人物
メグル…主人公。元ボン76世(未)。
オコ…メグルの婚約者。自称妻の元妖狐。
コンコン…先先代妖狐。子狐に憑依中。
ラン子…縞獅子。ラン(獅子)と白虎(虎)のライガー。
※この物語は仮想世界を舞台にしたフィクションです。登場する人物、地名、神々は架空のものであり、現実世界・歴史・文化・宗教とは一切関係ありません※
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
2-1.旅の仲間
先先代改めコンコン様の言う通り、次のオアシス、タリフには夜明け前に着いた。加速度とか風圧と言うものには子狐が一番弱いので、俺でも何とか耐えられる速度だった。
「まあ端はゆるゆる行けばええわ。急ぎたい時は言うてや。耐久魔術使うさかい」
そんな便利なものがあるなら俺にも教えてくれ。
ただこの魔術は結構疲れるので、いざという時だけにした方が良いそうだ。
とりあえず500kmの道のりを5時間で走破したので、日本の高速道路並みという事だろう。
ラン子は道路お構いなく、直線距離で走って来た。木や岩がある時は飛び越えていた。夜でなければ大騒ぎになっているだろう。
「どうする?早朝から街に入ってもバザールはやってないぞ」
「ほな昼頃まで寝まひょか?婿殿、天幕張ってぇな」
今から寝るのか?日が昇って来ると結構暑くなるぞ。
「オコ、新しい結界教えたるわ」
「はい。どんなのですか?」
それは温度結界で、常に一定の温度に保たれるエアコン結界だった。
「おお!これは快適。お義母様凄いです」
「お義母様はやめて、これからはコンコンでええ」
「じゃあコンコン様」
「暫くは旅の仲間やないか。呼び捨てでええで」
「じゃあ俺も婿殿はちょっと」
こうして俺たち3人は、メグル、オコ、コンコンと言い合う仲間になった。確かに子狐に様付けでは、聞いた人が怪しむだろう。
「ガウ…」
ラン子がなかまになりたそうにしている。
「ああ、ラン子は街では私の帯の中に封じるから…」
「まあややこしくなったら封じればええ。とりあえず、陽が昇ったらこの子は縮むさかい、街に連れて行ったって。白虎との約束やねん」
縮む?
程なくして、東に太陽が昇ってきた。朝日を浴びてラン子の身体が見る見る縮んでいく。
コンコンよりも更に小さくなって
「ニャア」
虎縞の子猫の姿になった。
「これなら良いやろ」
俺は街外れの適当な場所に天幕を張り、オコは朝食の支度をした。近くにも天幕があったので問題ないだろう。
大きな町と違い、オアシスには城壁がない。かつてはこの辺りも幾つかの国に別れ、城も城壁のある町もあったのだが、アンゴルモア大王の征服で、破壊し尽くされた。
大王は遊牧民族として、都市というものに全く興味がなく、大東を征服した時も町も田畑も全て破壊して、緑の牧草地にせよと命じたほどだった。この命令は大王の急死で実行されなかったが、その後100年程続いた子孫のゴルモア族による大東支配でも実行されなかった。軍事力では圧倒していたものの、人口比にして10万倍以上も多い大東の民族を支配するには、彼らも大東化するしかなかったのである。
しかし西域地方は大王の死後、ゴルモア族の領主達が細かく分かれて統治しており、昔ながらの遊牧民族的な支配が続いたため、都市は復興していないのである。
「この街では何をするの?」
一眠りした後、朝食兼昼食の干し肉を齧りながら、オコが聞く。
「そうだなぁ…痛てっ!まずは携帯食じゃない食事がしたいな。あコラ、あとは何か仕事を、暴れるなよ」
実は俺の膝でラン子が暴れているのだ。
俺は猫という動物に弱い。可愛くて触りたくて堪らないんだ。自慢じゃないがメイドカフェには1回しか行った事がないが、猫カフェにはその10倍は通った。猫カフェの
「仕方ないわね。触りなさいよ」と言うプロ意識バリバリの猫達でも十分可愛かった。
猫アレルギーの家族が居たので、飼うことが出来なかった恨みをラン子で晴らそうとしたのだが、コンコンには従属し、帯主のオコには親愛の情を見せるのに、俺だけには反抗的だ。
「ああメグルはん、その子なあ…男はんには絶対懐かんのや」
天帝の神殿で、白虎は数百匹の猫族に傅かれて暮らしている。そのお嬢様なので、当然箱入り娘のお姫様なのだ。
今回の先先代の願いも母虎の
「お嬢にもそろそろ広い世界を見せてやりたい」と言う思いがあっってかなったと言う。父親が遠く離れている事もあり、普段男(雄)とは話をした事もない。俺を背中に載せるのだって相当嫌だったらしいが、それは仕事ということで納得したそうだ。だが
「馴れ合うつもりはないですわ」
との事(いや喋った訳ではないが、お嬢様っぽく言ってみた)。
悲しい。
オコとラン子はすぐ仲良くなり、帯を預かっている帯主。と言う事で、オコを姉の様に慕っているようで、俺とオコが近づこうとすると、
「シャーッ」
と俺を威嚇する。ライバル視しているようだ。
まあ白虎は北方の守護。朱雀は南方の守護だから、ライバルには違いないが。
ラン子の目を盗んでしか俺とイチャつけないので、オコは
「子作りが…」
とブツブツ言っているが、この旅が終わり、ラン子を天帝に返すまでは、この世での俺のちぇりーらいふは続きそうだ。
正直ラン子の背中で、落とされないようオコとくっついている時だけが、スイートタイムという状況だった。
いよいよ第2部のスタート。
1話/一日ペースで投稿していきますのでよろしくお願いします。
第2部からは旅行先でのあれこれになりますので、更に面白くなると思います。
読んでいただきありがとうございます。
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