新しいヨウコ(3)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-20.新しいヨウコ(3)
俺のボン契約解除は簡単だった。解除書類は昔流行ったあの映画まんまの"令"と書かれた細長い札で、先先代が、俺の額に貼り付けると、
「ポーン」と言う電子音が一回だけ鳴り、それで終了。まあ「エラーファイル」と書かれたフォルダを転送消去する様なものだろう。
「南南東百八十里。鏡の司の夢枕に告げよ」
「はっ!」と言う声がする。
「これで三日目の夜にお告げが下る。今回の新しいボン様は直ぐに見つからないと困るしな」
これでますます失敗出来なくなった。
そう思っていた時
「ううううわ〜〜っ!やめてぇ〜〜っ!痛い痛いっ!」とヨウコが苦しみだす。ヨウコの体はみるみる小さくなり、赤だか青だかのキャンディを舐めた様に若返って行く。出会った頃の幼児よりも更にに萎んで、やがて勾玉の様な形となる。
「これがヨウコの幼体や。飛べ!宿主を定めよ!」
ひゅん、と勾玉が妖狐の里目指して飛ぶ。
ヨウコの寝ていた後には、緑色の淡い光が人型に光っていた。
「それがヨウコの魂や、婿殿、早く眷族の体に繋ぎとめなはれ。技術などもうええ。誠意や若さや青春や。抱きしめや、撫でさすり、揉み、 舐めまくるのや!」突然の婿殿呼ばわり。
だがエロい事をするのは違う気がする。もっと神聖な儀式じゃなきゃ。
俺は眷族の手を握り、呼びかける。
「ヨウコ、この体に入れ。末永く俺と添い遂げよう!」
蒸発する様に天井に立ち登り、そのまま成仏(でいいのか?)しそうだった緑色の光りが、すうっと眷族に引き込まれる。
「ううううん」
眷族、いや新しいヨウコが目覚める。
「メグル。怖い夢見てた」
そうか、どんな?
「変な人材派遣会社で転生させられそうに」
それは怖かったな。
「上手く行ったの?何があったの?」
「自分の胸に手を当ててよく考えてご覧」
「SUGOI DEKAI!。メグルがこの胸触ったりしてスケベで呼んだの?」
「いや、普通に…。誠意で」
「末永く俺と添い遂げよう!末永く俺と添い遂げよう!末永く俺と添い遂げよう!」
ババア煩いっ!
「それでやな」
先先代が、なぜかハサミを持ってる。
「まだ眷族とわての間に、霊的な臍の緒が繋がってるんやが、監視役として、これは残した方がいいかと思うのや」
確かに細い透明の糸が先先代と眷族を繋いでいる。
「残すと何か利点が?」
「情報とか、その他諸々わてに直ぐ伝わるので、危険な時直ぐ助けに行けるで」
「うーん…その他諸々って?」
「感情とかやな。ヨウコが婿殿にいい事して貰うと感じるいい気持ちが、わてにも」
ヨウコが先先代からハサミをひったくると、ためらいなくバチンと臍の緒を切った。俺が
「端末にトラップを仕掛けて、メーカーが個人情報を不正に取得する事は犯罪です」
「もう…お茶目な冗談じゃ。そんな若夫婦の夜を覗く姑みたいな事、ようせんわ」
覗く気満々だった癖に。
「これで、あんたらが首尾よく逃げられるまでお別れやな。あんじょうお気張りやす」
「判った。必ずまた会えますよね」
「会えるで。嫌ちゅうほど」
なんか背中を悪寒が走った。
「あとヨウコの腕の傷な、カラスの。今度の体にも付けといたで。侍女に目ざとい子がいてるしな。まあ無事逃げおおせたら、消したるわ」
「「そのままで大丈夫です」」
〆のセリフが気に入ってます。大事な傷。
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