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48-36.炙りだし

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


48-36.炙りだし


「スミティ、俺たちを徹底的にスキャンしてくれ」

『いいですが時間がかかります。そして発見の確率は2%』

「そんなに低いのか。で時間は?」

『15日位ですね。かなり生産性が低い方法です。そして』

「なんかあるの?」

『かなりの苦痛が伴います』

「痛いのは嫌だな」

師匠が呟く。


生産性と言う言葉は前世で俺が最も嫌いな言葉だった。

例えば晩年やっていた電話オペレーターの仕事で、どれだけ沢山電話を取れるか?

と言うことは数字上は大切な事だったが、このお客様センターの仕事内容は

「お客様の質問に的確に答え、ついでになんか売る」

と言う仕事内容だったので、前段階のお客様対応を端折っていきなり商品売り込みに入っても売れるものではない。


初心者のお客様に、丁寧にパソコンやネットの話をしてようやく信頼を得た上で初めて商品説明が出来るのであって

「あなたは通話時間が長すぎる」

と言われても、そこそこ成績を上げていたので文句は言われたくなかった。


あと

「時間を短縮するために、話をしながらキーボードを入力し、通話が終わったらすぐ次の電話を取れ」

という指示もあったが、これもオペレーターには不評だった。

大体大半のオペレーターはタッチタイプなんて出来ない。しかも

「なんかカチャカチャ音がするが、真面目に話を聞いてるのか?客を馬鹿にするな!」

と怒られたオペレーターはザラにいる。


マルチタスクと言うのは聞こえはいいが、決して効率は良くない。ミスも多くなる。

その職場の売上げ任務は

「ついでに物を売る」

なので、いかに顧客の信頼を得るか(オペレーター指名で電話がかかってくることさえある世界)にかかっているので、手を止めて真剣に応対しないと売り上げに繋がらない。


俺が知る最も優秀なオペレーターは苦情電話に誠実に対応し、結果的に商品を売る事ができるバケモノだった。

だがこう言う人はすぐ中間管理職(スーパーバイザー)に抜擢されてしまい、前線を離れてしまう。


お客様センターとか言うと聞こえがいいが、大体コールセンターは営業部契約の派遣会社だ。

俺の知る限り、お客様センターで社長室直属のケースは少なく(経営陣は大抵お小言は知りたいたくない人が多い)、本当に会社の役に立つお客様センターは小林製薬で、ここは全ての応対履歴に社長が目を通し

「この製品のここが悪い」

だけでなく

「こういう製品があったらいいのに」

を吸い上げ、あのユニークな新製品を次々と生み出している。


つまり

「全く物を売らないお客様センターが毎年莫大な利益を上げてきた」

のだ。素晴らしい。

あとAppleのコールセンターも大変応対が良く、長年の

「Apple製品への忠誠度が高い」

顧客(俺もだった)維持に大きく貢献している。


俺のいたセンターはネット・携帯系だったが、同じ会社の別部門が華々しく宣伝して立ち上げた製品(あまり詳しく書くと会社がバレるのでぼかすけど)が大誤算だった尻拭いで、その商品をこともあろうに無関係のネットセキュリティパックに組み込む。と言う愚挙をやって、この抱き合わせ販売は最後には問題になった。

俺たちはずっと

「あの商品は売りたくない」

と言い続けたが、結局その高額パックを沢山売ったオペレーターが表彰される世界だった。


(※もう辞めて何年にもなるが、愚痴になると止まらなくなってしまった。もし寿命があったら、いつかオペレーター時代の事を題材に小説を書こうと思う)


『時系列を過去に追って、仕掛けられた時間と状況を知ることで、発見の可能性は70%にあがります』

「どうやって?」

『あなたの能力ですよ』

つまり時間を巻き戻す事で、脳内の設置場所を特定する、と言うのだ。


「天帝騒動の頃まで、一年以上遡るんだろ?そんなに巻き戻しを繰り返すのは、体力的に無理だよ」

『そうですか、人間が脆弱な事を失念していました。やはり自分が対象の時と、ノヅリさんが対象の時では、疲労度が違いますか?』

「どちらかと言うと他者の巻き戻しの方が疲れるね。自分の場合は記憶を辿るだけだから」

『なるほどですね』

とスミティが九州人の様に言う。


『じゃあまず、ウラナさんの履歴を時系列を遡って検証しますか?』

「俺から?」

『はい。そのほうが生産性がよいのでしょう?』

まあそうだけど、また生産性か。


『その個体に問題がない。と言う証明は困難ですが、問題を炙り出す事は可能性が34%ほどはあるでしょう』

1/3以上か…。

それはスミティとしては、かなりいい数字だな。


『しかも曖昧であってもウラナさんに問題がなければ、ノヅリさんに問題がある可能性が飛躍的に高まります』

『君はもしかして師匠を疑ってるの?』

俺は念話で問うた。

『当たり前じゃないですか。ビッグセブンの中で、ノヅリさんとコリナンクリンさんご夫婦は別行動が多い。そして』

『そして?』


『ノヅリさんの側には大聖母がおりません』

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