50-19.ククドゥへの道
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
50-19.ククドゥへの道
まったくこの婆さんは、いつの間に魔界語を習得したのだろう?
ていうか、前から知ってたのかもしれんな。
この人の行動範囲は底知れない。
俺は最初に先々代にあった時に見たどう見ても伏見稲荷のあの赤い鳥居が連なる風景を思い出した。
「イナリさん言うてな、ワテの友達の社の景色をちょと借りましたんえ」
と言っていたが、稲荷神の使いと、どこで知り合ったのか?
なんか田舎のばあちゃんで、今は縁側で日向ぼっこしてる様な人だが、子供を育てあげ連れ合いに先立たれた頃は、旅行が趣味になり、たまたま外国の話題になると
「ジョージア?行ったわよ。アメリカのジョージア州も、元グルジアのジョージアも」
とかサラッとおっしゃる。
みたいな訳のわからなさがコンコンにはあるので、あまり突っ込まない様にしているのだ。
「ご婦人、なな何をおっしゃる?わたわたわた私ごとごとごときが」
心斎がゾフィ(※ウルトラマンの兄。いき過ぎたエコー効果で、子供たちのモノマネネタだった)みたいになっている。
「まだお会いしたばかりなのに、一目惚れなんてはしたない事、ありませんわ」
紫陽花も慌てている。
「コンコンさも考えやぁて、心斎さは1500歳だで?おじいちゃんだぎゃ」
「そうですわ、私なんか心斎様の半分の小娘ですもの」
それでも700歳超えとるんかい。
「わ、じ、自分は甲斐性なしでこの歳まで嫁もおらず、人間とも縁組せず」
「独身で…」
紫陽花が小さくガッツポーズをしている。
「心斎はんもまだ余生は千年以上あるんやろ?お似合いやおまへんか。お母はんの遺言にも添うてる訳やしな。そうや!そうと決まったら、女王はんに報告せな」
「あ、そうでした。ククドゥ王国の女王陛下にお引き合わせせねば」
フギン族は女系社会なので、やはり最高権力者は女王だった。
「女王陛下は、この奥に居られるのですか?」
と俺が尋ねると、紫陽花は首を振る。
「ククドゥは魔法の国なのです」
紫陽花は揚水装置(水車)の扉を閉め、茶畑を歩き始める。
「みなさん、付いてきてください」
畑の畔を歩き始めた。
「あ!えだまめがなってる!」
ステルがよだれを垂らしそうな顔で言う。
「後で茹でたてをご馳走しますよ」
紫陽花が優しく返す。
しばらく歩くと、別の作物が成っている場所に着いた。
「カシスだ。やっぱりあったのね?」
社長が呟く。
「クオバディス!※」
ミタが複雑な鳴き方をする。
「ほら、私が見た通りだったでしょ?」
と言ってる感じだ。
※クオ・バディスはラテン語で
「主よ、どちらへ?」
ローマ伝道を始めた使徒ペテロがキリスト教徒に対するローマの余りの迫害に心が挫け、ローマから逃げだそうとアッピア街道を歩いて行く時、向こうからキリストが歩いて来るのに出会う。
ペテロが“主よどちらへ?”と呼びかけると、キリストは
「お前が見捨てたローマの人々に教えを伝え、もう一度十字架にかかるために」
と言って姿が消えた。
ペテロは、泣きながら来た道を戻り、ローマ伝道を続け、最後には十字架に架かって死んだ(ヨハネによる福音書13:36)。
聖ペテロをローマ・カトリック教徒が初代ローマ法王と呼ぶ所以である。
昨日一人の正義と信念の人が凶弾に倒れたが、チャーリー・カークの行動は多くの賛同者を生み出し、これからも更に大きな運動となって行く事だろう。(※終わり)
「アノ山脈のカシス畑によく似ています。あの時のフードを被った村人の中に、あなたも居られたのですか?」
と社長が、タニスを介して問うた。
「アノ山脈?なんのことでしょう。私は生まれてからククドゥを出た事がありません」
これが紫陽花の言葉だった。
違うのか?
「申し遅れました。わたくしはレムリアのワタリガラス神コリナンクリンと申します」
「まあ!この賢そうな鳥さんの飼い主でいらっしゃいますのね」
フギン族にもワタリガラス神への信仰は存在しないようだ。
「まあ、そう言う様な者です。以前夫と旅行しておりました時に、大山脈の支脈であるアノ山脈の山麓で、カシスを栽培していた、フードを被った数人の小柄な人々に会ったものですので」
「え?それは大変!すぐ女王様にご報告しなければ」




