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7-9.幻の島

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


7-9.幻の島


「なんか飛んで行けないのは納得が行かないなあ」

ステルが呟く。

「いっぺん行ってみそ?行けないから」

社長が挑発するように答えた。

「よーし」

そのままVSTOL状態で飛び上がり、

「行っくよー!」

ギューン!と爆音を上げ、あっという間に姿を消した。


「オコちゃん、悪いけど私にお茶入れてくれない?」

「良いですよ。丁度お湯湧いたところです。カルダモンティで良いですか?」

「うん、私のはミルクとお砂糖なしで頼むわ」

「了解。他に飲む人〜?」

「「「はーい!」」」

「僕にはシナモンクッキー沢山欲しい」

「ダーリン、またウエイトオーバーでトトムに乗れなくなるわよ」

「違うよ、僕は一枚だけ。あとはトトムにやるのさ」

「ワイバーンって食べさせちゃいけない物って無いんですか?」

「特に無いみたい。甘い物は好きだよ」

「まあステルも何でも食べるもんね」


と言う様な話をしている最中に、いきなり空間が割れて

「ここどこ〜っ?」

とステルが戻ってきた。

「あれ?あれ?なんかねえ戻って来ちゃった」

成る程、双六で言う

「振り出しに戻る」

と言う奴か。

「行けそうなんだよ。向こうにでっかい島が見えるんだよ。でもなんかボヨンと弾かれて、気がついたら帰って来てた」

「かなり強力な結界やな。ソフトな拒絶の方がハードに撥ね返すより、難しいんやで」

まあコンコンはこう言うのを評価しそうだな。露骨は嫌がるタイプだ。


「古いムーの魔法かな?なんか僕、ワクワクしてきたぞ」

それは俺も一緒だ。ヌナムニエルのいたウルニアの廃都にも、気がつくと都の外に出てしまうトラップがあったが、それを空間全体に張り巡らしているのか。

ちょっと目眩がしそうな強力な結界魔法だ。

「これさえ取っちゃえば、みんなが海を行き来出来るのね」

「オコちゃん、それ困る。うちの商売には。うちだけが通れないと」

社長は腹黒いな。まあ大東やペンジクがガンガン来る様になったら、ヤクスチランなんかあっという間に征服されてしまうだろう。一握りのスペイン人にインカ帝国が滅ぼされた様に。


「ムーの人たちって、どう言う文明だったんだろう?」

「マーリンは、メープル朝の人々をムー大陸に逃そうと思った。と言ってたわよねえ」

「本当かなあ。時代的にムー大陸が沈んだのは、ずっと大昔だからね。まあ、マーリンの言うことだから」

「「「「うんうん」」」」

「いや俺の記憶ではムー大陸とは言って無いよ。ムーに逃がす。と言ってた」

「つまり僕たちが目指す島のことか」


島と大陸の差は大きい。前世では世界最小の大陸がオーストラリア。最大の島がグリーンランド。面積にはかなり大きな違いがある。

だが日本では、色々な本や教科書に載っている世界地図が、悪名高いメルカトル図法のため、極地に向かうほど大きく描かれてしまう。

メルカトルさんの名誉の為に言えば、この地図の目的

「地図上の方向(方角では無い)が実際の方位磁石の方向と一致する」

事で、永く海図として、船乗りに愛用されてきた。燃料が要らず風まかせの帆船だと距離・面積なんか知ったこっちゃ無いのである。

と言う訳では日本では幼い頃から、グリーンランドがオーストラリアよりはるかに大きいと学校で刷り込まれている。

ちなみに日本地図では、日本列島は縦に長いため横メルカトル図法を使っており、このくらいの範囲だと距離も面積も方角もほぼ正確だ。


ムー大陸はペンジクと大氷原の間の東端から蓬莱の南東に広がる巨大な大陸だった。前世だと、東南アジアまで引きずって来たオーストラリア大陸みたいなものだろう。

その南東にあったと言う大きな7番目の島。大氷原の村から見ると北東に位置するはずの島。

これをマーリンはムーと呼んだのだろう。


「そんなのマーリンに聞けばいいじゃない。おーいマーリン!出て来なさいよ」

「マーリンなら行方不明だよ。トマレの体から出て、しばらくホログラムみたいな姿で、『もうお思い起こすことは何もない』とか嘘くさい事を言ってたけど、そのあと姿が見えなくなった」

「記録の神殿かしらねえ」

「いやあそこは堪能したとか言ってたで」

「じゃあ冥界のホームか?」

俺が言うと、全員首を横に振っている。

だよなあ。あそこに行っちゃうと、旧い方々はまず戻って来られない。初代様の様な力ある方でさえ、現世に数分顕現するだけで、100年眠りに付くほど疲れるのだ。先先代や先先先代は、ホームの入り口付近に魂を置いて、二股かけた形にしているので現世で活躍出来る。マーリンは冥界にさえ行かずに、弟子のエネルギーを吸い上げながら実体化していたが、それも出来ない今、自由には動けないだろう。


「そうなると、もっと前からこっちに居る人に聞いてみるしかないか?」

「そうねえ。またご挨拶に行きたいわねえ」

社長はパトニカトルとは、ワイン交易の件でお世話になっているので、丁重である。

「ワイハに行く途中、ちょっとだけ蓬莱に降りたのよ。米の酒を買うために。パトニカトルさんへのお土産と思ってね」

日本酒かよ!それは是非お相伴に預かりたいものだ。俺は前世でも今もあまり酒は飲まないが、懐かしいものは懐かしい。


「話が聞けると攻略のヒントになるかもしれない。まあ覚えてれば。だけどね」

師匠も先日パトニカトルに面会したが、基本酔っ払ってる(ひと)なので、過去の事は思い出すのに時間がかかり

「…忘れた」

と言う事も多い。

何万年も生きておられる方だからなあ。


「イグルーも行くかい?」

「色々我儘な病人の世話があるんで。それにパーサが戻って来るといけないから、留守番してるわ」

村人は快方に向かっているが、アヌビスの言う様にまだ体が動かせないこの時期は、色々手間がかかるらしい。トマレ一人では手に余るのだ。

「判った。パーサが帰ってきたら、ヤクスチランに来る様に伝えて欲しい」


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