50-5.ムニン族の歴史
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
50-5.ムニン族の歴史
もう一度整理しておこう(※自分でも分からなくなって来た)。
①魔界にもワタリガラスという種の鳥はいる(レムリアのワタリガラスとの関連は不明)。
②野人の中にワタリガラスに変身できる魔法を使う者がおり、特にムニンとフギンが有名(二人が兄弟なのかは不明)。
③ムニンとフギンはある時、レムリアのオーディン神の強力な召喚魔法で拉致され、ワタリガラスの姿に固定されて使役される(つまりムニンとフギンは、レムリアのワタリガラス神とは無関係)。
④オーディン、ラグナロクの最中にフェンリルに食われ、トールもヨルムンガンドの毒に倒れたため、神々側は敗走。魔女も退けられるが、人類の文明は一旦振り出しに戻る。
⑤オーディンの死により、召喚の魔法が解けたムニンとフギンは、命からがら魔界に戻る(この際レムリアの鳥神の庇護を受ける←新事実)。
⑥ムニンとフギンは故郷に帰還し、それぞれの一族と合流。一族はムニン族、フギン族を名乗る。
⑦魔王“鹿の王”より、ムニン族に一族でレムリアに向かう様要請。ムニン族はレムリアに渡り、現地の貴婦人?の元に向かう(だがその貴婦人はドリル女だった)。←ドリル女と鹿の王が同盟を進めていたかは不明。
⑧ムニン族はドリル女が破滅の魔女と知らぬまま、鹿の王の元から離脱。←謎。
⑨その後フギン族も魔界から失踪する(レムリアに来ている模様)。←謎。
「心斎さんだけでなく、ムニン族の他の方々にもお会いしたいのですが」
と社長が言うと、心斎はちょっと困った顔をして
「実はウメダ公の元での、私の家令試用期間がまだ終わっておりませんで」
と言った。
「?どういう事ですか?」
「私どもムニン族は、大変注意深くなっております。それは、こちらに来てから、ドリル女の手から逃げ、途中でも何度も人間に騙されて」
「ご苦労なさったのね」
またもオコの部屋モードで、オコが涙ぐむ。
「ありがとうございます。それで注意深く。いや臆病と言っていただいても構いません」
「そりゃ当然やで。特にこっちへ来て生まれはった心斎はんは、魔界の事情も分からはらしまへんやろしな」
「はい。今では大半がレムリア2世世代です。3世も生まれております次第で」
「それでウメダのおじちゃんがしんじられない。っていうの?」
ウメダとは仲良しのステルが、ちょっとキレ気味に突っ込む。
「ごめんね。お嬢さん。1世世代は特に疑い深いんだ。うますぎる話には乗るな。と。それでまず私が派遣された次第で」
「うますぎる?ウメダさんは何を提案したの?」
とオコが訊く。
心斎が答える前に
「そいつぁ本人から直接話すぜ」
と言う声が聞こえた。
「おっちゃん!」
ステルがすぐ飛んで行き、ウメダの足にまとわりつく。
見るとウメダ公はちょっと心配なくらいヤツレている。
「どうした?」
と俺が声を上げるやいなや(as soon as)、オコが治療を開始する。
「ああ…。整うぜ」
この
「整う」
という感覚はいったいなんなんだ?
なんか俺がこっち(レムリア)に来る直前のころから、急に使われる様になった日本語だった気がする。
この言葉は元々もちろんあったのだが、ほとんどその前に
「準備万端」
と言う単語が前につく様な状況で使われた。
「明日は久しぶりのキャンプ。テント、ポール、ロープ、ペグ。その他メスティンとか固形燃料…。よしリストチェック終了!準備万端整った!」
みたいな状況だった。
ところが主にサウナで、この
「整う」が独り歩きして
「日本語の揺らぎ、変化を見守る立場である吾輩(デーモン閣下の影響)」
にしても、実に人造的な違和感があり気持ち悪い。
絶対仕掛け人みたいなコンサルが入ったに違いない。
「サウナ→水風呂→休憩を繰り返す事で心身がリラックスし、活力を感じる状態」
だとAIなら答えるだろう。
「冷温交代浴により自律神経が刺激され脳内物質(βエンドルフィン、オキシトシン、セロトニンなど)が分泌される事で、深い幸福感や極度のリフレッシュ感、そして頭がクリアになる感覚」
が得られるらしい。
要は脳内麻薬でラリる事らしい。
おいウメダ!俺の嫁の神聖魔法をサウナ扱いするんじゃねえ!




