8-20.箱庭一武闘会(決勝前夜)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
8-20.箱庭一武闘会(決勝前夜)
控え室の隣が事務局なのだが、そこで大変な騒ぎになっていた。
何って?
すまんオコが悪いんだ。
オコが世の中で一番嫌悪するのが暗殺者。
俺の侍女兼護衛として育てられたオコは、今でも時々暗殺者が忍び寄ってきて、自分の力が足らず俺が殺される夢を見ると言う。
当時ジョウザを取り巻く状況は複雑で、特に大東の有形無形の圧力はジョウザを苦しめていた。
一方ではボンの権力が継承されない為の、あの施術も迫っていたが、もっと短直に暗殺してしまおう。と言う一派も存在した。特に俺が成長するにつれ、その利発さに、
「操りにくい」
と見られたのは充分考えられる。
「実際に暗殺者が逮捕されたのは無かったと思うけど」
と聞いた事があるが、オコは薄く笑って
「私も知らない。私が守らなきゃ行けない様になったら危機的状況だから。影でタンジンやキンランの部下が動いていたとは思うけどね」
侍女としてのオコが最も気を付けていたのは、やはり食事で、全国の信徒から托鉢と言う魔術装置で集められる食材や、調理人の中に敵がいないか、など細かい配慮をしていた。10歳を超えた頃から俺が食べるものは全てオコが作る様になったのも、そのせいだ。
前置きが長くなったが、オコは暗殺者を大変憎んでおり、影夫の風体からどうしても暗殺者を連想して気味が悪い。と言った。
「あのフードの中を確認しないと、パナちゃんの病気は治らないと思う」
ちょっと飛躍しすぎだが、確かに俺たちの調査は手詰まりだ。
あの影夫と言う男がフラグなのだろうか?
「だから、決勝では"覆面剥ぎマッチ"をしたいと思う」
メキシコのプロレス、ルチャ・リブレで覆面レスラー同士がやる奴だよな。
「でもさオコ、お前覆面してないじゃん」
「狐面付けてさ」
いやいや準決まで素顔でやってて、いきなり
『この覆面を取ってみよ』
とか言ってもさ。
「では、こう言うのはどうでしょう?」
前からオコを舐める様な目つきで見る小男、この大会の興行主が下卑た笑いを浮かべる。
「この国には昔から特別な試合形式がありましてな」
「ほう、どういう?」
「ヤー・キューケンと言うもので」
オコが選手だったので、殴り飛ばしてやろうと思ったが、オコじゃ無ければハグしていたかもしれない。
「負けたらどこまで脱ぐの?」
説明を聞いたオコは割と冷静だ。
「いや、全部と言う訳では…」
「パンツは穿いてていいのね」
「あ、はい、降ろして」
パンツは降ろすのかと思ったが、違った。
パーサが下衆野郎の髪を掴んで持ち上げている。
足が宙に浮いてるぞ。
「判ったわ。その条件でいい」
ドサッと床に落とされたプロモーターは、
「早速準備します。おい、朝までにポスター書き直しだ!」
と言って事務局に消えた。
「オコ、いいんきゃ? あんたのおっぱいはメグルさだけのものじゃないんきゃ?」
ステルが興奮して
「あるじだけのおっぱい、あるじだけのおっぱい」
とはしゃいでいる。
「あるじ、ステルのもあるじだけのもの」
「お、おうありがとな」
言うてもこの幼児から成長したてのサーバル少女は、何かと迂闊なので、よくポロリがある。
「パーサ姉ちゃんも、あるじだけ?あ、アヌビスにいちゃんにもか?」
「あっちは2対8列の、こっちの方だでな」
パーサ、わざわざわざわざ返信して仰向けにならんでもいい。と言うかそれは見せっぱなしなんだが。
「とにかく私は明日試合に勝って、あの女のフードを剥がすわ」
え?今、女って言った?
「そう言う匂いしとるがね」
「せやな。男はんはニブチンやし、わからんのやろか?」
「僕も分からなかった。男みたいな名前だし」
師匠が社長にヨシヨシされている。
「ステルも分からなかった。食べても美味しくなさそう。はわかったけど」
なんかフェロモン系の匂いかな?でもそれだと、男に分からんのは変だが。
「ベンガニー先生の本にもあったわね。気絶させた忍者の懐から密書を取ろうとして
『ん?女か』っていう奴」
ベンガニーそんなのも書いてるのか。
「ポスターに女同士の対決。って書いた方が、客が集まるだろう。興行主に教えてやろうか?」
俺が隣の事務局に行こうとすると、みんなに止められた。
「敵はミステリアスの方がよろし。お客はんの中には、男の裸に反応するお人もいはるよってな」
「ああ、そう言えば女性客も結構いたな」
「いやいや男はんでも、そっちの趣味の人多いえ」
そうですか。
「さて、オコのおっぱいを守る為には、勝たんといかんがね。メグルさ、策はあるんけ?」
取り敢えず飛んで来る竹針を、両手の巨大ハリセンで叩き落とす。攻撃は?
「せんでもいいのじゃないか?」
師匠が事務局から貰って来た結果表を見せる。
「あいつ、予選は全部蹴り技で勝ってる。吹き筒も口に咥えてたし。つまり」
「「「「手は使えない?」」」」
「竹針を全部撃たせて、足で攻撃してきたら、足を捕まえて地面に叩き付ける。で完了やな」
「でもさ、手でのパンチが最終兵器だったりして」
「大丈夫や。手ェはないわ」
「ない?」
「あいつ、魔法も使わへんで(魔法は違反)どうやって宙に浮いとる思う?」
なるほどね。フラグがここで回収されるのか。




