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50-18.両氏族の邂逅

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


50-18.両氏族の邂逅


「フギンの皆様には…」

心斎が何か言っている

「フギンの皆様には、もっと早くお会いしたかった。母が存命のうちに…」

「お母様は」

紫陽花は察している様だった。


「フギンから嫁入りした最後の世代です。生前フギンの事を懐かしんでおりました」

ムニン族の男とフギン族の女が結婚する時、どちらで暮らすかを選ばなければならない。

もちろん逆の場合もある。


だがムニン族に生まれた女が、フギン族に生まれた男と恋愛する事は許されなかった。これは

「二世代めの逆生まれ」

を防ぐための、それぞれの種族の男系、女系を堅持するしきたりで、この禁断の恋人たちは故郷を去る事になるので、両親は絶対に許さなかった。


そのための悲劇もあり、若い世代は何とかしきたりを変えられないか?考えていたが、その前にムニン族が異世界に派遣されてしまい、この問題が立ち消えになってから500年が経過していた。


心斎の母はフギンの娘だったからしきたり通りの嫁入りだったが、レムリア生まれの心斎にいつもこの不条理なしきたりの事を話し

「お前たちの世代になったら、ムニンとフギンが一つになって、こんなおかしなしきたりは無くしておくれ」

と言っていた。


彼女の幼馴染にも、駆け落ちしたり色々あったらしいのだ。

そして自分が生まれ育ったフギンの里の事を懐かしく語りながら、異邦の地レムリアで生涯を終えたのだ。


なので心斎は小さい時から

「自分の使命はフギン族を探して二つの氏族を一つにする事」

と心に銘じていたのだ。


「あなた方がこちらに来ていることは、鹿の王の追っ手から聞いていました」

心斎は語る。

鹿の王の追っ手?

聞いてないぞ。


「やはり追っ手が来ていたのですね?」

「はい、我々は一向に任務を果たさない我らムニンに対する督促と思っていたのですが(古のラグナロクの魔女がドリル女だとムニン族は知らなかったので、魔女と合流できなかった)、あなたがたフギンが逃亡したので連れ戻すために追っ手を差し向けたのです」


レッサー級より少し上の、別の下級魔族であったらしい。

「しかし、彼らのやる気は全くなく『フギン族の痕跡なし』という報告を以て帰還していきました」

「追っ手にお会いになったのですか?」

「先の長老が彼らの隊長と知り合いでね。その追っ手は我らが成果を上げられない事は何も咎めず『フギンを失った事で、御前は立場を失っておられる。他の魔王に不手際を責められてな。だが我らも最早御前について行く気は失せておる』と言ったらしいです」


「魔王にとって配下の逃亡は面目を失する事」

魔王同士では、僅かな失点で立場が逆転する事があるらしい。ゲームや賭けの勝ち負け程度では大したダメージはないのだが

「部下を管理できないうつけ者」

と言う烙印を押されると大いに面目を失い、失脚する

事もあるらしい。

この追っ手たちもそろそろ見切りをつけて、他の魔王に転職活動をしていたとのこと。


俺は何だか前世の官僚組織を連想した。

小さい頃からひたすら勉強して受験戦争に勝ち抜いて最高学府に合格し、役人登用の上級試験に合格して、その合格点順に省庁に割り振られる。

その頂点にある財務官僚は、絶対にミスする事が許されない。

その様な優秀な彼らが、親の地盤を引き継いだ世襲政治家より優位に立つのは当然の事だ。

(※あ、これは科挙制度のあった頃の中国の話だからね。勘繰らないように)


「我らのせいで、失脚した鹿の王様には誠に申しわけございませんが」

紫陽花は言う。

「うんうん」

と心斎は頷く。

「ざまあ見ろ、ですわ」

「うんうん!」

よっぽど鹿の王は最低な魔王らしい。


「実は数十年前ですが」

「はい。やはりあれは」

「そうです。我らを縛っていた服従の枷の呪いが不意に解けて」

「やはりあれは…」


「どういうことですか?」

俺は確認した。

「鹿の王が失脚しプライドをズタズタに打ち砕かれ」

「おそらく死を選ばれたかと」

これでムニン族は任務を遂行する事も求められず、フギン族は追っ手に追われる事も無くなったわけだ。

だがもう彼らには魔界に戻る場所はない。


「我らムニンはこのレムリアに定住する決意をし、エルフ王国と同盟する道を模索しております」

「我らはこのククドゥに安住の地を得ました」

何だか心斎と紫陽花は見つめあっている。


「ええ感じなところで無粋な邪魔して悪いんやけど、そろそろククドゥの女王はんに、紹介してくれまへんやろか?」

コンコンがいきなり流暢な魔界語で話しかけた。

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