8-37.正念場
※第8部の主な登場人物
◯旅の仲間
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目な15歳と結構浮気症な66歳が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスに変身出来る。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの恋人。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの恋人。
◯その他の登場人物(神)
イグルー…大氷原の村の娘。村長の孫。メープル朝の末裔。
パナ…元八娘のパー子。人間となってアルディンの妻となる。
アルディン…バクロンのイザン朝第五王子。王位を捨ててパナと結ばれる。
神官…記録の神殿のマッチョな神官。料理を始め、おもてなしの達人。
エノキド…世界の果ての宿屋主人。
メラッサ…エノキドの妻。
三元…大東の大道士。マーリンの前世を持つマーリンの弟子の一人でコリナンクリンの級友。
◯ペンジク4神
シバヤン…南レムリア最高神の一人。破壊と創造の大神。
パトゥニー…シバヤンの第一夫人。慈悲と再生の母。
サンディ…シバヤンの作った美少女人造最終兵器でシバヤンの第二夫人。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘でサンディの妹。人生崖っ淵の最後の希望。漆黒の美少女神。
◯ナンバーズ
一娘…最初に生まれた自動式侍女人形にしてシバヤン家の宮宰。シバヤンも頭が上がらず、ナンバーズ全員に恐れられているスーパー秘書。
五娘…ナンバーズにしてキャーリーの親友。レムリア最速。
二娘…ナンバーズだが、現在は聖狐天の部下になっている。武芸の達人でメル、オコ、御供の師。
七娘…巨大スーツに乗り、宇宙での活動も可能なナンバーズ。
六娘…ナンバーズの一人。ナンバーズ唯一の人間の消化器官を持つサイボーグで、シバヤン家の料理長。
◯箱庭世界
ハヤテ…警備隊長。
ノモ…村長のコボルト。
影夫…力試しトーナメントに出て来た謎の存在。
ハピネス…箱庭世界魔物国の女王。
ゾフィア…第一王女。
レティア…第二王女。
◯冥界の妖狐たち
先代妖狐…若くして死んだのち引き篭もったため世話出来なかったオコを気にかけている。
戦狐…アンゴルモア帝国からジョウザを護った妖狐。
初代妖狐…九尾狐。玉藻御前。初代ボンに仕えて妖狐の祖となる。
白銀丸…初代妖狐と蓬莱の夜狐の青年の間に生まれた娘。
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
8-37.正念場
「これは年代モノだなあ。動くのか?」
知らんがな。と言いたい。
俺たちは冥界を離れ、ルディン村に安置された三元廟に居た。
旧友の社長が呼びかけると、三元さんはいとも簡単に降臨した。ウルスラに降霊してもらわないで済むのでありがたい。
大抵の魔具。ナンバーズ達だって作られてから千年以上は経っていると思われるが、それに比べるとこの呪符はアンゴルモア征服時代のものだから、比較的新しいと思っていた。
「これは謎の暗黒金属製やが、一般にこう言う薄物は劣化しやすいのや」
コンコンが説明した。
「使い切り(ワンタイム)だから、余り耐久性は考えてないんだよ。ま、心配してもしょうがないから、これが使えるとして」
三元さんは腕組みをする。相当難しいらしい。
「パナだったか?そやつの魂をこの呪符で引き剥がすとして、その後どうするつもりじゃ?」
「そ、それはキャーリーが」
「キャーリー殿は整った魔術素材で心理外科手術を行う天才執刀医だが、素材を作れる訳ではない」
確かに聖狐天の時も、最終的な決め手はダガムリアルが殺生石を精製した無属性のクリスタルだった。
「またクリスタルが必要ですか?」
「いや今回はシバヤン殿の眷属で構わんのだろ?なら無属性である必要はない」
箱庭世界からシバヤンが回収したハーピー人形が依代だったので、パナは人間になったとは言え、シバヤンの属性を帯びていたに違いない。では何が問題なのか?
