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5-35.魔術料理人の下拵え

※第5部の主な登場人物

◯旅の仲間

メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目な15歳と結構浮気症な66歳が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者(イノベーター)"の称号を獲得。

未婚のまま聖狐天の父となる。

オコ…メグルの婚約者。自称妻の元妖狐。メグルとの結婚と子作りを夢見ている。弱者の味方で直情的。未婚のまま聖狐天の母となる。

コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。

ラン子…翼獅子。ラン(獅子)とヘレン(白虎)のライガー。メグルをあるじと慕う優しい幼女。

パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスに変身出来る。


◯その他の主な登場人(神)

聖子ちゃん…メグルがシバヤン達やダガムリアルの協力で作った聖狐天。

メル…元暴風の魔女メルハバ。剣士メル・ファとして、聖狐天を守る。

先先先代妖狐(サンコン)…鼎尾の銀狐。後見として聖狐天に仕える。

二娘(りゃんにゃん)…ナンバーズの一人。武神として聖狐天を守り、メルに剣を指導する。

シャミラム…元モヘンジョの北風の巫女。宮宰として聖狐天に仕える。

マーリン…大魔法使い。メグルに人間を押し付けようとする。

ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。

ベンガニー…元ジョウザ侍女で大ベストセラー作家。

ティンク…ベンガニーの秘書。

三元…マーリンの弟子の一人。道士。

コリナンクリン…ワタリガラスの鳥人。オルフェを拾って育てた師匠で女社長。

五葉…元大東の車騎将軍。マーリンの弟子の一人。

遂準…禁軍の将軍代行。五葉の元部下。

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


5-35.魔術料理人の下拵え


「さて、どうやって片づけようか?」

師匠は珍しく真面目に話し始めた。

「どこまでやるの?」

「それは出来れば、この機会に科学者達を完全に叩いておきたいですね」

「それはそうなんだが…。規模がでかいからねえ。大掃除をするには、それなりの準備がいる」


戦士の戦いと魔術師の戦いには、大きな違いがある。

一般的な少人数のパーティや軍における魔術師の役割は戦士主導なので、主に後方支援が多い。攻撃魔法と言うものもあるが、かなりの魔力を消費するので、例えば味方の防御が崩れて、敵が雪崩れ込んできた際の最後の手段なのが多い。


戦士の戦いとは、どれだけ味方の血を流して、それ以上の相手の血を流させて勝利するか?

と言うのが究極の目的だが、魔術師だけで戦う場合は、どれだけ味方の消耗が0に近く、相手を完璧に制圧出来るか?が決め手だ。

そう言う意味では、これは情報戦であり、戦いが始まった時には既に勝敗が決している。と言うのが魔術師の戦いだ。

マーリンは、支援魔法も単独での魔法戦にも長けており、だから史上最高の魔術師と言われるのだが、ノヅリ師は実戦参加の経験はない。準備に準備を重ねて罠に嵌めて、完全勝利する魔術師の戦いしかしない。


「取り敢えずここの施設を壊滅させる。後は朝廷に食い込んでいる科学者派に打撃を与える事が出来れば、これから色々とやりやすいな」

「朝廷に?策はありますか?」

「うーん。草原の端っこに火を点ける程度かな?燃え広がるかは、大東人次第だよ」

「欲を欠いてもしゃあない。どうせメグルは大東とは事を構えなあかんのやから」

そうなの?出来ればやりたくないなあ。

「メグルさ。人類のでゃあひょーが大東だけなぶらん訳にはいかせんでしょう?」


えらい事引き受けちゃったなあ。大東と言えば、タオ教等の天帝信仰が中心だが、強大な力を持つ天帝でも、人間社会には不干渉。と言う原則で縛られている。その為人類の代表とか言う正義の味方が必要なのだ。正直無神論者の科学者達をこれ以上見逃すのは、天帝も困るだろうと思うのだが、公けには動けない。

実際に科学者が人類には許されない、神の領域を侵す行動をすれば、斉天大聖なりが動いて実際にやった連中を捕縛出来る(バクロンであった)。だが裏で操っている黒幕を摘発する事は出来ない。


そこで人類の代表である俺なんかが期待されるのだが、師匠も科学者の無秩序な研究には危機感を持っており、協力出来るパートナーだ。ただ師匠は正義では動かないが。

「具体的な話をしましょうよ。私は何をすればいいの?」

「美味しいお茶を入れてくれればいいよ。他の人達も、余り仕事はない。僕とメグル、後はコンコンさんと三元さんにちょっと手伝って貰うかな?」

「私は?」

社長が悔しそうに言う。役に立ちたいんだな。

「あの人達を運んでくれただけで充分だよ。あれで、禁軍を動かし易くなった」


遂準さんの事だな。偶然だがいい方に働いたな。いや師匠は最初から知ってたのか?

「そうだ。コンコンさん、三元さん、クリンさんには、ちょっと演技して貰うよ。危険はないからね」

いわゆる"面が割れた"三人だな。

取り敢えずリハーサルをやってみた。

師匠の使い魔、通称

『ハエくん』

は優秀な偵察アイテムで、映像と音声を遠隔で送って来るが、逆に幻影を投射する事が出来る。

相手は実体と区別が付かず、投射が終われば霞の様に消え失せるので、味方には一切危険がない。ハエくんはバレない様に戻って来なければならないが、敵が撤退するまで、じっと天井にでも張り付いて入れば、まず捕まる事はないそうだ。


「いっぺん隣の天幕で演技してみて」

3人が出て行き、すぐに映像が現れた。

「おお!みんなが現れた!」

いやそれはこっちも同じ。ハエくんが投影する三人が、いきなり現れたのだが、向こうにはこちらの映像が見えて、3Dバーチャル会議している感じなのだ。

「いいかい、絶対に相手に触っちゃいけないよ」

「向こうから来たらどうするのよ」

「一定以上敵が近づくと、ハエくんが映像を消す。だがこっちから近づくと、ハエくんは作動しない。クリンさん、殴り掛かったりしちゃダメだよ」

「どうして私にだけ言うのよ。プンプン」

慣れてないからだ。コンコンも三元も術者だからドロンするのは慣れている。

「じゃあその台本通りにやってみようか。こっちの応対は変わるから、臨機応変にね」


オコとパーサに敵の科学者役をやって貰っておいて、俺たちは結界の中で打ち合わせをした。

「メグルくんは魔術だけじゃなくて、科学者の技術も盗めるんだよね?」

師匠にはお見通しなので、ウラナではなく本名で呼んでもらっている。俺は改良型嘉門を見せた。

「ふぇ〜っ。君の恩寵(チート)は本当にずるいねえ。あの3人がうまく自分達に殭屍化の光線かなんかを掛ける様に挑発する。僕がそれを防ぎ、君が技術を盗む。いいね?」


「判りました。その後は?」

「科学者を全員殭屍にする。何百人も実験してたみたいだけど、仕上げに殭屍になった気持ちを体感するのは大切だよね」

えげつないなあ。まあ魔術戦では、敵の得意な術で反撃(カウンターアタック)するのは常道だからな。

「禁軍一万には暗示を掛けて殭屍にされたと思い込ませ、中京に入ってから暗示を解く」

「遂準さんは?」

「事情を話す。その前に炙り出しが必要だがな」


「炙り出し?」

「獅子身中の虫は必ずいるだろ?」

「そうか。一万も居れば、かなりの」

「いや一人だ。こう言う"草"と言う工作員を作るのは、時間と金がかかる。情報が得られない下っ端の兵に置いたりはしないよ。かなりの有力な人物のはずだ。『あいつが!?』くらいのが一人居ればいい」

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