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6-28.大氷原の少女

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


6-28.大氷原の少女


最後まで粘ったのは、なんと師匠だった。

「あと1日…いやあと3日だけ」

増えとるがな。

最初は優しくたしなめていた社長だったが、最後は鬼母の形相で師匠の後頭部をはっ飛ばしていた。

「聞き分けのない子は要りません。ここの子になっちゃいなさい!」

その点アヌビスは涼しい顔で

「皆さんの帰りをお待ちしてますよ。あ、ゆっくりで良いですからね」

「ダメでしょ。早くナイラスに帰ってサスルを助けてあげやー。だだこねると、もうお兄ちゃんって呼んだげへんでね」

パーサに言われてスゴスゴ帰り支度をする。

「ここのドッグラン気持ち良かったで、また休暇合わせて来よまい」

「うん!」

どっちが兄かわからん。尻尾が千切れんばかりに振られている。


「そう言えば、お兄ちゃんどうやって帰りゃあすの?」

「ここって神界からしか入れないんだよね。と言う事は、密黒大陸の神界飛んできたの?」

「いや、あそこは神々との付き合いがないんで、密黒大陸上空を飛んで来たよ。境目に行きなり記録の神殿に入る神界の入り口があるんだ」

「そうなんですか。我が(うち)は密黒のブルドー神と付き合いがあるので、鎖国終了の挨拶をしていくよ。神官さん。神殿からそのまま密黒神界に入る道はありますか?」

「御座いますとも。私はかつてそこを通ってここに参りました」

漆黒の肌を持つマッチョ神官は微笑んだ。


こうしてそれぞれ出発となった。

「うわっ!寒くなったぞ。ここから神界が無くなってる」

確かにいかに大氷原と言えど、神界には大気がないので寒くはない。元々から神界が無かったのか、それとも途中で何かの理由で消失したのか?

「輿の中じゃ無かったら凍死してたぜ。外のみんな、大丈夫か?」

「だいじょうぶだよ。ランこつよい」

「まつ毛が凍ってまったわ」


「下は一面の氷原ねえ。ってありゃなんだ?」

小さな点なのだが、オコにははっきり見えたらしい。

「どこさ(ヘキサ)?」

ついみんなに判らないボケをかます所だった。

「あっこだがね。メグルさ目が悪なった?」

いやお前たちが良すぎるんだよ。

ラン子が急降下する。

「人だよ人」

雪に半分埋まった人間だ。

「ヤクスチランの人?」

「いや大氷原の民だ」

遅れて着陸した社長が説明する。

「大氷原熊の毛皮で作った外套を着ている」

「死んでるのかな?」


俺は結界をその人の周りまで拡大し、火魔法で気温を上げる。

「心臓が動いてはる。あらおなごや」

胸元に手を突っ込んだコンコンが叫ぶ。

「おっぱいがあるの?」

そう言う事なんだろう。

「若い子やな。パーンと張った立派なお乳や」

そうなのか。いやオコ、他意はないぞ。


妖狐族だけでなく、気付け薬として有効と判った殺生石の蒸留カスを鼻に近づける。

「うーん」

少女が目覚める。防寒の為目だけ出したマスクをつけ、更に遮光スリット型サングラスを付けている。

「whづkdmっdhdhdjkdもおp」

よく判らない言葉で社長が話しかける。

「mdjでぃfkcmrl」

「彼女は大氷原の民で、村が恐ろしい災厄に見舞われてヤクスチランに助けを求めに行く途中で力尽きた様です」

「名前は?」

「イグルー」

イヌイット(エスキモー)の氷の家だな。


オコが暖かいスープを作り、元気を取り戻したイグルーと社長は1時間程会話していた。

言葉がヤクスチラン語に似ていたので、それで大体話せる様になった。

「貴方はなぜ私達の言葉が話せるのですか?」

「ヤクスチラン語にとても似ているからですよ」

「ではなぜ異邦人の貴方がヤクスチラン語を?」

「何日か滞在したからです」

「貴方は神ですか?」

まあ在日外国人で、恐ろしく綺麗な日本語を使う人に、俺もそう思った事があったな。来日1年のアメリカ人だったが。

「いや違うよ。旅が仕事なので自然に早く覚える様になった」

「あの空を飛ぶ獣は貴方の使い魔ですか?」

「いや俺の仲間だ」

「はじめまして。わたしランこ」

ランこが前に覚えたヤクスチラン語で話しかけた。何とか通じる様だ。

「うわっ!話すのか」


イグルーの話によると、大氷原の民の歴史はそんなに古くはなく、ヤクスチランから逃げて来たとの事だった。

「どうしてヤクスチランを捨てたの?」

「神々に喰われるよりは極寒の地でアザラシを狩って生きた方がいい」

極寒に逃げた人々と、耐えに耐え遂に神々を駆逐した人々。

「だから私達はヤクスチラン人に軽蔑されている。だけど今回だけは助けて欲しい。それは彼らの為にもなる」

「そう言う緊急な災厄とはどんな?」

「人食い神が復活した」

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