「固いネジとかを外す時に、力を入れすぎて外れたネジが勢いよくどこかへ飛んで行って探しても見つからん事があるだろ?」
ございますとも。生前ミニ四駆に凝ったり、愛車スーパーカブ90カスタム(もう売られちゃったろうなあ…)の整備らしき事をする時は、しょっちゅうだった。広い範囲の地面をスマホで撮影して、パソコンで拡大して、希少なパーツを探した事もあった。
「それと同じだよ。凶悪な護符で無理やり引き剥がされた魂は、反動で飛び去ってしまう。部品と違って意思を持つ魂は、恐怖の余りそのまま冥界に去ってしまう事も考えられる」
なるほど。無理やりは行けない訳だな。
「では引き剥がされたパナの魂がその場に留まるには?」
「愛する者がその場に居れば良い」
アルディンの前で剥がせばいいのか。ではカイバラ峠に作られた救護所で手術を行えばいい。
シバヤンたちの信仰範囲なので降臨してもらうのも容易いだろう。
「それでは、三元様にご同行願えましょうか?」
「それはできぬ」
「なぜでしょうか?三元さんはマーリンの呪縛からは解き放たれているはず」
かつてマーリンを前世に持つ弟子たちは、死後冥界に縛り付けられ、その霊力をマーリンに供給する事によって、マーリンは自由に現世に存在できた。しかしその呪は
「人類代表だから」
と言う大儀名分を俺に押し付けたために、俺によって呪を解かれ、弟子たちは自由にレムリアを通行出来るはずだ。
「今は間が悪い。少し霊力を使い過ぎておってな。一ヶ月程は三元廟以外のレムリアには行けぬ。しかもペンジクとは色々あってな」
三元道士は大東の大道士で、言わば仙人だ。
天帝と冷戦関係にあるペンジクには行きづらいのだろう。ましてやこれはお忍びではなく、正式な術の発動となり、多くの神々が恐れる大東の暗黒魔術系の呪符を使うのだ。
「使い方を教えよう。まず呪符を影響が無いところにしまうが良い」
避難訓練で火事出しちゃマズいものな。
「今迄どこに入れて持ってきた?」
「どこって、財布の中に」
「たわけ!誤爆したら、依代を持つ者から魂が消えるところだったぞ!」
危うくオコを失うところだった。俺は冷や汗をかき、女神アクアの庇護に感謝した(個人の感想です)。
護符を安全なスペシャルポーチにしまい、俺と師匠で二重研修を行った。ロクは一部始終を記録した。
この護符は解析不能な超古代の暗黒魔術で作られ、使い切りなので、今後この技術がシバヤン陣営に流出してもメリットは無かったし、謎の多い暗黒魔術は、各神界で情報を共有する事になっていた(戦狐はその事を知らなかった)。
使い方によっては神々を殺す事の出来る、禁忌技術なのだ。例えばシバヤンの創作物であるサンディにこの呪符を使うのはかなり危険だろう。
三元に礼を言って、俺たちはカイバラに向かう。
救護所は全く旅立ったそのままだった。
シバヤンの元から戻ってからも、パナは意識不明で、アルディンは憔悴仕切って居た。
ロクが召喚すると、シバヤン、パトゥニー、サンディ、キャーリーの4大神が登場した。
「報告します」
ロクがR2-D2のホログラム映写機能の様に、今までの経緯を映像編集したものを投射した。
実に客観的だが、記録の神殿でロクが有頂天になった事は省かれている。
「ロクは後から自分で言うのよ」
オコが心情を察して言う。
長期研修休暇を貰って神官の弟子になる。と言うのは
「お父さん、あたし家は継がないから。東京の大学に行きます」
くらいの勇気がいるのだろう。
「判った。ハーピー人形はそれほど惜しくは無かったからパナの依代にと渡したのだ。代わりの依代はどうするんだ?」
箱庭世界から持って来ては、また問題が起きるかも知れない。
パー子の人形は?
俺は作った事はないはず。いや、
「ボンダイビーチのオラオラ大会で4神が降臨した時作ったジオラマに」
ボーイスカウトのマジックバッグをまさぐる。
「あった!」
ボンダイの記念館に寄贈した時の習作だ。ちょっと小さいけど。
10cmほどのパー子を外してパトゥニーに手渡す。
「ではこれから施術を開始する」
まずは俺がスペシャルマジックポーチから慎重に護符を取り出す。
「流石に禍々しいものだな」
シバヤンが胸を押さえる。トランプ投げの様に投げつけられたら一巻の終わり。とでも言う様に。
最初は師匠と俺が三元さんから習ったばかりの術で、パナの魂と依代を護符を使って慎重に引き剥がすのだ。




